古谷 恵里先生(日本眼科学会認定 眼科専門医)にインタビュー
地域の人たちに愛された祖父と父の背中を見て育ち、自身も医師の道を選ぶ
子どもの頃、父は毎日忙しく、病院から患者さんが急変したとの連絡があり夜中に出て行ったきり次の日の夜まで帰って来ないこともよくあり、医師とは本当に大変そうな仕事だなと思っていました。ある時、実際に働く父の姿を目にする機会があったのですが、担当している患者さまが父のことをとても信頼して下さっている姿を見て、父が頑張っていたことの結果が患者さまとこんな信頼関係を築けるんだ、とびっくりしたのと同時に尊敬の思いが込み上げたことがあります。その頃から段々に自分も祖父や父のように人の役に立ちたい、という思いが強くなり医師を志すようになりました。
現在は、開業医ですから、さまざまな眼科疾患を幅広く受け入れる窓口にならなければいけません。いろいろな病院で、さまざまな分野を経験し、学ぶことができたのは、現在、開業医として診療を行っていく上でとても役立っていると感じます。
「日本眼科学会認定 眼科専門医」の試験を受けて合格した直後、とても珍しい網膜疾患の方を拝見する機会がありました。試験のために勉強した直後だったので、頭の中には疾患に関する知識がたくさん詰まっていましたし、それがしっかりと整理された状態でした。そのおかげで、初診時の主訴はあまりはっきりとした症状ではありませんでしたが、疑わしい疾患の見当をつけ、様々な検査を経た上で診断し、治療するところまでこぎつけることができました。きちんと勉強をしたからこそ、このように珍しい病気も見つけて差し上げることができたんだなと感じることができました。
緑内障や糖尿病網膜症は早期発見が大切。不安を軽減するための説明に注力
実際、当クリニックで緑内障と診断される方も、ドライアイやアレルギー性結膜炎、ものもらいなど他の疾患がきっかけで受診されて、結果的に緑内障が見つかったというケースがかなりの割合を占めます。緑内障は、40歳以上の20人に1人が発症する身近な疾患です。「定期的に眼科を受診していればここまで進行する前に見つけられたのに」とおっしゃる患者さまも少なくありません。また、「自分は眼圧が低いので緑内障の心配はない」と誤解されている方も多いのですが、日本人に多く見られるのは、正常眼圧緑内障という眼圧が正常値の緑内障です。眼圧が正常でも緑内障を発症する可能性があるということも知っておいて頂きたいですし、そのために緑内障検診や特定健診なども利用し、スクリーニング検査を受けて頂きたいと考えています。
黄斑部は網膜の中心にあり、視力を維持するのに必要な視細胞が並んでいる大事な場所です。それまで普通に見えていても、黄斑部に異常が生じると、急にどんどんと視力低下が進行していってしまいます。
糖尿病網膜症は、患者さまの糖尿病のコントロール状態・年齢・他疾患の合併の有無など、病態は千差万別です。そのためレーザー光凝固術、硝子体注射などの治療方法がありますが、何をどのような順番で行うかという決まりはなく、治療方法の選択は患者さまの網膜症の状態に合わせ、適宜行っていく必要があります。
眼底写真をご覧いただき、現在どのような変化が起きているのか、何のために治療が必要なのかをしっかりご説明し、治療を受ける上で不安のないようご説明することを大切にしています。
ドライアイの原因は、パソコンやスマートフォンの画面を見続けることによるまばたきの減少、コンタクトレンズの使用といった生活環境のほか、最近ではマイボーム腺機能不全も影響している可能性があると指摘されています。マイボーム腺からは、涙を保持するために必要な油分が分泌されます。涙液の外側は油層が覆っており、目の乾燥を防いでいます。マイボーム腺が塞がれて油分が分泌されにくくなると、目の表面の涙をキープする力が下がり、ドライアイの症状を引き起こすことになるのです。
治療法には、点眼薬や生活習慣改善などがあります。マイボーム腺機能不全が原因のドライアイの方には、マイボーム腺を清潔に保つケアをご提案しており、今後、マイボーム腺機能不全の改善を促すレーザー治療も導入する予定です。
知識のアップデートを続け、何でも質問しやすいクリニックを目指す
また医学は日進月歩ですので、どんどん新しい検査・治療が発展していきます。そのため日々努力を怠らず勉強を続け、吸収した知識や技術を、当クリニックを受診された患者さまに還元していきたいと考えています。
日本ではまだまだ健診の受診率が低いことが課題だと思っています。企業や自治体の健診を定期的に受けて頂いたり、大田区の健診(特定健診・緑内障検診など(※))を利用して頂いたり、何らかの機会で目の健康状態をご自身で知る機会を作って頂ければと思います。
(※)は、お住まいの市区町村によっては補助制度を利用できます。自由診療となる場合もありますので、料金表をご確認ください。
難しいことを急に言われると混乱して理解ができないという患者さまには、ご家族の方のご同伴をお願いすることもあります。患者さまのご心配を取り除いて、不安なく通って頂けるようなクリニックを目指しています。ご不明な点があれば何でもご相談頂ければと思います。