
副院長
古谷 恵里
取材日:2021年9月9日
古谷 恵里先生(日本眼科学会認定 眼科専門医)にインタビュー
地域の人たちに愛された祖父と父の背中を見て育ち、自身も医師の道を選ぶ
医師を目指したきっかけがあれば教えていただけますでしょうか?
医師を志したのは、父や祖父の影響が大きかったと思います。当クリニックと同じビルの1階にある「観音通り中央医院」は、1970年に祖父が開業した内科の医院です。地域に密着した医院で、祖父が他界した時には、地域の方が沢山クリニック前に集まって祖父のことを見送って下さいました。「地域の皆さまにこんなにも愛していただいていたんだな」と驚きましたし、今もその時の光景は目に焼き付いています。
子どもの頃、父は毎日忙しく、病院から患者さんが急変したとの連絡があり夜中に出て行ったきり次の日の夜まで帰って来ないこともよくあり、医師とは本当に大変そうな仕事だなと思っていました。ある時、実際に働く父の姿を目にする機会があったのですが、担当している患者さまが父のことをとても信頼して下さっている姿を見て、父が頑張っていたことの結果が患者さまとこんな信頼関係を築けるんだ、とびっくりしたのと同時に尊敬の思いが込み上げたことがあります。その頃から段々に自分も祖父や父のように人の役に立ちたい、という思いが強くなり医師を志すようになりました。
子どもの頃、父は毎日忙しく、病院から患者さんが急変したとの連絡があり夜中に出て行ったきり次の日の夜まで帰って来ないこともよくあり、医師とは本当に大変そうな仕事だなと思っていました。ある時、実際に働く父の姿を目にする機会があったのですが、担当している患者さまが父のことをとても信頼して下さっている姿を見て、父が頑張っていたことの結果が患者さまとこんな信頼関係を築けるんだ、とびっくりしたのと同時に尊敬の思いが込み上げたことがあります。その頃から段々に自分も祖父や父のように人の役に立ちたい、という思いが強くなり医師を志すようになりました。
勤務医時代には、どのような分野について経験を積まれたのでしょうか?
医学部を卒業した後は、東京女子医科大学病院の眼科学教室に入局しました。糖尿病網膜症を専門とする教授のもとで学んだ後、東京女子医科大学病院から出向する形で、さまざまな病院に勤務する機会を頂きました。病院ごとに得意としている疾患も違いますので、いろいろな病院で学ぶ機会を得られたことで知識や経験の幅を広げられてよかったと思っています。例えば、オリンピア眼科病院は甲状腺眼症と緑内障に特化した病院だったので、都内だけではなく遠方からも患者さまがご来院されるほどの病院でした。甲状腺眼症についてみっちり学ばせていただいた1年間は本当に貴重な経験となりました。
現在は、開業医ですから、さまざまな眼科疾患を幅広く受け入れる窓口にならなければいけません。いろいろな病院で、さまざまな分野を経験し、学ぶことができたのは、現在、開業医として診療を行っていく上でとても役立っていると感じます。
現在は、開業医ですから、さまざまな眼科疾患を幅広く受け入れる窓口にならなければいけません。いろいろな病院で、さまざまな分野を経験し、学ぶことができたのは、現在、開業医として診療を行っていく上でとても役立っていると感じます。
「日本眼科学会認定 眼科専門医」を取得してよかったと思うことは?
「日本眼科学会認定 眼科専門医」を取得してよかったと感じるのは、資格試験を受けるにあたって、これまで勉強してきた眼科の知識の総復習ができたことですね。臨床的なことだけでなく基礎的な部分も学び直すこともできました。
「日本眼科学会認定 眼科専門医」の試験を受けて合格した直後、とても珍しい網膜疾患の方を拝見する機会がありました。試験のために勉強した直後だったので、頭の中には疾患に関する知識がたくさん詰まっていましたし、それがしっかりと整理された状態でした。そのおかげで、初診時の主訴はあまりはっきりとした症状ではありませんでしたが、疑わしい疾患の見当をつけ、様々な検査を経た上で診断し、治療するところまでこぎつけることができました。きちんと勉強をしたからこそ、このように珍しい病気も見つけて差し上げることができたんだなと感じることができました。
「日本眼科学会認定 眼科専門医」の試験を受けて合格した直後、とても珍しい網膜疾患の方を拝見する機会がありました。試験のために勉強した直後だったので、頭の中には疾患に関する知識がたくさん詰まっていましたし、それがしっかりと整理された状態でした。そのおかげで、初診時の主訴はあまりはっきりとした症状ではありませんでしたが、疑わしい疾患の見当をつけ、様々な検査を経た上で診断し、治療するところまでこぎつけることができました。きちんと勉強をしたからこそ、このように珍しい病気も見つけて差し上げることができたんだなと感じることができました。
緑内障や糖尿病網膜症は早期発見が大切。不安を軽減するための説明に注力
緑内障について、患者さまに知っておいていただきたいことはありますか?
緑内障は、何らかの原因で視神経に障害が起き、視野の欠損が生じる病気です。症状が現れた時は、既に病気が進行していることが多いため、自覚症状が現れる前に発見し、治療に結び付けることが大切です。視神経は再生することはないので、一回欠けてしまった視野は治療で改善することはできません。
実際、当クリニックで緑内障と診断される方も、ドライアイやアレルギー性結膜炎、ものもらいなど他の疾患がきっかけで受診されて、結果的に緑内障が見つかったというケースがかなりの割合を占めます。緑内障は、40歳以上の20人に1人が発症する身近な疾患です。「定期的に眼科を受診していればここまで進行する前に見つけられたのに」とおっしゃる患者さまも少なくありません。また、「自分は眼圧が低いので緑内障の心配はない」と誤解されている方も多いのですが、日本人に多く見られるのは、正常眼圧緑内障という眼圧が正常値の緑内障です。眼圧が正常でも緑内障を発症する可能性があるということも知っておいて頂きたいですし、そのために緑内障検診や特定健診なども利用し、スクリーニング検査を受けて頂きたいと考えています。
実際、当クリニックで緑内障と診断される方も、ドライアイやアレルギー性結膜炎、ものもらいなど他の疾患がきっかけで受診されて、結果的に緑内障が見つかったというケースがかなりの割合を占めます。緑内障は、40歳以上の20人に1人が発症する身近な疾患です。「定期的に眼科を受診していればここまで進行する前に見つけられたのに」とおっしゃる患者さまも少なくありません。また、「自分は眼圧が低いので緑内障の心配はない」と誤解されている方も多いのですが、日本人に多く見られるのは、正常眼圧緑内障という眼圧が正常値の緑内障です。眼圧が正常でも緑内障を発症する可能性があるということも知っておいて頂きたいですし、そのために緑内障検診や特定健診なども利用し、スクリーニング検査を受けて頂きたいと考えています。
糖尿病網膜症の治療で大切にしていることを教えてください。
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症のうちのひとつです。糖尿病網膜症も、初期の段階では自覚症状がほとんどありませんので、眼底検査を行い網膜症のチェックを行う必要があります。網膜に大量の出血が起こっていても、視力を主に担っている黄斑部のむくみや硝子体出血などが生じていなければ、視力低下の自覚症状はほとんどと言っていいほどありません。
黄斑部は網膜の中心にあり、視力を維持するのに必要な視細胞が並んでいる大事な場所です。それまで普通に見えていても、黄斑部に異常が生じると、急にどんどんと視力低下が進行していってしまいます。
糖尿病網膜症は、患者さまの糖尿病のコントロール状態・年齢・他疾患の合併の有無など、病態は千差万別です。そのためレーザー光凝固術、硝子体注射などの治療方法がありますが、何をどのような順番で行うかという決まりはなく、治療方法の選択は患者さまの網膜症の状態に合わせ、適宜行っていく必要があります。
眼底写真をご覧いただき、現在どのような変化が起きているのか、何のために治療が必要なのかをしっかりご説明し、治療を受ける上で不安のないようご説明することを大切にしています。
黄斑部は網膜の中心にあり、視力を維持するのに必要な視細胞が並んでいる大事な場所です。それまで普通に見えていても、黄斑部に異常が生じると、急にどんどんと視力低下が進行していってしまいます。
糖尿病網膜症は、患者さまの糖尿病のコントロール状態・年齢・他疾患の合併の有無など、病態は千差万別です。そのためレーザー光凝固術、硝子体注射などの治療方法がありますが、何をどのような順番で行うかという決まりはなく、治療方法の選択は患者さまの網膜症の状態に合わせ、適宜行っていく必要があります。
眼底写真をご覧いただき、現在どのような変化が起きているのか、何のために治療が必要なのかをしっかりご説明し、治療を受ける上で不安のないようご説明することを大切にしています。
ドライアイはなぜ起こるのでしょうか? 治療方法について教えてください。
ドライアイになると、目が乾くだけではなく、ゴロゴロする、目が開けにくい、目が疲れる、しょぼしょぼする、見えづらい、といったさまざまな症状が現れます。角膜や結膜に障害があってドライアイの症状が起きている方もいらっしゃいますが、障害はなくても、ご本人にとってはとてもつらい症状であり、QOV(見え方の質)の低下を招きます。
ドライアイの原因は、パソコンやスマートフォンの画面を見続けることによるまばたきの減少、コンタクトレンズの使用といった生活環境のほか、最近ではマイボーム腺機能不全も影響している可能性があると指摘されています。マイボーム腺からは、涙を保持するために必要な油分が分泌されます。涙液の外側は油層が覆っており、目の乾燥を防いでいます。マイボーム腺が塞がれて油分が分泌されにくくなると、目の表面の涙をキープする力が下がり、ドライアイの症状を引き起こすことになるのです。
治療法には、点眼薬や生活習慣改善などがあります。マイボーム腺機能不全が原因のドライアイの方には、マイボーム腺を清潔に保つケアをご提案しており、今後、マイボーム腺機能不全の改善を促すレーザー治療も導入する予定です。
ドライアイの原因は、パソコンやスマートフォンの画面を見続けることによるまばたきの減少、コンタクトレンズの使用といった生活環境のほか、最近ではマイボーム腺機能不全も影響している可能性があると指摘されています。マイボーム腺からは、涙を保持するために必要な油分が分泌されます。涙液の外側は油層が覆っており、目の乾燥を防いでいます。マイボーム腺が塞がれて油分が分泌されにくくなると、目の表面の涙をキープする力が下がり、ドライアイの症状を引き起こすことになるのです。
治療法には、点眼薬や生活習慣改善などがあります。マイボーム腺機能不全が原因のドライアイの方には、マイボーム腺を清潔に保つケアをご提案しており、今後、マイボーム腺機能不全の改善を促すレーザー治療も導入する予定です。
知識のアップデートを続け、何でも質問しやすいクリニックを目指す
今後、どのようなことに力を入れていきたいと考えていますか?
大学病院や総合病院などは、紹介状がないと受診できないですし、何かあった時に患者さまが最初に足を運ぶ場所というと、やはりお近くにあるクリニックではないかと思います。大きい病院を受診しなくても診断・治療まで1つのクリニックで完結できれば患者さまに手間・時間・費用の負担も大きくならずにすむのではないかと考えています。
また医学は日進月歩ですので、どんどん新しい検査・治療が発展していきます。そのため日々努力を怠らず勉強を続け、吸収した知識や技術を、当クリニックを受診された患者さまに還元していきたいと考えています。
また医学は日進月歩ですので、どんどん新しい検査・治療が発展していきます。そのため日々努力を怠らず勉強を続け、吸収した知識や技術を、当クリニックを受診された患者さまに還元していきたいと考えています。
現在、眼科疾患で課題だと感じていることはありますでしょうか?
緑内障や糖尿病網膜症は失明につながる怖い病気だと思っている方も多いかもしれません。しかし、自覚症状が現れる前の早期の段階で発見し、通院と治療を続けて頂ければ、失明のリスクを防げることがほとんどです。治療を行わずに放置して、将来的に見えなくなってしまうような事態は絶対に避けたいことです。
日本ではまだまだ健診の受診率が低いことが課題だと思っています。企業や自治体の健診を定期的に受けて頂いたり、大田区の健診(特定健診・緑内障検診など(※))を利用して頂いたり、何らかの機会で目の健康状態をご自身で知る機会を作って頂ければと思います。
(※)は、お住まいの市区町村によっては補助制度を利用できます。自由診療となる場合もありますので、料金表をご確認ください。
日本ではまだまだ健診の受診率が低いことが課題だと思っています。企業や自治体の健診を定期的に受けて頂いたり、大田区の健診(特定健診・緑内障検診など(※))を利用して頂いたり、何らかの機会で目の健康状態をご自身で知る機会を作って頂ければと思います。
(※)は、お住まいの市区町村によっては補助制度を利用できます。自由診療となる場合もありますので、料金表をご確認ください。
最後に、患者さまに向けてメッセージをお願いできますでしょうか?
クリニックを受診するというだけで緊張される方もいらっしゃることでしょう。いざ受診して、そこで何かの病気を診断されたら、将来のことが心配になってしまう方もいらっしゃることと思います。怖くなってそのまま通院を中断してしまう方も中にはいらっしゃるのですが、逆に、失明のリスクがあると言われている病気でも、治療を続けて病気を管理していけば、QOVを維持して寿命をまっとうすることも十分に臨めます。病気についてしっかりと理解して、治療を継続すれば、眼科疾患はけして怖い病気ばかりではない、ということをお伝えしたいと思います。
難しいことを急に言われると混乱して理解ができないという患者さまには、ご家族の方のご同伴をお願いすることもあります。患者さまのご心配を取り除いて、不安なく通って頂けるようなクリニックを目指しています。ご不明な点があれば何でもご相談頂ければと思います。
難しいことを急に言われると混乱して理解ができないという患者さまには、ご家族の方のご同伴をお願いすることもあります。患者さまのご心配を取り除いて、不安なく通って頂けるようなクリニックを目指しています。ご不明な点があれば何でもご相談頂ければと思います。