
小山 秀樹先生(日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)にインタビュー
地域の方が気兼ねなく相談できる産婦人科を作りたいという思いから開業医に
勤めていた病院は、開業医の先生からの紹介で来られる患者さまが多いのですが、救急の患者さまも多く診ていました。
産婦人科のクリニックは、受診をするのにハードルが高いと感じることもあるかもしれません。しかし、親御さまやお友達に相談したり、インターネットで情報を探そうとしたりせずに、困ったらまず地域のクリニックにいらしていただき、医師に相談してほしいと思っています。勤務医時代は、多くの手術に携わってきましたが、悪くなってから子宮がんの治療をするのは医師として残念に思うものです。もしかしたら、「こんなことで受診する必要はない、心配いらないよ」と言われてしまうような、ちょっとした症状かもしれません。でもそれは、医師にしか判断できないことです。何か気になる症状があれば、自己判断せず受診してほしいんです。
「不調を感じたら自己判断せず相談してほしい」というのが医師としての願い
不正出血というのは、月経以外に性器から出血することで、その原因はさまざまです。感染症、萎縮性膣炎、子宮内膜炎などの炎症、卵巣機能不全や月経異常(生理不順)などのホルモン異常、ポリープや子宮筋腫など良性の腫瘍、子宮頸がんや子宮体がんなど悪性の腫瘍、子宮膣部びらんといった原因で起きるほか、妊娠に関連して不正出血が起きる場合もあります。
月経が始まったばかりの若い年代では、月経異常になることも多いですね。ただし、何によって不正出血が起きているのかは、医師が診察しなければわかりません。性交渉の経験があれば性病の可能性もあり、性病でも不正出血は起こります。月経が始まったばかりの年代では、お母さまやお友達に相談する方も多いかと思いますが、お母さまは産婦人科の病気を医師のように詳しく知っているわけではありません。今までとは違うと感じることがあれば、まず医師に相談していただきたいですね。
子宮頸がんは、初期の段階では症状がほとんどなく、進行すると不正出血が起こります。子宮体がんは、40歳代後半から60歳代の方が多く発症するがんで、自覚症状として多く見られるのが不正出血です。閉経後に不正出血があれば、子宮体がんの可能性も考えられますので、早めにご相談いただきたいですね。
不正出血がいつから起きていたのか聞くと、「3年ほど前から」とおっしゃる方も中にはいらっしゃるんです。年齢を重ねた方の中には、「若い人が多いから産婦人科は受診しづらい」と言う方もいらっしゃいますが、がんであればその間に進行してしまいますから放置しないでご相談いただきたいと思います。
検査の結果、多嚢胞性卵巣症候群と診断され、すぐに妊娠を希望されない場合には、将来、妊娠したいと思う時まで、低用量ピル(※)の服用をご提案しています。
(※)は自由診療の場合がございます。料金は料金表をご確認ください。当院では保険診療のものもございます。
健康維持に必要なのは正しい情報の取捨選択。早めの受診を提案する医師
とはいえ、初期の子宮頸がんの手術で行われる子宮頸部円錐切除術も、子宮の出口が短くなって、妊娠した時に流産や早産のリスクを高めることがあります。子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で発症します。ヒトパピローマウイルスの感染を予防するためには、HPVワクチンの予防接種(※)を受けていただくことが必須です。副作用を気にされる方もいますが、副作用はどんなワクチンでも一定の割合で生じるものです。HPVワクチンに特定のものはありません。
(※)は、お住まいの市区町村によっては補助制度を利用できます。自由診療となる場合もありますので、料金表をご確認ください。
私は、東日本大震災の時、東北の病院にご縁があったため手伝いに行ったのですが、津波で病院の建物が流されてしまったため、患者さまのカルテも当然残っていませんでした。これまで何の薬を服用していたかもわからず、とても困った経験があります。保険証やマイナンバーカードに情報が管理されていれば、こういった非常事態にも対処できるのではないかと思いました。複数の医療機関から同じ薬を処方するような事態も防げますから、無駄な医療費の削減にもつながるのではないかと思います。
2~3歳の小さなお子さまの子育てをしているお母さまの中には、「子どもがいるからなかなか受診できなかった」と言う方もいらっしゃいます。そういう方には、こうお話しするんです。「あなたが入院したら困るのは誰ですか? そのお子さまじゃないですか?」と。そう言うと、皆さまハッと我に返られます。ご自身のためにも、お子さまのためにも、体調がいつもと違うな、病気かなと思ったら我慢せず早めに受診していただきたいと思っています。