
院長
池部 敏市
取材日:2022年11月15日
池部 敏市先生(日本小児科学会認定 小児科専門医)にインタビュー
増加傾向にあるアレルギー疾患に苦しむ子どもを減らすため診断・治療に尽力
見極めが難しいと聞く食物アレルギー。先生はどのように診断しますか?
お子さまに湿疹の症状が出た時、「食べ物が原因なのでは?」と心配してご相談に来られる親御さまがよくいらっしゃいますが、幼少期の湿疹は成長の過程で、ごく普通に出るものもあります。そのため、必ずしも食物アレルギーとは限りません。その一方で、「卵を食べるといつも湿疹が出る」というように、湿疹の原因が明らかな場合もあります。ただ、食物アレルギーは、特定の食べ物を摂取した時だけ症状が出るため、血液検査などで原因を特定するのが難しい病気です。また、検査で陽性が出ていても、症状が出ない方もいますし、その逆もあり得ます。
そのため当院では、原因と考えられる食べ物を少量摂取してもらうことで、アレルギーの原因となる食べ物を特定しています。治療としては、アレルギーとなる食べ物を摂取しない、という方法もありますが、少しずつ摂取し身体に慣れさせることで、原因の食物を摂取してもアレルギーを起こさないような体作りをすることが出来ます。食物アレルギーは毎日の食事が大事になる治療なので、親御さまとしっかりと連携し、お子さまの健やかな成長をサポートしたいですね。
そのため当院では、原因と考えられる食べ物を少量摂取してもらうことで、アレルギーの原因となる食べ物を特定しています。治療としては、アレルギーとなる食べ物を摂取しない、という方法もありますが、少しずつ摂取し身体に慣れさせることで、原因の食物を摂取してもアレルギーを起こさないような体作りをすることが出来ます。食物アレルギーは毎日の食事が大事になる治療なので、親御さまとしっかりと連携し、お子さまの健やかな成長をサポートしたいですね。
赤ちゃんにありがちな湿疹とアトピーを区別するポイントを教えてください。
軟こうなどを塗っても再発をくり返す湿疹、普段のスキンケアをしっかりとしていても出てくる湿疹は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。当院では、図鑑などをお見せしながら、こういう状態なら様子をみても大丈夫で、こういう状態の時は受診したほうがよいですよ、といったことを具体的にお話ししています。
アトピー性皮膚炎の場合には、皮膚のお手入れをよりこまめに丁寧におこなうことが大切です。汗や汚れがついた時はすぐに洗い流し清潔な状態を保つなど、普段の生活習慣について、詳しくアドバイスいたします。顔など、目に見えるところに症状が出るので、お子さま自身も、親御さまも心配になるかと思いますが、成長に伴って皮膚が強くなり、症状が出なくなることもよくあります。お子さまの湿疹が気になる場合は、なるべく早めにご相談に来ていただければと思います。
アトピー性皮膚炎の場合には、皮膚のお手入れをよりこまめに丁寧におこなうことが大切です。汗や汚れがついた時はすぐに洗い流し清潔な状態を保つなど、普段の生活習慣について、詳しくアドバイスいたします。顔など、目に見えるところに症状が出るので、お子さま自身も、親御さまも心配になるかと思いますが、成長に伴って皮膚が強くなり、症状が出なくなることもよくあります。お子さまの湿疹が気になる場合は、なるべく早めにご相談に来ていただければと思います。
お薬の服用が嫌いな子どもの花粉症を改善できる治療はありますか?
はい。舌下免疫療法といって、アレルギーの原因となる成分を少しずつ摂取し、体に慣らせていく治療があります。花粉症の症状は、軽いくしゃみ・鼻水などから、「目が腫れて開けていられない」「鼻が詰まって呼吸がしにくい」といった重い症状までさまざまです。毎年つらそうにしているお子さまを見ている親御さまは心配になりますよね。
当院ではまず、どの花粉が症状の原因かを検査します。そして、パンフレットなどを使って、どの時期にどの花粉が飛ぶか、どの時期からメガネ・マスクが必要か、お薬を飲み始めるとよいか、といったことを説明します。その中で、舌下免疫療法という選択肢についても、詳しく説明しています。
舌下免疫療法の場合、頻繁に受診していただく必要はなく、ご自宅で毎日行っていただく方法ですので、お子さまにとって、苦手なお薬を服用するよりは続けやすいかと思います。ただ、3年〜5年間、毎日継続する必要があるので、根気は必要です。そのため、親御さまともしっかりと協力し、お子さまを励ましながら治療を進めていますね。
当院ではまず、どの花粉が症状の原因かを検査します。そして、パンフレットなどを使って、どの時期にどの花粉が飛ぶか、どの時期からメガネ・マスクが必要か、お薬を飲み始めるとよいか、といったことを説明します。その中で、舌下免疫療法という選択肢についても、詳しく説明しています。
舌下免疫療法の場合、頻繁に受診していただく必要はなく、ご自宅で毎日行っていただく方法ですので、お子さまにとって、苦手なお薬を服用するよりは続けやすいかと思います。ただ、3年〜5年間、毎日継続する必要があるので、根気は必要です。そのため、親御さまともしっかりと協力し、お子さまを励ましながら治療を進めていますね。
ぜんそくに苦しむ子どもと触れ合う中でアレルギー診療に注力することを決意
ぜんそくの治療で大事にしていることがあれば、教えてください。
子どものぜんそくは、大気汚染がひどかった時代よりは少なくなってきていますが、発作が怖い病気です。私は勤務医時代、昨日まで元気だったお子さまが、突然の発作で呼吸困難に陥る、心苦しい光景を目の当たりにしてきました。そうした事態を起こさないためには、重篤な症状が出ていない時からお薬を飲み、健康な体を維持し、発作を予防することが大切です。また、ホコリや動物の毛髪、ダニなどにも気を遣ってほしいですね。ダニが発作のきっかけとなっている場合は、舌下免疫療法を提案することもあります。
お薬をいつも服用するのは、お子さまにとってはつらいかもしれませんが、1年、2年と予防対策を続けるうちに、発作は出にくくなりますし、その状態を数年保つことができればお薬がいらなくなることも多いです。アレルギー疾患は、まだまだメカニズムが分かっていない病気ですが、より新しいお薬や治療方法は、日々、更新されています。そうした情報をいち早くキャッチし、取り入れていけるようにしたいと思っています。
お薬をいつも服用するのは、お子さまにとってはつらいかもしれませんが、1年、2年と予防対策を続けるうちに、発作は出にくくなりますし、その状態を数年保つことができればお薬がいらなくなることも多いです。アレルギー疾患は、まだまだメカニズムが分かっていない病気ですが、より新しいお薬や治療方法は、日々、更新されています。そうした情報をいち早くキャッチし、取り入れていけるようにしたいと思っています。
小児アレルギーの診療に力を入れるようになったきっかけはなんですか?
小児科の医師になりたての頃、川崎市にある病院で勤務医をしていたのですが、当時の川崎市は工場が連なっていて大気汚染がひどく、風が吹くたびに嫌な臭いが漂ってくるような環境でした。そういう時代だったので、私の働いていた病院でも、ぜんそくで受診されるお子さまがとても多かったんです。先ほどもお話ししたように「昨日まで元気に遊び回って子が今日亡くなった」という状況に何度か直面し、突然の出来事に心の整理がつかない親御さまを前に、無力感にさいなまれました。今でも忘れられない、そうした診療現場での思いを胸に、ぜんそくに苦しむ子どもを一人でも減すために、小児アレルギーの勉強に力を入れるようになりました。
どのような思いで小児アレルギーの診療を続けているのでしょうか?
アレルギー疾患に関しては、病気のメカニズム、治療方針、お薬など、解明されていないことがまだまだあります。そのため、自分で課題を絞って研究していく甲斐がある分野だと思っています。そのポイントポイントを深めていくことで、新しい考え方を見つけ、それをほかに広げていくことができるという魅力もあるんですよね。
また、例えばぜんそくなどは、未来を担う子どもの命が突然絶たれてしまう、恐ろしい病気でもあるので、そうした子どもを一人でも減らすために、もっと研究が進められてほしい、進められるべきだ、という思いもありますね。年齢的に、私にできることは限られてくるかと思うので、活気ある若い後輩たちの研究成果を仰ぎながら、研さんしていきたいと思っています。
また、例えばぜんそくなどは、未来を担う子どもの命が突然絶たれてしまう、恐ろしい病気でもあるので、そうした子どもを一人でも減らすために、もっと研究が進められてほしい、進められるべきだ、という思いもありますね。年齢的に、私にできることは限られてくるかと思うので、活気ある若い後輩たちの研究成果を仰ぎながら、研さんしていきたいと思っています。
開業後は、地域に根付いた医師としてあらゆる小児疾患に力を注ぎ続ける
開院したきっかけについて、教えてください。
医師になった当初、関心のある病気の治療や検査に携わりたい思いはあるものの、実は開院に興味がありませんでした。ただ、私が勤務医をしていた当時の小児科はとても忙しくて、深夜の当直や土日出勤は当たり前の毎日でした。そうした環境で働いていたので、私も体調を崩しがちになった時期があり、「家族もいるし、今、過労死するわけにはいかない。もう少し調整の利く環境で診療したい」と思うようになりました。そのタイミングで、51歳の時に開院を決めました。
開院してよかったと思うのは、私の判断で運営ができることです。よいと思ったことはすぐに取り入れ、失敗してもすぐに体制を変えやすいので。また、より患者さまや親御さまの身近で診療できるのもメリットだと思っています。具合が悪いお子さまを、検査や診療、お薬の処方のために待たせるのは心苦しいので、必要検査をよりスムーズにおこなうことで、病院を受診する負担を少しでも軽減できれば幸いです。
開院してよかったと思うのは、私の判断で運営ができることです。よいと思ったことはすぐに取り入れ、失敗してもすぐに体制を変えやすいので。また、より患者さまや親御さまの身近で診療できるのもメリットだと思っています。具合が悪いお子さまを、検査や診療、お薬の処方のために待たせるのは心苦しいので、必要検査をよりスムーズにおこなうことで、病院を受診する負担を少しでも軽減できれば幸いです。
今後、「こんな診療に力を入れたい」といった展望はありますか?
歳も歳なので、新しいことにチャレンジするというよりは、現状でできる診療の中で、まだまだ実行できていない点を見直し、今後の診療に生かしていきたいですね。新型コロナウイルスの流行を受けて、発熱がある場合の対応などについては、とても参考になったと思っています。子どもが急に発熱することはよくあることなので、その際の感染症検査、治療、その他、予防接種などについて、どう対応するかなども、随時考えないといけませんしね。
また、食物アレルギーについても、より力を入れて取り組んでいきたいと考えています。原因や正しい診断方法など、未知のことが多いからこそ、親御さまの不安を取り除けるよう知識を深めたいですね。
また、食物アレルギーについても、より力を入れて取り組んでいきたいと考えています。原因や正しい診断方法など、未知のことが多いからこそ、親御さまの不安を取り除けるよう知識を深めたいですね。
お子さまの健康を案ずる親御さまに、一言、メッセージをお願いいたします。
私は35年以上にわたって、小児のアレルギー疾患の診療を行ってきました。この経験を生かし、地域に根付いた医師として、丁寧な診断・治療・管理に尽力しております。
アレルギー疾患をはじめ、お子さまの体調管理には、普段の食生活やスキンケアなど、親御さまとの連携が不可欠です。親御さまとともに、身近でお子さまの健やかな成長を見守り、困った時にしっかりとサポートできるホームドクターを目指して研さんするのが私の役割だと思っていますので、お子さまの体について、少しでも心配なことがあったら、いつでも気兼ねなくご相談にいらしてください。
アレルギー疾患をはじめ、お子さまの体調管理には、普段の食生活やスキンケアなど、親御さまとの連携が不可欠です。親御さまとともに、身近でお子さまの健やかな成長を見守り、困った時にしっかりとサポートできるホームドクターを目指して研さんするのが私の役割だと思っていますので、お子さまの体について、少しでも心配なことがあったら、いつでも気兼ねなくご相談にいらしてください。