
横山 申彦先生(日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医)にインタビュー
江戸時代から続く医師の家系に生まれ、父の姿を見て消化器内科の道を選ぶ
祖父は、新しい物が好きな性格でした。当時いち早くレントゲンも導入していたのです。父も、レントゲンを活用して、胃透視検査を行っていました。父や祖父の姿を見て、私も消化器系の診療科目に進みたいと考えるようになったのです。
新しい機器を導入したいという祖父の性格も、私は受け継いでいるように思いますね。当院は内視鏡だけではなくCTも導入していますし、できるだけ新しい機器にしたいとアップデートしており、内視鏡は今の機器で3台目です。
臨床研修では、和歌山県立医科大学から大阪府立成人病センター(現・地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター)に出向させていただきました。研修が終わってからも勤務医として各地の病院を回り、消化器病に関するさまざまな知識や検査方法を学びました。
今も役立っているのは、橋本市民病院時代に学んだ内視鏡検査時の記録の取り方です。現在は、機器の進化によって容易に画像データで検査結果を残し、患者さまに共有ができるようになりました。しかし、1980年代当時は、自身の記憶に残すことと絵や文章にして記録を残すしかありませんでした。私は今も、画像データに加えこの記録を続けており、患者さまにお見せすることもあるのです。
とはいえ入職した当初は、勤務医とは異なる医師と患者さまとの距離感を掴むのに苦労したこともあります。父が診療する姿を見ながら、自分なりに考えて、だんだんと距離感を掴んでいったように思います。1992年からですから、何十年もかけて築き上げてきたものですね。最近、循環器内科の医師をしている娘も診療を手伝ってくれるようになったのですが、やはり昔の私と同じで最初は苦労しているようです。白髪が生えてくるまで患者さまと時を重ねていかないと距離はなかなか近づかないのかもしれません。
消化器内科疾患は生活習慣の改善指導も大切にしながら治療を進める
最近は、「ヘリコバクター・ピロリ菌」という言葉をご存じの方がほとんどで、患者さまご本人が、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の検査を希望してご来院されることが多いですね。また、胃に何らかの不調を感じられて受診された方に、胃内視鏡検査を行う時には、「ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の検査も行いますか?」とお聞きし、希望される方には検査を行います。検査の結果、感染が認められた場合には、除菌治療をご提案しています。
逆流性食道炎の薬を服用してもなかなか改善されない場合には、胃内視鏡検査を行って、ほかの疾患が隠れていないかどうかを見落とさないようにすることも大切です。
問診では、お酒を飲み過ぎていないか、夜寝る前に食事を取られていないかといった、日常生活についても伺います。逆流性食道炎は、生活習慣が影響して起こることが多いためです。太ったことが原因で、胃と食道のつなぎ目が緩み胃酸の逆流を起こしている方もいらっしゃいます。どの消化器疾患にも言えることですが、過食やお酒の飲み過ぎを避けていただくことも大切なのです。
問診では、コロコロした硬い便なのか、柔らかい便なのか、便の状態を伺うようにしています。便秘の方の場合、痔によって出血が起きている方もいらっしゃいますが、直腸がんを見落とさないよう、便に血が混じっていないかどうかも伺うようにしていますね。
また、問診のほかに舌診も行います。舌診とは東洋医学で行う望診のひとつで、舌が白い場合は下痢か便秘を起こしていることが多いのです。必要に応じてお薬による治療につなげていきますが、水分をしっかりと取ること、朝起きて水を飲むこと、お腹をマッサージすることなど生活改善のアドバイスも同時に行っています。
ウイルス変異株の研究で得た知識を活かし院内感染予防対策に力を入れる
アレルギー疾患を含む呼吸器疾患の患者さまのご来院も最近では増えてきています。咳と言えば呼吸器疾患と思われがちですが、逆流性食道炎で咳の症状が現れる場合もあるのです。咳症状を診察する時は、呼吸器疾患なのか、消化器疾患なのかをしっかりと鑑別していく必要がありますね。内科疾患全般を診てきた経験を活かして、消化器疾患の可能性も含めて咳の原因を探っていきたいと考えています。患者さまのご希望や症状によっては漢方治療をさせて頂くことも可能です。長引く咳や咳き込んでしまうといった症状にお困りの方は、一度ご相談いただければと思います。
私は、消化器内科を学びながら微生物学教室にも所属して研究を行っていたので、学問的な幅広い視野を持って診療することができるようになったと思います。
研究室では、感染を予防するためにレッドゾーン、グリーンゾーンとゾーニングがされていました。研究室で教えていただいた知識は、新型コロナウイルスの院内感染予防対策にも役立っています。この知識を活かし、風邪症状の患者さまは隔離診察スペースで診療するといった対策を行っています。
また、当院ではマイナンバーカードによる受付システムを導入しています。受付をスムーズにし院内の滞在時間を軽減することで感染予防につなげるためです。マイナンバーカードによる情報の管理は、待ち時間の軽減だけではなく、ほかの医療機関で処方されたお薬の情報も確認できます。
当院は、かかりつけの医院として地域の皆さまの健康維持をサポートしてまいります。病気は早期に発見して治療につなげていくことが大切です。特定健診でもいいので、気兼ねなく受診していただくことで、病気の早期発見につなげていければと考えています。お身体のことで気になることがあれば、何でもご相談ください。
(※)対象の方は公費負担で受けていただけます。