光辻 辰馬先生(日本眼科学会認定 眼科専門医)にインタビュー
時代の流れや地域性に合わせた診療により、目の健康をしっかりとサポート
増加の原因としては、やはり社会のデジタル化に伴いパソコン仕事が増えたこと、スマートフォンやタブレット端末など目の近くで使うデバイスが増えたことが、若年層の眼精疲労につながっているようです。近くのものばかりを見ることで目が衰えて、遠くが見えにくくなる「近視」になる方も増えていますね。
また、眼精疲労が増加しているのは、目の疲れは自覚しにくいという要因もあります。身体は疲れたら休められますが、「目で見る」ことはコントロールができませんよね。気が付かないうちに疲労が蓄積されて、目の周りの痛みや頭痛にまで悪化する方も少なくないようです。目の疲れは検査で測れませんので、診察時には問診で症状や生活背景を伺って診断しています。
治療は手術が基本ですが、「目の手術」と聞くとハードルが高く感じるようなので、患者さまが「白内障でどれくらい困っているのか」「手術を受けたいと思っているのか」などを踏まえて、ご提案を変えさせていただきます。例えば、患者さまがそれほど目の見えにくさに困っていない様子であれば、点眼薬を処方して経過を観察する方針です。手術へのハードルが低ければ点眼薬は使わず、必要に応じて手術のご提案をしています。
手術の目安は、視力が0.7から0.5ほどまで下がった時です。それを目安に「手術をするかどうか」をお聞きしますが、最終的に手術をするかどうかを決めるのは患者さまですので、ご本人が納得の上で手術を受けられるよう丁寧に説明を行うこと、定期的に確認をすることを心がけています。
重要なのは、1回で検査を終わらせず、定期的にチェックし続けることです。初期の緑内障は発見が難しいので、1回目で大丈夫だったからと油断して50歳や60歳で改めて検査を受けると、手遅れだったというケースもあり得ます。若い方は2年から3年に1回、緑内障リスクが高い方は半年から1年に1回検査を受けて、リスク回避に努めていただきたいですね。
院内での治療に関しては、点眼薬の処方にのみ対応しています。レーザー治療が必要な場合には、近隣に複数ある総合病院のうち、患者さまが通いやすい所をご紹介させていただいています。
術前・術後のフォローに注力することで、目の手術への不安軽減に努める
総合病院での勤務医時代は白内障の手術を担当する医師でした。学びとなったのは、「患者さまとコミュニケーションを取って信頼関係を築き 、術前術後の説明をする時間をしっかりと取る必要性」を感じたことですね。大きな組織では一人ひとりの患者さまとコミュニケーションを取る時間が少なく、手術前後のケアが難しかったのです。そのために、手術がきちんとできていても、患者さまに納得していただけないという残念な結果になることもありました。
手術をして戻ってきた患者さまの経過観察やフォローをするのも、開業医の役割だと考えて力を入れています。大きな病院では、質問や相談をしづらいこともあるかと思いますので、そういったことを遠慮なくご相談いただきたいですね。
コミュニケーション重視の診療により、何でも相談できる身近な眼科を目指す
その一方で、患者さまのためになることは、率先して取り入れるようにしています。例えば、当院で導入している角膜形状や屈折力を解析する検査機器は、円錐角膜などの角膜形状異常を調べられる装置です。「きちんと検査を受けてからコンタクトを選んでいるのに、どうしても形状が合わない」という場合などの検査に役立てています。
今後のことを考えると、眼精疲労に対する方針を新しく構築する必要性を感じています。また、別の症状でお越しになった患者さまにもそういった情報をお伝えするなど、啓発活動にも努めていく必要がありますね。
私が臨床研修をしていた時代と違い、近年では街の眼科医院でも様々な検査ができるようになりました。そういった医療機器の導入や、時間をかけたコミュニケーションに注力することにより、患者さまの目の不調をできる限り見逃さず、ご自身の状態をしっかりと把握していただいた上での治療を心がけています。見えにくさや違和感、痛みなど、目に関わるお悩みであれば、どんなことでもご相談ください。