亀澤 比呂志先生(日本眼科学会認定 眼科専門医)にインタビュー
たとえリスクがあってもやりがいのある仕事を行いたいと考え開業を決意
高校2年生の時、得意だった理系を進路として選択しました。とはいえ、理学部や工学部に進んで、理系の研究をするというイメージがわかなかったんです。理系の職業の中で、唯一、自分の中で具体的にイメージすることができて、これだったらやってみたいと思える仕事が医師でした。人を助けることができる仕事だという点にも、魅力を感じたのです。子どもの頃に身近で見た仕事ですし、これなら自分にも楽しく仕事ができそうだと思えたので、医学部に進むことを決めました。
研修医時代は、2年間、さまざまな診療科目で勉強を重ねました。眼科だけではなく、整形外科、形成外科、麻酔科、救命救急など、いろいろな科を回って研修を受けたのですが、どこの科目も刺激的でとても面白かったですね。すぐに眼科へと進まずに、いろいろな診療科目で経験を積むことができたのは、よかったと感じます。
当院を開業したのは40歳の時です。大学病院勤務を経て、岡田眼科に勤務していた私は、とても居心地のよい毎日を過ごしていました。待遇がとても良く勤務医としての境遇に全く不満はありませんでしたが、達成感を得られないままぬくぬくと人生を送っていてもよいのだろうかという疑問を抱いたのです。人生の折り返し地点が迫る中、リスクを背負ってでもやりがいを感じられる人生へ早くシフトした方がよいのではないかと思い立ち開業を決めました。今は、大人としてやっと一人前の仕事をできているという実感を得られていますね。
また、「日本眼科学会認定 眼科専門医」を取得するために学ぶことは、他の先生とコミュニケーションをはかる時にも、必要な知識ですし、勉強を積み重ねていくためのベースとなります。患者さまにとっては、「日本眼科学会認定 眼科専門医」というのは、選んでくださる基準のひとつになるかと思いますので、そういった意味でも取得してよかったと感じます。
「日本レーザー医学会認定 レーザー専門医」と「日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医」は、どちらも眼科の先生で取得している先生がとても少ないので、一生懸命勉強して取得しました。自分でもよく頑張ったと思います。
アレルギー性結膜炎やドライアイの検査・治療に注力する医師
抗アレルギー点眼薬でも症状がおさまらない場合には、必要に応じてステロイド点眼薬を処方しています。また、まぶたにもかゆみの症状が起きている場合にはステロイド剤軟膏も使用します。目の周りをこすってかぶれてしまっているお子さまも多くいらっしゃいますね。
ステロイド薬は強い作用が期待できる薬ではありますが、副作用についても注意しながら使っていかなければなりません。ステロイド点眼薬は、副作用で眼圧を上昇させる恐れがあるからです。眼科の医師であれば、眼圧も含めて確認しながらステロイド薬を使用することができます。市販薬や他の診療科(内科・小児科・耳鼻いんこう科・皮膚科など)から処方されている薬で改善できない強いかゆみでお困りの場合は一度ご相談いただければと思います。
ドライアイは、これまで眼科医療であまり熱心に扱われてこなかった疾患のひとつです。ドライアイの原因ともなっている急速な社会のデジタル化に、まだ医療が十分に対応しきれていない部分もあるのです。また、ドライアイという名前は随分と一般的になってきたかと思いますが、その概念まではあまり浸透していないのではないかと思います。ドライアイによる目の不調が起きているものの、ご自身がドライアイだと気付いていない方も多くいらっしゃるのです。
当院では、ドライアイの治療に力を入れており、細隙灯顕微鏡検査、シルマーテスト、質問票を使った詳しい問診など検査をしっかりと行った上で、検査結果に応じた治療をご提案するように心がけています。
例えば、疲労で事故が起きるほど肉体を酷使させるような労働を強制している企業があったら社会的に問題になります。同様に、パソコンのモニターを一日に10時間以上見続けるようなデスクワークを強いるのは、ドライアイの原因になるほど目を酷使させているわけですから、眼科の医師からすればこれも過労であり、大きな問題です。しかし、IT社会が急速に発展している途上にある現在では、それが目にとってだけでなく身体的にも精神的にも重労働であるという認識がされておらず、放置されているのです。これは、社会的な問題ですので、すぐに改善することは難しいかもしれませんが、眼科の医師としては、目の健康のためにも警鐘を鳴らしていきたいところです。
形成外科の勤務経験を活かし、眼瞼下垂の手術にも力を入れる
当院では、眼瞼下垂の手術に力を入れています。レーザーメスを使って行う片目30分ほどの手術です。眼瞼下垂の手術は、ドライアイ同様、これまで眼科医療ではあまり熱心に扱われてこなかった分野です。私は、形成外科に勤務していたこともあります。形成外科での勤務経験も活かしながら、患者さまのご不便さを改善するため、今後も眼瞼下垂の手術に取り組んでいきたいと考えています。
しかし、重度の眼瞼下垂は日常生活にさまざまな影響を及ぼします。以前、テレビの前に座ってじっと俯いたまま一日中過ごしているというご年配の患者さまが、ご家族に連れられて手術を受けに来られたことがありました。テレビをご覧になりたいのかもしれませんが、眼瞼下垂で見えづらさがあるため、テレビを見ることができなかったのでしょう。このように、日常生活にご不便が生じているのであれば、生活の質を上げるためにも、手術をご検討いただきたいと思います。
大学病院で働いていた時は、既に診断のついた方が紹介されて受診され、治療方法を考えてほしいという方が多かったのですが、当院のような開業医のもとには、まず病気かどうかもわからず不安を覚えていらっしゃる方も多いのです。そういった不安を抱えた患者さまに対して、しっかりと検査を行った上で、できるだけ前向きな選択肢を提案し、不安を軽減するためのサポートができたらと思っています。目について困った症状があるけれど、どうしたらよいかわからないという方は、まずはご相談いただければ幸いです。