
中原 恭子先生(日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)にインタビュー
改善しない症状に悩む方たちを救いたいという思いが生んだ中医学との出会い
医学にはまだまだ未知の部分も多いため、西洋医学だけではなかなか症状の改善に至らず、苦しい思いをされている方も多くいらっしゃいます。「苦しむ方々を治療するための方法はないだろうか」と考えていた時に出会ったのが、漢方薬でした。中医学の三大古典の一つ『黄帝内経』が紀元前200年頃ですが、その中医学との出会いが、私の医師としての大きなターニングポイントになりました。
日本漢方も、その源には中医学がありますが、中医学の方がより哲学的に人や身体、病を捉えるという特徴を持っています。中医学では、すべてが宇宙とつながっていると捉えるので、人も宇宙の中のひとつの要素でしかないと考えるのです。すべてがつながっているので、天候や季節や温度などの変化が人体にも影響を及ぼすと考えます。例えば、地球温暖化や天候異常が体調不良の原因かもしれないと考えるのが中医学です。体調がなかなか改善されない30歳の方であれば、過去30年間にわたって、ご本人の家族背景や感情の歴史などを遡り、環境因子も含めて、その原因を探ってくのです。
米国に留学した時は、陣痛が起こるメカニズムの研究をしていました。その時に経験したことで印象深いことは、ラットや羊の羊水も、人間の羊水と同じ匂いがするということです。当たり前のことのようですが、生命の神秘を感じ入る出来事でした。
お子さまや思春期の年代のご相談であれば、私自身が経験してきた身体や心の悩みを参考にアドバイスすることも可能でした。一方で、自分より世代が上の方のご相談には、おもに医学的な立場からのアドバイスをさせていただきながら、更年期の症状や年を重ねることで生じるお悩みについて患者さまから教えていただくことも多かったですね。
医学の知識に加え、患者さまから教えていただいたことを吸収して、自分がどんどんと膨らんでいくように感じていました。開業医であれば、患者さまに寄り添いながら自分の考えを直接伝えることができるので、これまで吸収した知識を還元していければと考えて、開業することを決めたのです。
婦人科の悩みにも漢方薬を用いて原因から改善することを目指す
日本人の閉経の平均的な年齢は50歳頃ですが、早発閉経と言って40歳以前で閉経が起こることもあります。9歳から60歳頃までの幅広い年代の方が、「月経が来ない」と受診されることがあり、その原因として無月経、不正出血、閉経の可能性が考えられます。絨毛性疾患が無月経や不正出血の症状を引き起こすこともあるため、隠れた病気を見落とさないようにすることも大切です。
問診や検査によって診断につなげ、無月経の原因に合わせた治療をおこないます。治療は患者さまの希望に合わせ、毎月、月経があった方が良いという場合はピルを選択し、無月経を起こす原因から改善したい場合は漢方薬を処方します。消化管の不調やストレスが原因の場合は、それらに作用する漢方薬も用います。
市販薬やサプリメントをご自身の判断で飲まれている方もいらっしゃいますが、本来、サプリメントは食事で補い切れない栄養素を補充するために利用するものです。検査で実際に足りていない栄養素を確認し、サプリメント(※)をご提案することも可能です。運動療法のアドバイスのほか、症状に応じて漢方薬や保険適用のピルの処方もおこないます。漢方薬はピルの副作用を軽減するために使用する場合もあります。
(※)は一部自由診療の場合がございます。料金は料金表をご確認ください。
子宮内膜症の原因は諸説ありますが有力な説は月経血逆流説です。逆流した経血と共に、子宮内膜組織や細胞が骨盤内に運ばれ、骨盤内の臓器や組織に付着することで引き起こされると考えられています。
子宮内膜症は月経困難症と異なり、月経時だけではなく月経直後にも痛みが現れることがあるため、いつ症状が起きているのかをしっかり問診で伺うことが大事です。これから妊娠をする世代の方には不妊を引き起こす恐れがあることをお伝えしなければなりませんし、40代以上の方の場合は、卵巣がんを引き起こす恐れもあるため、定期的な検査で経過を確認する必要があります。
科学的なデータを用い現代の枠組みの中で漢方薬を捉え直し提案する
現在は、病院やクリニックに来られる人たちだけが医療を受ける対象となっていますが、それ以外の場所にも医療を必要とする方々がいらっしゃいますので、そこに届けていかなければいけないと考えています。当クリニックではオンライン診療(※)をおこなうことで、受診が難しい方にも医療を届けられるように努めています。地域の皆さまに対しても、草の根運動的に、医療に関する情報を啓蒙していくことができればと思います。
(※)料金は料金表をご確認ください。
また、漢方薬は、急性期の治療にも使われます。ずっと服用を続けなければいけない薬というわけではありません。例えば、月経前症候群(PMS)の患者さまに、月経前の2週間だけ薬を処方するといった使い方もできるのです。
最近は、患者さまの飲みやすさに着目した漢方薬も出てきています。1日2回の服用で作用する薬、スティック包装の薬など、職場や学校でも飲みやすい薬があるのだということを患者さまにはお伝えしていきたいですね。漢方薬に対して患者さまが持っている既成概念を変えていくということも重要ではないかと思っています。
最近は、WEBの検索機能も随分と進化し、その方に合った情報が示唆されるようになってきています。また、処方箋なしで購入できるOTC医薬品が増えていることは、病院やクリニックを受診できない方のサポートにもつながっていることでしょう。とはいえ、正しく選択できるように、専門的なアドバイスも時には必要ではないかと思っています。
「日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医」、「日本東洋医学会認定 漢方専門医」として、これまでに培ってきた経験をもとにアドバイスしていけたらと考えています。気兼ねなくクリニックを受診され、ご自身が悩んでいることを相談するというところからまずは始めていただきたいと思います。