川魚から感染する!肝吸虫症(肝ジストマ症)とは?症状や対策について
肝吸虫は、人などの哺乳類を宿主とする寄生虫です。
川魚を刺身や加熱が不十分な状態で食べることで、『肝吸虫症(肝ジストマ症)』を発症する可能性があります。肝吸虫症は重症化すると、肝硬変を引き起こすこともあります。
この記事では、肝吸虫症(肝ジストマ症)の症状や検査法、予防について解説します。
肝吸虫症について。症状は?どうやって感染する?
1.肝吸虫とは
『肝吸虫(かんきゅうちゅう)』は、人を含む哺乳類を宿主とする寄生虫で、肝臓に寄生します。
ウグイやコイ、フナなどの中間宿主を経てから、人や犬、猫などの最終的な宿主へと寄生していきます。一度寄生すると、20年以上も生存します。
肝吸虫は東アジア一帯に、広く分布しています。
成虫は平らな柳の葉のような形をしており、体長10~20mm、体幅3~5mmです。
2.肝吸虫症について
『肝吸虫症(肝ジストマ症)』は、肝吸虫の寄生している川魚を食べることで、肝吸虫が寄生して感染します。
肝吸虫は少数の個体のみの寄生で症状があらわれることは稀です。しかし、多数の成虫が寄生すると、肝臓の機能に障害を起こし、肝硬変や胆管細胞がんになることもあります。
3.肝吸虫の感染経路
肝吸虫の幼虫が寄生している、コイやフナなどの川魚を刺身や加熱が不十分な状態で食べることで感染します。肝吸虫を食べると、小腸から肝臓へとつながる胆管へ肝吸虫が侵入し、肝臓へ到達します。
生食は特に危険ですが、焼き魚でも加熱が不十分だと、肝吸虫が死滅せず、感染する危険があります。また、乾燥、塩漬け、酢漬けの魚などでも発症することがあります。
4.肝吸虫症の症状
軽い場合は無症状のことが多い
軽い肝吸虫症の場合、症状があらわれることは少ないです。
重症化した場合の症状
重症化すると、腹部の不快感や食欲不振、発熱、悪寒、腹痛、押した時の痛みをともなう肝肥大(肝臓が腫れて大きくなる)、下痢、軽い黄疸、好酸球増加(好酸球の増加が1500/μLになると、心臓,肺,脾臓,皮膚など、炎症や障害を起こすことがあります)
慢性化すると、肝硬変へと進行することも
慢性化すると、『胆管炎』(肝臓から十二指腸に胆汁を送る管である胆管という部分に炎症がおこり、寒気や吐き気、発熱などを伴う病気)にかかり、そこから『門脈線維症』や『肝硬変』へと進行することもあります。
また、慢性化することで多数の肝吸虫が胆道をふさぎ、黄疸が生じます。
合併症として胆管細胞がんを引き起こすことも
また、合併症として、胆管細胞癌にかかることもあります。
肝吸虫に感染してしまったら…
1.内科や消化器内科を受診!
日本でかかる肝吸虫症は、そのほとんどが軽症です。
もし気になる症状があれば、内科や消化器内科を受診しましょう。
2.肝吸虫症の検査方法
肝臓の状態を調べる検査
『逆行性膵胆管造影』(内視鏡を使って胆管・膵管を造影する検査で、カテーテルから造影剤を入れて、膵管や胆管のX線写真をとる)や『CT』、『MRI』、『エコー(超音波検査)』 などを使って、肝臓の状態や胆管の拡張、肥厚像(胆管などの壁が厚くなっている状態の画像)に異常がないか確認します。『血液検査』では、肝機能の状態を調べます。
寄生虫について調べる検査
『便検査』で、便の中に寄生虫がいるかどうかを調べます。さらに『寄生虫検査』では、胆汁を採取して、寄生虫の種類を調べていきます。
3.肝吸虫症の治療法
肝硬変まで進行している場合、寄生虫は駆除できても、肝臓は元に戻りません。その場合は、肝硬変に対する治療を実施します。
全国各地に生息する肝吸虫。予防法は?
1. 肝吸虫が生息する地域
肝吸虫は、利根川や琵琶湖湖畔、秋田県の八郎潟、岡山県の児島湾沿岸、四国の吉野川流域、九州の筑後川流域など、全国に広く生息しています。
2.肝吸虫症を予防するために
肝吸虫症の予防のため、川魚を生で食べないようにしましょう。
刺身で食べることで、感染の危険が高まります。また、加熱調理するさいも、十分に火を通すよう意識しましょう。
まとめ
肝吸虫症は、肝吸虫の幼虫が寄生している魚を食べることで感染します。
コイやフナ、ウグイ、ワカサギなどの魚に肝吸虫がいることが確認されています。これらの川魚を食べる場合は特に注意しましょう。
症状が軽ければ薬で対処できますが、進行し肝硬変になると、肝機能障害が残ってしまいます。感染した恐れがある場合は、早めに病院で診察を受けましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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