要注意!胃に穴をもあける『胃アニサキス症』とは

アニサキス症は、諸外国よりも圧倒的に日本の罹患者数が多く、1年間で約7,000件も発生していることはご存知でしょうか。
日本では、寿司や刺身など生の魚介類を食べる習慣があるので、実は古くから『胃アニサキス症』に悩まされてきたそうです。しかし、実際に病気の原因が特定されたのは1960年代にはいってからのことです。
この記事では、日本食を楽しむならば、ぜひ知っておきたい『胃アニサキス症』について解説します。
胃アニサキス症とは
アニサキス症は、簡単にいうと寄生虫による食中毒です。
寄生虫である“アニサキス”の幼虫は、長さ2~3cm、幅0.5~1mmくらいで、白く太い糸のような形をしています。新鮮な魚やエビの内臓に寄生し、寄生者が絶命したあとは筋肉に移動します。
このアニサキスが寄生している魚介類を人が食べてしまうと、胃や腸に入り込んでも胃酸ではころせないため、人に感染し吐き気や嘔吐などの症状がでてしまいます。
これが『胃アニサキス症』とよばれ、なんと全世界の感染者の90%が、日本で食事をしたことによって感染しているというデータまで出ている、日本人にとっては無視のできない病気です。
アニサキスが寄生する魚介類

アニサキスは青魚を中心に、サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、スジコ、アジなど160種類以上に寄生します。中でも最も多いと考えられているのは、イカとサバ(シメサバも含む)です。
食べた魚にアニサキスが1匹でも寄生していれば感染するリスクがあります。
とくに、12月~3月頃は胃アニサキス症にかかってしまう人が多い時期です。
症状について

アニサキス症の代表的な症状は、吐き気と嘔吐です。
この症状の原因は、体内に入ったアニサキスが胃の粘膜を突き刺して、奥に潜り込もうとしたことで引き起こります。
また、食中毒でよくみられる“下痢”の症状は、胃アニサキス症でみられることはほとんどありません。
症状は2タイプ!『劇症型』と『緩和型』
アニサキス症は、症状の程度によって『劇症型』と『緩和型』の2種類に分かれます。
『劇症型』
『劇症型』は、周期的に起こる、絞り上げられるような激しい上部腹痛とともに、悪心、嘔吐が代表的な症状です。アニサキスに罹患するほとんどの人が、劇症型の症状がでます。
『緩和型』
『緩和型』は、感染してからゆっくり症状があらわれるもので、なかにはアニサキスに感染しているにも関わらず全く症状がない人もいます。
症状があらわれるまでの潜伏期間
患者の7割近くが8時間以内に発症しています。
個人差がありますが、早ければ食後1時間で発症する人もいれば、1日半経ってから発症する人もいます。
腸に寄生虫が移動した場合
食べたあと10時間以降に発症した場合は、アニサキスが腸に感染してしまっている可能性があり、『腹膜炎』の症状ができることもあります。
腸に感染した場合は、『腸アニサキス症』と呼称が変わります。
治療方法

胃内視鏡検査で検査をおこない、アニサキスがいれば取り除くための処置をうけます。
完全に取り除くことができればすぐに痛みは治ります。
ただし、食後すぐのように、内視鏡ができない場合は、抗アレルギー薬が投与されることもあります。しかし、効果的な内服薬や治療薬が存在しないのが現状です。
さらに、腸に感染してしまった場合は取り除くことが難しいため、手術が必要となることもあります。
自然治癒を待たず、すぐに医療機関で相談を!
ほとんどの場合、感染してから1~3週間ほどで便などで排泄されます。アニサキスは胃酸で死滅しないものの、人間の体内は寄生しやすい環境ではないようで、時間がたてば治ることもあります。
しかし、ごくまれに数か月間体の中に生息し続けることもあります。
この場合、食べ物や消化液などが腸に詰まってしまう『腸閉塞(ちょうへいそく)』や腸に穴があいてしまう『腸穿孔(ちょうせんこう)』などの重い病気になり、治療も内視鏡だけでは済まず、手術が必要となってしまいます。
死亡例はありませんが、全身のショック症状がでることもあるので、症状がでたら我慢せずに早めに医療機関へ行きましょう。
寿司や刺身を楽しむためにできること

確実な予防法は、刺身、十分な加熱をしていない魚介類を避けることになりますが、一切食べないというのは日本で食事をしていると難しいこともあります。
そこで、魚介類を生でたべるときにできる予防法をご紹介します。
アニサキスは酢、塩、わさびなどの一般的に殺菌作用があるといわれている調味料に対しても抵抗性があります。
よく噛んで食べる
アニサキスの体はちぎれることで死滅するので、よく噛んで食べるようにするのも予防となります。青魚を生で食べるときはよく噛んで食べましょう。
調理に気をつける
60℃で1分、70℃以上で瞬時に死滅するので、加熱をすれば予防することができます。
また、新鮮なまま食べられない場合は、内臓だけでも先に取り除いておいたり、急速に冷凍して保管をするようにしましょう。
目でみて確認
アニサキスは目でも確認できることがあります。食べるときは、よく確認できるように薄切りにして食べるようにしましょう。
このほかに、アニサキスは酢、塩、わさびなどの一般的に殺菌作用があるといわれている調味料に対しても抵抗性があります。
さいごに
それでも生の魚介類を食べた後に、激しい腹痛や吐き気、嘔吐など、胃アニサキス症の症状がでたら、いち早く内科や消化器科などの医療機関で、適切な処置をうけるようにしましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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