自覚症状のない「肺サルコイドーシス」。合併症や重症化のリスクとは?
サルコイドーシスは「謎の多い病気」として知られています。
その原因は判明しておらず、自然に治ることもあります。しかし同時に重い病気へつながることもあり、注意が必要です。
そんなサルコイドーシスの中で最も多いのが、『肺サルコイドーシス』です。こちらの記事では肺サルコイドーシスの症状や危険性について解説します。
肺サルコイドーシスってどんな病気?
サルコイドーシスとは、ラテン語で「肉のようなものができる病気」という意味です。その名の通り、肉芽腫と呼ばれる肉のようなかたまりが全身にできる病気です。
この肉芽腫が肺にできた状態のことを、肺サルコイドーシスと呼びます。
1.原因
サルコイド―シスは病気が発見されてから、100年以上が経っています。しかし、いまだに病気の原因はわかっていません。
免疫反応やアレルギーが原因ではないかと考えられていますが、遺伝や体質など明らかになってない部分も多く、現在も原因究明の研究が続けられています。
2.診断を受けるまで
胸部X線検査(レントゲン)
健康診断などで行う胸部X線検査がきっかけで、肺サルコイド―シスが発見されるケースが多いです。
病理検査
胸部X線検査で異常があったら、続いて病理検査を行います。病理検査とは、病気が疑われる部分の組織を採取して、顕微鏡などを使い病気があるかを調べる検査です。
これで肉芽腫が確認されれば、肺サルコイド―シスと診断されます。
3.自覚症状
肺サルコイド―シスでは多くの場合、自覚症状がほとんどありません。驚くほど大きな陰影が胸部X線写真にあらわれても、自分で気がつくことは少ないです。
まれに、発熱や倦怠感などの症状が生じます。さらに、しこりのような膨らみが、皮膚表面や皮膚の中、筋肉内にできることがあります。このふくらみを結節といいます。また首やわきの下、足の付け根のリンパ節の腫れがみられるケースもあります。
合併症や重症化のリスクについて
1.重症化しても気づかない…ひどくなると呼吸困難も
肺サルコイド―シスは、重症化すると病気が肺の奥深くまで進行します。
一方で、重症化しても自覚症状がほとんどないため、自分では病気の進行度合いがわかりません。年に1~2回は、胸部X線検査を受け、病気が進行していないか確かめるようにしましょう。
さらに病気が進行すると、かわいた咳や息切れが生じることもあり、ひどいと呼吸困難に陥ります。
2.肺線維症や高カルシウム血症などを引き起こす
肺線維症
肺の陰影が長期間続くことで、肺線維症を引き起こすこともあります。
肺線維症とは、肺が十分にふくらまなくなり、酸素が不足して息苦しくなる病気です。
肺線維症になると、肺移植が必要な場合もあります。肺線維症を防ぐためにも、病気の早期発見、早期治療が大切です。
高カルシウム血症
サルコイド肉芽腫細胞からビタミンDが分泌されるため、小腸からカルシウムを吸収しすぎてしまいます。
そのため、血液中のカルシウムの濃度が異常に高くなる病気です。軽度のうちは疲れやすい、脱力感があるといったものですが、重症になると意識を失うこともあります。
肺サルコイドーシスの治療について
1.経過観察
肺サルコイド―シスは、自然に治ることも多いです。
日常生活に支障がなく、症状が軽い場合は、自然に治ることを期待して様子を見ます。
日常生活に支障をきたしたり、病気が進行して重症化したりした場合は、次の治療を行います。
2.薬物療法
肺サルコイド―シスで治療が必要な場合は、ステロイド剤を中心とした薬物療法を行います。
また、ステロイド剤と免疫抑制剤を合わせて治療することもあります。ステロイド剤の利用にあたっては、副作用が起きることがありますので、必ず用法を守り、異変があった場合はすぐに主治医に相談しましょう。
ステロイド剤が合わない方や、50歳以降の女性はホルモンの影響などで、治療が長期化することがあります。
まとめ
重い病気につながることも…年に1、2回は検査を!
サルコイドーシスは自覚症状のないまま治ることもありますが、同時に重い病気へとつながる可能性もあります。サルコイドーシスだと診断を受けたら、年に1~2回は胸部X線検査を受けるようにしましょう。
医師と相談のうえ、適切な治療を受けましょう
日本人のサルコイド―シスは、比較的軽い症例が多いです。そこまで深刻になる必要はありませんが、治療が必要かどうかはしっかりと見極める必要があります。
必ず医師と相談のうえで、適切な治療を受けるようにしてくださいね。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
関連コラム
「自覚症状のない「肺サルコイドーシス」。合併症や重症化のリスクとは?」以外の病気に関するコラムを探したい方はこちら。
関連する病気
「自覚症状のない「肺サルコイドーシス」。合併症や重症化のリスクとは?」に関する病気の情報を探したい方はこちら。