
院長
蒲地 紳一郎
取材日:2021年11月11日
蒲地 紳一郎先生(日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医)にインタビュー
手術を行う父親の姿を傍らで見て育ち、憧れだった耳鼻咽喉科の医師の道に進む
耳鼻咽喉科の医師になられたきっかけを教えていただけますでしょうか?
父が耳鼻咽喉科の医師として開業していたので、小さな頃から父の傍らでその仕事ぶりを見て育ちました。職場に直接顔を見に行くこともありましたし、手術をしている風景を見ることもありました。有床診療所で、入院や手術にも対応していたのです。
副鼻腔炎の手術は、現在は内視鏡手術が可能になりましたが、私が幼かった頃には局所麻酔で皮膚や骨を切開する必要がありました。骨を削開している姿を見て、子ども心に憧れましたね。朝から夜遅くまで忙しく働き、患者さまから感謝され、尊敬される父を見て、私も医師になりたいと思うようになったのです。3人兄弟の長男でしたので、「父の跡を継ぎたい」という思いもありました。高校で進路を選ぶ時に、迷うことはありませんでした。
父のような耳鼻咽喉科の医師になりたいという思いがスタート地点でしたので、医学部に進学してからも耳鼻咽喉科は力を入れて学んでいました。先輩や先生方にもかわいがっていただきましたので、やはり進むのはこの道しかないと考え、耳鼻咽喉科の道に進んだのです。
副鼻腔炎の手術は、現在は内視鏡手術が可能になりましたが、私が幼かった頃には局所麻酔で皮膚や骨を切開する必要がありました。骨を削開している姿を見て、子ども心に憧れましたね。朝から夜遅くまで忙しく働き、患者さまから感謝され、尊敬される父を見て、私も医師になりたいと思うようになったのです。3人兄弟の長男でしたので、「父の跡を継ぎたい」という思いもありました。高校で進路を選ぶ時に、迷うことはありませんでした。
父のような耳鼻咽喉科の医師になりたいという思いがスタート地点でしたので、医学部に進学してからも耳鼻咽喉科は力を入れて学んでいました。先輩や先生方にもかわいがっていただきましたので、やはり進むのはこの道しかないと考え、耳鼻咽喉科の道に進んだのです。
勤務医時代の経験で、今の診療に活かされていると思うことはありますか?
医師になって3年目、鹿児島市立病院では、耳鼻咽喉科の医師が3人しかいなかったので、部長、先輩の先生、私の3人で患者さまを3等分して診ることになりました。初診の患者さまを自分で診断し治療の道筋を付けるということを、初めて体験したのです。新患名簿を作り、診断とその後の治療や経過を記録し、自分の診断が合っていたかどうかを振り返って確認しました。
鹿児島市立病院では、がんの手術を中心に行っていました。耳鼻咽喉科で多いがんは、喉頭がんです。私が勤務医だった当時は、喉頭がんと診断された場合には、喉頭全摘が一般的でした。また下咽頭がんの摘出手術を行う時は、のどの再建を行わなければ食事が取れなくなるため、形成外科の先生たちと一緒に手術を行っていたのです。これは、終わるのが夜中の1時や2時になることもある大変な手術でした。
当時はとても忙しく、夜中に緊急手術で呼び出されることもありました。奄美大島からヘリコプターで急患の方が運び込まれることもあったんです。大変な日々でしたが、さまざまな経験を積むことができました。
鹿児島市立病院では、がんの手術を中心に行っていました。耳鼻咽喉科で多いがんは、喉頭がんです。私が勤務医だった当時は、喉頭がんと診断された場合には、喉頭全摘が一般的でした。また下咽頭がんの摘出手術を行う時は、のどの再建を行わなければ食事が取れなくなるため、形成外科の先生たちと一緒に手術を行っていたのです。これは、終わるのが夜中の1時や2時になることもある大変な手術でした。
当時はとても忙しく、夜中に緊急手術で呼び出されることもありました。奄美大島からヘリコプターで急患の方が運び込まれることもあったんです。大変な日々でしたが、さまざまな経験を積むことができました。
耳鼻咽喉科の医師としてやりがいを感じる時はどんな時でしょうか?
耳鼻咽喉科の診療では、お薬を処方するだけではなく、実際に患者さまの患部の病態を診て、処置を行うことをとても大切にしています。
例えば、耳の聞こえが悪いということでご相談に来られた方の耳を診てみると、耳垢が溜まっていて患部を観察できないこともあります。耳垢塞栓と言って、耳垢が耳栓のように耳を塞ぐことで難聴の症状が現れている方も中にはいらっしゃるのです。鼻の奥にある上咽頭に鼻漏が溜まり、それが耳管を通じて中耳へと入り込むと、中耳炎を引き起こします。鼻漏がのどへと入り込むと痰が絡んだ咳が生じます。こういった耳の奥の処置や、鼻の奥の病変をコントロールすることは、耳鼻咽喉科が得意としているものです。これらの処置を行うことで患者さまに喜んでいただけると、耳鼻咽喉科の医師として、とてもやりがいを感じますね。
お子さまの風邪症状も、耳鼻咽喉科ではお薬に頼らずに処置を行うことで、早期の改善を目指します。お子さまが風邪をひかれた時も、気兼ねなくご相談いただければ幸いです。
例えば、耳の聞こえが悪いということでご相談に来られた方の耳を診てみると、耳垢が溜まっていて患部を観察できないこともあります。耳垢塞栓と言って、耳垢が耳栓のように耳を塞ぐことで難聴の症状が現れている方も中にはいらっしゃるのです。鼻の奥にある上咽頭に鼻漏が溜まり、それが耳管を通じて中耳へと入り込むと、中耳炎を引き起こします。鼻漏がのどへと入り込むと痰が絡んだ咳が生じます。こういった耳の奥の処置や、鼻の奥の病変をコントロールすることは、耳鼻咽喉科が得意としているものです。これらの処置を行うことで患者さまに喜んでいただけると、耳鼻咽喉科の医師として、とてもやりがいを感じますね。
お子さまの風邪症状も、耳鼻咽喉科ではお薬に頼らずに処置を行うことで、早期の改善を目指します。お子さまが風邪をひかれた時も、気兼ねなくご相談いただければ幸いです。
自身も花粉症に悩む一人として、患者さまに寄り添った医療を提供する医師
大きな音が原因で難聴になることもあるそうですが治療できるのでしょうか?
強大な音が原因で外傷が起こり、難聴の症状が起きることを音響外傷と言います。コンサート、花火などのほか、ヘッドホンを使って音漏れがするほどのボリュームで音を聞き続けることが原因で、聞こえが悪くなる・キーンと耳鳴りがするといった症状が現れます。運動会のスターターをして、音響外傷になられる方もいらっしゃいますね。
音響外傷は、早期発見、早期治療が大切です。時間が経てば経つほど神経が変性し、元に戻らなくなる恐れがあるためです。
聴力検査に加え、耳の状態を確認し、突発性難聴や耳垢塞栓との鑑別を行った上で、治療を進めていきます。問診で病歴をしっかりと伺うことも大切にしています。ステロイド剤、ホルモン剤のほか、末梢神経の働きに作用するビタミンB12製剤などを処方して治療を進めていきます。また、日常生活で強大な音を耳に入れないよう、耳栓をするという指導も必要だと思います。早期治療は大切ですが、たとえ時間が経っていても諦めずに治療を行っていくことが大切ですね。
音響外傷は、早期発見、早期治療が大切です。時間が経てば経つほど神経が変性し、元に戻らなくなる恐れがあるためです。
聴力検査に加え、耳の状態を確認し、突発性難聴や耳垢塞栓との鑑別を行った上で、治療を進めていきます。問診で病歴をしっかりと伺うことも大切にしています。ステロイド剤、ホルモン剤のほか、末梢神経の働きに作用するビタミンB12製剤などを処方して治療を進めていきます。また、日常生活で強大な音を耳に入れないよう、耳栓をするという指導も必要だと思います。早期治療は大切ですが、たとえ時間が経っていても諦めずに治療を行っていくことが大切ですね。
花粉症で悩んでいる方も多いと思います。どのような治療を行っていますか?
花粉症は、私自身もずっと悩んでいる疾患なんです。レーザー治療も3回受けています。「日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医」として診療を行うだけではなく、同じ花粉症の悩みを抱えた者として、患者さまのつらさに寄り添って診療をできるのではないかと思います。
花粉症の原因として春先のスギやヒノキがよく知られていますが、秋に飛散するブタクサやヨモギの花粉症の方もいらっしゃいます。スギ花粉も春先にしか飛散しないと思われていますが、九州地方では、8月以外、ほぼ1年中スギ花粉は飛散しているというデータもあるのです。また、花粉症だと思っていても、実はハウスダストに反応していたということもあります。一度、アレルギーの原因は何かを検査して、ご自身のアレルゲンを把握された上で適した治療を受けられるとよいのではないでしょうか。
当院では、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の方には対症療法のほかに舌下免疫療法も行っています。また、レーザー治療にも対応しており、鼻づまりに悩んでいる方にご提案しています。
花粉症の原因として春先のスギやヒノキがよく知られていますが、秋に飛散するブタクサやヨモギの花粉症の方もいらっしゃいます。スギ花粉も春先にしか飛散しないと思われていますが、九州地方では、8月以外、ほぼ1年中スギ花粉は飛散しているというデータもあるのです。また、花粉症だと思っていても、実はハウスダストに反応していたということもあります。一度、アレルギーの原因は何かを検査して、ご自身のアレルゲンを把握された上で適した治療を受けられるとよいのではないでしょうか。
当院では、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の方には対症療法のほかに舌下免疫療法も行っています。また、レーザー治療にも対応しており、鼻づまりに悩んでいる方にご提案しています。
滲出性中耳炎のお子さまの治療を進める際に大切にしていることは何ですか?
急性中耳炎を起こした後、鼻の調子がよくないと耳管の通りも悪くなります。これによって、鼓膜の内側の中耳腔に滲出液が溜まる病気を滲出性中耳炎と言います。耳が詰まったような症状が現れ、軽度の難聴になるのです。滲出性中耳炎は、お子さまとご年配の方に多い疾患です。
滲出性中耳炎は、急性中耳炎のように痛みが生じるわけではありません。お子さまは、聞こえの悪さに気付きにくく自分から訴えることが少ないので、テレビの音が大きい、呼びかけに反応しないといったことがあれば受診していただければと思います。乳幼児健診でもティンパノメトリーで鼓膜の動きを確認しますので、健診で異常を指摘されたらご相談ください。
治療は、耳管を通す処置を行います。それでも改善されない場合には鼓膜を切開し、溜まっている滲出液を除去してチューブを入れる、鼓膜チュービングという処置を行います。お子さまに処置を行う場合は、怖がらせないように段階を踏んで進めていきます。また、焦らずに、お子さまの個性に合わせることも大切だと思います。
滲出性中耳炎は、急性中耳炎のように痛みが生じるわけではありません。お子さまは、聞こえの悪さに気付きにくく自分から訴えることが少ないので、テレビの音が大きい、呼びかけに反応しないといったことがあれば受診していただければと思います。乳幼児健診でもティンパノメトリーで鼓膜の動きを確認しますので、健診で異常を指摘されたらご相談ください。
治療は、耳管を通す処置を行います。それでも改善されない場合には鼓膜を切開し、溜まっている滲出液を除去してチューブを入れる、鼓膜チュービングという処置を行います。お子さまに処置を行う場合は、怖がらせないように段階を踏んで進めていきます。また、焦らずに、お子さまの個性に合わせることも大切だと思います。
がんの手術に従事してきた経験を活かすとともに新しい知識の吸収も怠らない
今後、力を入れていきたいことについて教えていただけますでしょうか?
医学は日進月歩ですので、私自身も新しい治療法や病気について、勉強を続けていかなければならないと思っています。今後も新しい知識を吸収し、患者さまへと還元できるように日々、努めていきたいですね。
また、補聴器のご相談についても、きちんと聴力検査を行った上で、その方の聞こえの状態に合った補聴器をご提案できればと考えています。補聴器は、周囲の音を一律に大きくしているのではなく、その方が聞こえにくくなっている周波数領域の音量を上げることで、聞こえない音だけを拾い上げて聞こえをサポートする器具です。メガネの度数を合わせるように、その方に合わせてフィッティングしていくことが大切ですので、ご相談に乗っていければと考えています。
コロナ禍になってから、ご年配の方の中には、耳鼻咽喉科の受診を控えている方もいらっしゃるようです。しかし、難聴があると、認知症を引き起こしやすいとも言われているので、もし耳の聞こえが悪いのであれば、受診を控えずにご相談いただきたいと思います。
また、補聴器のご相談についても、きちんと聴力検査を行った上で、その方の聞こえの状態に合った補聴器をご提案できればと考えています。補聴器は、周囲の音を一律に大きくしているのではなく、その方が聞こえにくくなっている周波数領域の音量を上げることで、聞こえない音だけを拾い上げて聞こえをサポートする器具です。メガネの度数を合わせるように、その方に合わせてフィッティングしていくことが大切ですので、ご相談に乗っていければと考えています。
コロナ禍になってから、ご年配の方の中には、耳鼻咽喉科の受診を控えている方もいらっしゃるようです。しかし、難聴があると、認知症を引き起こしやすいとも言われているので、もし耳の聞こえが悪いのであれば、受診を控えずにご相談いただきたいと思います。
貴院で課題に感じていることや改善していきたいことはありますか?
できるだけ患者さまをお待たせしなくても済むように、ネット予約を活用して、スムーズに受診していただけるような医院になっていきたいと考えています。
ご年配の方は、インターネットの利用がまだ難しいこともあって、現在、当院では、ネット予約と医院での順番待ち受付を併用しています。朝、医院を開けた時に、診察券を直接入れに来て順番待ち受付をされる方がまだ多いのが現状です。今後、少しずつでも、ネット予約がうまく回っていくとよいと考えています。
ご年配の方は、インターネットの利用がまだ難しいこともあって、現在、当院では、ネット予約と医院での順番待ち受付を併用しています。朝、医院を開けた時に、診察券を直接入れに来て順番待ち受付をされる方がまだ多いのが現状です。今後、少しずつでも、ネット予約がうまく回っていくとよいと考えています。
最後に、読者の皆さまに伝えたいメッセージがあれば教えていただけますか?
「日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医」として、命に関わる疾患を見逃さないということを心がけて診療を行っています。また、万が一、悪性疾患が見つかった場合には対応可能な医療機関をすみやかにご紹介することが大切だと思っています。
耳鼻咽喉科で診療するがんには、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、舌がん、上顎洞がん、耳のがんである聴器がんなど、さまざまな頭頸部のがんがあります。耳鼻咽喉科で扱うがんは、場合によっては眼球や舌、上顎、咽頭などを摘出しなければならないため、見た目やQOLに大きな影響を及ぼす恐れがあります。例えば、喉頭全摘出を行うと、これまでのように声を出すことが難しくなりますが、食道を使って発声するリハビリテーションの指導といったサポートもあります。
まずは、こういった命に関わるような疾患を見落とさないようにしていくことが大切です。勤務医時代には、がんの診療にも従事してきましたので、その経験を活かして注意深く診療にあたってまいります。
耳鼻咽喉科で診療するがんには、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、舌がん、上顎洞がん、耳のがんである聴器がんなど、さまざまな頭頸部のがんがあります。耳鼻咽喉科で扱うがんは、場合によっては眼球や舌、上顎、咽頭などを摘出しなければならないため、見た目やQOLに大きな影響を及ぼす恐れがあります。例えば、喉頭全摘出を行うと、これまでのように声を出すことが難しくなりますが、食道を使って発声するリハビリテーションの指導といったサポートもあります。
まずは、こういった命に関わるような疾患を見落とさないようにしていくことが大切です。勤務医時代には、がんの診療にも従事してきましたので、その経験を活かして注意深く診療にあたってまいります。