森川 郁郎先生(日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医)にインタビュー
患者さまに寄り添い、一人ひとりのニーズに合わせた診療を提供する医師
例えば、お薬選び一つといっても、副作用が強くてもすぐに服用結果が出る薬や、副作用の眠気が少ない薬、あるいは薬を飲みたくないというニーズにお応えしています。妊娠・授乳などでお薬が飲めない場合は、鼻の粘膜を焼灼するレーザー治療をご提案することもあります。また、症状を根本から治療をしたいという方には、アレルギーの原因物質を少しずつ舌の下で溶かして免疫を作る、舌下免疫療法をご提案いたします。
患者さまのニーズにお応えするには、治療前に患者さまが本当に花粉症かどうか、何の花粉が原因なのかを調べることが大切です。そのため、スギ・ヒノキ・ダニ・犬などさまざまな抗原検査を行います。
治療では軟膏を塗ったり、内服薬を処方したり、血流を良くするための紫外線療法を行ったりして、できる限り早く症状を緩和できるように努めています。強い内服薬は副作用で眠気が出るので、患者さまのお話を聞いて、ニーズに合ったお薬を選ばせていただいています。
また、自分で耳かきをされている方は、耳あかを押し込んでしまったり外耳道を傷つけてしまったりして、痛みやかゆみを起こしていることがあります。そういったトラブルを起こさないためにも、ぜひ半年に一度くらいの頻度でご来院いただいて、耳のお掃除を受けていただければと思いますね。
耳鼻咽喉科領域のめまいに関しては、ストレスによるものが増えている傾向です。メニエール病に症状が似ためまいと頭位めまいの2種があり、違いは聞こえに異常があるかどうかで判断します。検査では目の動きでめまいの有無を調べる眼振検査と聴力検査を行い、どのタイプかを診断します。
患者さまの中には補聴器に抵抗のある方が多いようですが、補聴器技能士のいる補聴器屋であれば、その方に合ったものが選べます。また、めまいが出た場合は横になっているよりも、無理のない程度に身体を動かしたほうが早く症状が落ち着きます。そういったアドバイスにより、患者さまが日々を快適にすごせるようサポートいたします。
父親が遺した地域に根付いた診療所を、より発展させていくため尽力
また、私は嚥下障害の研究を行っていました。こちらもあまり相談されることのない分野ですが、普段なかなか経験しないからこそ、実際に異物除去をする際は、過去に学んだことが生かせていると思います。
佐賀県は東京に比べれば田舎ですから、大学病院でも専門というよりは、幅広く診療を行う必要がありました。幅広く診ていたからこそ、診療所勤めになってから相談の多い、耳の痛みや難聴、花粉症などの対応がスムーズに行えているのではと感じています。
父の時代には入院手術にも対応していたのですが、私が継承した時期には花粉症などの患者さまが増えてきたことから、手術が必要な方は高次の病院へご紹介することにしました。花粉症の治療法も、内服薬がメインだったのがレーザー治療や舌下免疫療法など、継承当時は取り扱っていなかった新しいものを取り入れています。医療の進歩に置いて行かれず、患者さまのニーズにお応えできるように、努力を続けていきたいですね。
地域のかかりつけの医院として、時代の変化に合わせて柔軟に対応
また、高齢化社会に伴い難聴の方が増えてきていますので、そちらへの対応も必要だと考えています。特に加齢性難聴に関しては治療がほぼありませんから、補聴器の相談にはしっかりと対応していきたいというのが私の考えです。選び方さえ間違えなければ、昔に比べて聞こえやすい補聴器が出てきていますから、その点を患者さまにきちんとお伝えしていきたいですね。
私個人の展望としては、今後も地域の皆さまに寄り添った診療を行っていく方針です。耳鼻咽喉科というとスムーズに淡々と診察をするイメージがありますが、可能な状況であれば患者さまのお話をなるべく丁寧に伺い、ニーズに合わせた診療を提供できるよう尽力しています。
また、私の研究テーマである嚥下障害の部分も、現状はリハビリテーションによる症状の緩和が主な治療法です。高齢化が進んで誤嚥や誤嚥性肺炎が増えている現状に合わせて、診療所としても何か治療ができればと考えています。
花粉症治療に対する私のこだわりとして、患者さまの同意があれば抗原検査でアレルギーの原因物質を調べた上で、治療へ進みたいという考えがあります。原因がわかればよりその方に合った治療の提案やアドバイスができるからです。内服薬やレーザー治療、舌下免疫療法など治療法もさまざま用意して、患者さまのニーズに合わせた対応を心がけています。
そのほか、補聴器は役に立たない、聞きにくいという意見を持つ方もいらっしゃるようですが、昔と比べて最近の補聴器は聞き取りやすくなっています。どの疾患にもいえることですが、できる限り患者さまのお話を伺って、一人ひとりのニーズにお応えしたいと思っています。難聴を「年を取ったら仕方のないこと」だとあきらめず、ぜひご相談へいらしてください。