橘 良哉先生(日本消化器病学会認定 消化器病専門医)にインタビュー
症状を引き起こすメカニズムを学んだ医師が、代々続く地域医療に貢献
私は手先を使う細かい作業が好きで外科に進みたかったのですが、実家が営む内科の診療所を継ぎたい気持ちもありました。その両方を満たすために、内科の中でも手先の技術が求められる「消化器内科」の道を選ぶことにしました。
内視鏡は、すべての操作にマニュアルにはないような技術が必要とされます。そこに魅力を感じていますし、技術が向上するほどさまざまなことを知ることができ、改めて早期発見に役立つ機器だなと感じています。
具体例を挙げるのであれば、新型コロナウイルスです。新型コロナウイルスもウイルスによる炎症です。ウイルスに対して免疫が反応して、咳や発熱症状、関節の痛みなどが出ます。これらの症状に対して、どのようにアプローチすれば改善するか、感染症を収束できるかを理解していますから、「ここにアプローチした方が良いな」と正しい治療方法にたどり着くことができます。
内視鏡検査は、経口の内視鏡だけでなく経鼻のものがあったり、細いスコープを使用したりするなど、さまざまな技術の進歩によってそこまでつらくなく検査が受けられます。もちろん、緊張感や恐怖感から苦痛を感じることもあるので、声かけや雰囲気づくり等にてリラックス出来るように努めています。ただ、楽な検査を目的としているわけではなく、患者さまの負担が少ない、かつ、情報をしっかり得ることをモットーとしています。
内視鏡で隠れた疾患の早期発見に尽力するほか、心のケアにも注力
また、長引く咳や喉元の違和感、不眠の原因が、逆流性食道炎だったというケースもあります。症状に対するアプローチ方法はさまざまありますから、何を改善したいのか、治療に前向きに取り組むためにはどのような方法がいいのか、患者さまの心に寄り添ったケアに努めています。加えて、なぜその治療や薬が必要なのか、わかりやすく説明することも大切にしています。
自分の身体を知ってもらう方法としては、やはり検査です。検査を受けることで異常がないことや大きな病気ではないことを明確にしていただければと思います。また、消化器内科は似たような疾患があることから、他の病気とこんがらがったり、病気のとらえ方がお一人おひとり異なったりするので、心療内科のように私が紐解きながら説明するようにしています。
十二指腸潰瘍だと診断が付いた場合は、原因であるピロリ菌の除菌治療を行います。将来の胃がん罹患や大きな病気の芽を摘むためにも除菌治療を行い、リスク軽減に努めましょう。
私は病名から診療を始めるのではなく、症状から診るようにしています。来院されたきっかけが腹痛だったとしても、別の病気に至るケースが少なくないからです。もちろん、この疾患だろうなという予想はしますが、多種多様な病気に対して一辺倒の治療になってしまわないよう気を付けています。
地域のかかりつけの医師として、知識のアップデートをし続ける医師
加えて、今後も苦痛の少ない内視鏡検査を提供し、疾患の早期発見や早期治療に注力して行きたいです。検査時の緊張を和らげる方法として麻酔を使用するのも一つですが、あくまで医師の技術があってこそ楽に受けられるものだと私は考えていますから、今後も丁寧な検査を行っていく所存です。
さらに、院外の病院で引き継いでみてもらうことを想定し、介護施設や基幹病院との連携も密に取っています。チーム医療に携わることで新しい知識をアップデートしたり、多角的な視点で診たりして、独りよがりな医療は行わないように気を付けています。
急な症状の際に慌てて医師をさがすのは大変ですから、患者さまの身体の状態を把握している「かかりつけの医師」を選んでおくことは重要です。「日本消化器病学会認定 消化器病専門医」として、医療の窓口として、気兼ねなく頼っていただければと思います。