荻原 泰先生(日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医)にインタビュー
父親が築き上げた地域住民との信頼関係をさらに深めていきたい
本格的に消化器内科の道へ進もうと思ったのは、臨床研修時代に内科の先生が内視鏡を行う姿に憧れたのがきっかけです。私が大学を卒業した1981年頃に、内視鏡のカメラや検査技術の発達が進んだこともあり、将来がんの撲滅を目指すためには、内視鏡検査が重要な役割を担うだろうと考え、内科に行った後消化器内科を専門とすることを決めました。
その後、消化器内科に入り、学生時代の先輩から「内視鏡の研鑽に来ないか」と誘われ、1984年から約1年間国立がん研究センターの内視鏡室で胃カメラについて日々研鑽を積みました。国立がん研究センターでは、検査の技術だけでなくがん早期発見のために必要な診断力を身に着けられたと思います。当時の仲間とは現在も交流が続いていますよ。 国内留学をしたことや内科でも診療経験を積めたことは、キャリアを形成する上でとても役に立ちましたね。
やはり検査のために病院へ行くとなると、結果が出るまでどうしても時間がかかってしまうので、クリニック同士で連携して、患者さまの負担も減らしていければと思っています。荻原医院は、父親が開業してから現在まで、大倉山周辺の医療機関とは長い付き合いがあります。私が医院を引き継いだ後も、周辺の医療機関とのコミュニケーションをとりながら、地域の方々が気兼ねなく来られる医院でありたいと思っています。現在も父親が築いてきた信頼関係を守り続けたいという気持ちで診療を続けていますよ。
自分自身の身体の健康を守るためには、早期発見・早期治療が大切
ヘリコバクターピロリ菌感染症というのは、放置してしまうと胃がんになるリスクが高まってしまうので、感染が疑われる場合は放置せずに早めにご来院いただきたいです。治療としては、内視鏡検査を行い、必要に応じて除菌治療を受けていただいております。なかには一度の除菌ではピロリ菌が残ってしまう場合もありますので、呼気テストを行いピロリ菌がいなくなっているかどうかを都度しっかりと確認するようにしています。ピロリ菌の除菌は2回目までは保険で治療ができますので、1回では不十分だった患者さまにはもう一度除菌治療を受けていただくようにしています。
(※)は、お住まいの市区町村によっては補助制度を利用できます。自由診療となる場合もありますので、料金表をご確認ください。
また、アルコールが原因の脂肪肝に関しても注意が必要です。コロナ禍の影響から家飲みによる個人の飲酒量が増え、脂肪肝を起こす方がいらっしゃいます。脂肪肝は放置しておくと悪化してしまい、肝硬変に発展する恐れがあります。健診などで異常を指摘された場合は、早めの検査をお願いしたいですね。
がんの早期発見につながる取り組みに力を入れていきたい
また、胃がん患者さまを減らすことにも引き続き注力していきたいと思っています。ピロリ菌除菌をすすめていくことで胃がんのリスクがある患者さまの人数は減少傾向にありますが、今度はピロリ菌が陰性で胃がんを発症してしまう患者さまへの診断が問われる時代になりつつありますね。膵臓がんや胃がんの早期発見および診断にこれからも一層励んでいく所存です。
また、「超音波内視鏡検査」という、内視鏡の先端にエコーが付いたカメラが医師の間で普及していくことを望んでいます。先ほども申しましたが、がんの中でも膵臓がんは発見率が特に低いと言われていますから、早期発見のために医師と医療機器双方の診断力を上げていかなくてはいけないと考えています。
私が患者さまに望むことは、年に1度はエコー検査をして、膵臓がんの疑いがないかどうかを確かめてほしいということです。また、ピロリ菌が存在しているかの検査もしていただければうれしいですね。がんの早期発見のために、患者さまご自身にも定期的な検査に関心を持っていただければと思います。