検診・人間ドック｜福井厚生病院

柳田邦男さんが書かれた「ガン回廊の朝」という本がございます。本の内容は、がんと戦う医師の話なのですが、その本を読んだときに医師という職業は「とてもいいな」、「すごいな」、「やってみたいな」と感化されて実際に医師を目指すようになったのがきっかけです。本当に単純かもしれませんが、それでも私にとっては重要なターニングポイントの一つです。

当健診センターにいらっしゃる方は、「患者さま」ではなく、皆さん普段は元気に仕事をされており、年1回自分の身体に何か異常がないかどうかということをみにきていらっしゃるので、待ち時間はできる限り短くしたいと考えております。診療時間というのは限られておりますが、その中で、どうしてもちゃんと治療していただきたい、注意していただきたいということを上手に伝えていきたいと常に思っています。

通過管理システムというものがあり、今すいているところ、つまり検査がすいているところへスムーズに誘導ができるというシステムになっています。ただ、なかなか思うようにいかず、たとえば想像していただけると分かるかもしれませんが、同じ検査でも異常がない人は、パッと終わることがあるのですが何か異常が見つかったり、診療で少し血圧が高いなどというお話をするとどうしても時間がズレてきてしまうのが現状です。

今のところ、こだわっているものというのは特にはありません。ただ、大腸がん検診、つまり便潜血検査の場合、多くはどうしても後日の結果報告ということになりますが、それを当日何とか結果を出して、「大腸の方を心配なので一度検査してみてはどうか」とその日のうちに受診者の皆さんにお伝えできるような工夫をしております。

内科と外科の担当医もおり、またそれぞれにカメラを使いこなせますので、この環境を生かして病気を早期に発見して皆さんに元気になっていただきたいと思っています。人間ドックを受けるのはお元気な方、つまり自覚症状がない方が多いので、自覚症状がないうちに病気を早く発見して、早く元気になってもらいたいと考えております。

当院は、どちらにも対応ができるようになっております。経口内視鏡もできますし、経鼻内視鏡もできますので、受診者のニーズに合わせて、ご希望を伺って対応しているのが現状です。私が知る限りは、経口内視鏡を希望される方が当院では多いです。経鼻内視鏡の方はそれほど多くないですが、とてもラクだということで継続的に毎年受けていただく方もいらっしゃいます。

不快感や苦痛があるという場合は、鎮静剤の注射を使用して、少しでもそのような症状をとるという方法もあります。ただ、われわれが行っている、人間ドックの胃カメラの場合は、原則はそのような鎮静剤は使わない、つまり身体にあまりご負担をかけないというのが基本であります。しかし、どうしてもつらい、年に１回お注射の力を借りて少しでもラクにチェックをしたいと言う方には鎮静剤を使用するという対応をしております。

たとえば、脳ドックで言いますと頭のMRIという検査がございます。それ以外には動脈硬化を診る頸動脈エコーというのがありますが、そういう検査も行うことができますし、ほかにも肺がん検診の胸部CTなどもすぐに撮れることも一つのメリットになると思います。健診で何か異常があり、直ちに治療に入っていただきたい方は、人間ドックが終わって、そのままスタッフが病院の方にご案内してすぐに治療に入れるという体制がとれております。

胃カメラを行う場合、前もって問診の時点でピロリ菌の検査を行ってよいかの確認を保健師や看護師が聞いております。ご同意があった場合は内視鏡のときの結果によって、ピロリ菌検査が必要という場合には追加で検査をさせていただいております。その必要が無い場合は、「健康な胃で良かったですね」ということになり、それぞれに応じて必要な検査を追加してより良い検査を提供できるような工夫というものをしております。

実際のデータですが、ピロリ菌は自分の年齢と同じぐらいのパーセントの人がいると言われています。たとえば50歳ですと、50％、つまり2人に1人ぐらいにピロリ菌がいるということになります。もちろん若い方は、ピロリ菌のいる人が少ないというのが現状としてありますが、若い人でもぜひやった方といいと思う方には、おすすめさせていただいております。

生活習慣病は自覚症状が全くございません。たとえば、血圧が高い、血糖値が高い、そういう場合でも自覚症状が出ないので、気を付けた方がいいと思った場合、お声をかけさせていただいております。元気な状態だと信じている方は、ちょっと血圧が高い・血糖が高いと言われてもなかなかその事実を受け入れることができないということがあります。そういうところをなるべく受け入れてもらえるようにという工夫をしております。

今も申しましたが、やはり生活習慣病の予防、あとがん検診の二つの柱というところで皆さんのお役に立てるとうれしく思います。その中で、一般的には健診の結果というのは2、3週間後に報告書を郵送するわけですが、直ちに治療が必要な方には報告書に頼らずになるべく早くお電話でお話をして対応ができるなど、個人のニーズに合わせて急ぎで対応できるような個別対応をしていきたいと考えております。