長谷田 文孝先生(日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医)にインタビュー
万病の元を取り払いたいと考え、糖尿病に特化した医師を目指す
医学部に進んだ当時は、私自身がスポーツが大好きで、10代の頃にスポーツに打ち込んでいたこともあり、スポーツに関する医学について興味を持っていました。スポーツ外傷などを診られたらいいなと考えたこともありましたね。同じように免疫に関しても興味が強かったです。アレルギーや腫瘍免疫なども含め、同じ人間であっても、一人ひとり異なることが興味深かったからですね。
肥満や糖尿病、脂質異常などは、万病の元となります。その根っこを取り去る治療がしたいと考えました。それに、患者さまと話すことが好きだったからという理由もあります。生活習慣病は、患者さまに合わせた治療をご提案するために、患者さまとよくお話しして患者さまを知ることが大切です。私は人と話すのが好きなので、自分に合っていると考えました。
診療の際は、患者さまのお話をよくお聞きすることを心がけています。患者さまの生活習慣などを知らないと、よりよい治療を提案することはできないですからね。父も患者さまのお話をよく聞いていたので、その影響もあると思います。いずれは父のクリニックを継ぎたいという思いも持っているのですが、今はここにお越しくださっている患者さまを大事に、丁寧な診療を続けていきたいと思っています。
生活習慣指導だけでなく、患者さまの負担を考えメンタル面もサポート
発症年齢もさまざまで、小児期や中高生など、若年発症する場合もあります。そのため、発症の事実をなかなか受け入れられなかったり、食べたいものが食べられないというストレスを抱えたりと、患者さまの精神的な負担が大きい病気でもあります。診察の際は、そのような患者さまの精神的な負担に十分に配慮し、時間をかけてお話しするようにしています。長く付き合っていく治療ですので、あまり神経質になりすぎず、かといって食べ過ぎたりもしないように、病気をうまく受け入れてもらえるようにお伝えすることを心がけています。
ただ、特にお勤めされている方などは、「運動をする時間が取れない」という場合も少なくありません。そういった時は、夕食を食べてから1時間半後くらいに有酸素運動をすることをご提案しています。夕食をご自宅で食べるという方は多いですし、寝る前のカロリー消費が促進されますからね。漠然と「運動してください」というよりも、ある程度時間を指定してご提案したほうが、患者さまにとっても分かりやすいと考えています。また、糖尿病網膜症などの合併症や、動脈硬化が進むことで心臓病などのリスクが高まることもお伝えし、治療のモチベーション維持をサポートしています。
患者さまには、治療のモチベーションを維持していただくためにリスクをしっかりお伝えするようにしています。「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が蓄積すると動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすので、症状がなくてもお薬をやめちゃいけませんよ」という点は、特にしっかりとお伝えするようにしています。また、定期的に動脈硬化の評価をして「現在の治療に意味があると知っていただくこと」も大事だと考えています。家族がいる方には、「ご家族のために、症状がなくても治療を続けましょうね」ということもお話ししています。
チーム医療により、一人ひとりに合わせた無理のない治療の提供を目指す
またそのためには、患者さまのご家族によるサポートも、時には必要になってくるかと思います。ご家族で食事をされる場合が多いと思いますので、食事の内容を工夫していただいたり、それが難しい場合は量を減らしていただいたりと、より患者さまに合わせた治療を進められるよう、ご家族さまへのご説明にも力を入れていきたいと思っています。
また、糖尿病の新たなお薬や指導法は、年々増えています。さまざまな選択肢がある中で、一人ひとりの患者さまに適応する治療法をどう活用していくかという点も、課題だと考えています。
治療は、「無理なく」行うことを重要視しています。患者さま一人ひとりに合わせた無理のない運動や食生活により、健康な方と同じような生活を今後も一緒に送っていければと思っています。