山口 敏紀先生(日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医)にインタビュー
検査から治療まで一貫して携わることのできる開業医にやりがいを感じる
医学部を卒業し、臨床研修では内科のさまざまな診療科目を回りながら、内科疾患全般について広く学びました。処置もおこなえる診療科目が自分には向いているのではないかと考えていたところ、臨床研修で内視鏡に触れ、興味を抱いたのです。内視鏡を操ることの面白さに惹かれて、消化器内科の道に進もうと決めました。
その後、出向した病院では消化器疾患に加え、呼吸器、循環器、神経内科など内科疾患全般を診る必要があったので、消化器疾患以外も幅広く経験を積むことができたように思います。現在は、開業医として内科疾患全般を診るようになりましたので、当時の経験が活かされていると感じますね。
当クリニックを開業する直前に勤務していた病院の消化器内科は、消化管を専門に診ているところでしたので、そこでは内視鏡検査や治療を中心に診療をおこなっていました。食道がん、胃がん、大腸がんの内視鏡治療などにも従事していました。
勤務医時代は、消化器と内視鏡だけ担当することの方が多かったのですが、今は内科全般を診ることができます。病気になる前の予防の段階から関わり、検査をおこなって、万が一病気が見つかった際には治療までおこないます。一人の患者さまを一貫して診ることができるというところに、やりがいを感じています。患者さまに対する責任も、より大きなものになりました。
現在、クリニックでは内視鏡のほか超音波検査にも力を入れています。肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などは超音波検査で確認することが多いかと思いますが、胃や大腸も超音波画像診断装置を使って確認することがあります。内視鏡検査をする前に、超音波検査である程度の診断につなげることもできるのです。
胃・大腸内視鏡検査はもちろん超音波検査も活用して診療をおこなう
ヘリコバクターピロリ菌感染症を発症しているかどうかは、胃内視鏡検査によって確認します。ヘリコバクターピロリ菌に感染していると慢性胃炎を発症しますので、内視鏡で胃の状態を確認すれば、見た目でわかるのです。
ヘリコバクターピロリ菌に感染していた場合は、薬による除菌治療をおこないます。除菌が完了したかどうかの検査は、治療してから1カ月以上の間隔を空けて尿素呼気試験をおこなうことになっているのですが、当クリニックでは2カ月経過してから確認するようにしています。検査までの期間が短いと、除菌が失敗していても成功しているかのような偽陰性の結果が出ることがあるからです。
大腸はひだのある臓器なので、ひだの裏側の病変も見落とさないように検査を進めています。観察しやすくするために大腸に二酸化炭素を送気するのですが、送気量が多すぎるとひだの裏が逆に見えにくくなるため、少し空気を抜いて観察します。二酸化炭素の量をうまく調節していく必要があるのです。
また、大腸ポリープは、腺腫であればがん化する恐れがあるため、切除することががんの予防にもつながります。早期がんが疑われる腺腫ではないか、内視鏡で切除できるポリープかどうかを見分けることが大事です。当クリニックでは、通常観察だけではなく、NBIという病変を強調して観察ができるシステムを用いて、注意深く確認しています。
当クリニックでは、超音波検査をおこない、何も異常が認められない場合には過敏性腸症候群と判断し、薬による治療を進めます。薬は、下痢型、便秘型といった症状に合わせて処方します。また、精神的な原因によるところが大きい場合は、抗不安薬などを処方することもあります。
過敏性腸症候群は若い方に多く見られる病気です。当クリニックには、中学3年生や高校3年生の受験生の方も多くご相談に来られます。15歳以下の患者さまには、薬の処方を心療内科と連携して進める場合もあります。別室受験をご提案し書類をご用意することもできますので、受験を間近に控えて下痢や便秘でお悩みの方もご相談いただければと思います。
内視鏡検査で病気の早期発見を目指し、地域の患者さまの健康維持に努める
胃内視鏡検査では、患者さまの症状、状態に合わせて経口内視鏡検査をご提案することもあります。経鼻内視鏡検査にも対応していますが、特に健診で精密検査をすすめられた方は、経口内視鏡でより詳しく検査をすることが好ましい場合もあり、その際は鎮静剤を使用し患者さまの負担を軽減します。また、嚥下のリズムに合わせてスコープを挿入することで、負担をできるだけ少なくするよう努めています。
大腸内視鏡検査は、まずスコープを奥まで挿入し抜く時に観察をおこないます。挿入する時には、患者さまの苦痛に配慮してできるだけ素早く奥まで入れて、抜く時には見落としのないようゆっくりと抜くようにしています。大腸がんは40代頃から増加し始めます。40代になったら一度検査を受けていただくとよいでしょう。
また、当クリニックに通院されている患者さまはご高齢の方も多いので、今後は、通院が困難になられた場合に訪問診療も対応していく必要があるのではないかと考えています。
当クリニックでは、病気の早期発見のため内視鏡検査に力を入れています。定期的に内視鏡検査を受けていただければ、万が一、検査でポリープやがんが見つかったとしても、内視鏡で切除ができる可能性が高くなります。
検査する時に気をつけているのは、できるだけ患者さまがつらくないように配慮することです。そのためにも丁寧な検査をおこなうように心がけています。早期に病気を発見するためにも、定期的な内視鏡検査を受けていただければ幸いです。