山口 博先生(日本神経学会認定 神経内科専門医)にインタビュー
隠れた病気を見逃さないよう、丁寧で詳細な診断に尽力する医師
認知症が疑われる場合は、まず診察と長谷川式認知スケールやミニメンタルステート検査といった認知機能検査を行います。その結果、認知機能の低下が見られる場合は、血液検査や提携している病院でのMRI検査をご案内します。認知症に似た症状を示す疾患には、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症といった治療可能な疾患がありますから、そうした病気を認知症だと誤診せず、見落とさないように気をつけていますね。
治療は薬物療法がメインですが、ご本人やご家族がどんなところに大変さを感じているのか伺いながら、丁寧に進めていきます。認知症と言っても、原因や進行度合いはそれぞれ異なりますから、患者さまだけでなく、ご家族にも寄り添いながらサポートさせていただきます。
手が震える、体の動きが遅くなる、歩行が小刻みになっている、転びやすくなったなどの症状がある場合はお早めに受診していただき、重症化する前に治療を始めるのがいいと思います。パーキンソン病も認知症と同じで、類似した症状があってもそれ以外の病気が隠れている可能性もありますので、MRIなどの画像診断を行って、パーキンソン病なのかどうかを診断します。現在は根本的な治療法がありませんが、お薬をうまく組み合わせることで症状をコントロールしていくことが可能ですので、患者さまの不安を取り除けるように、前向きにお話ししています。
例えば、一時的に頭痛が起こっても数日で和らぐ場合は、重篤な疾患である可能性は低くなるでしょう。ただし、日が経つにつれて悪くなったり、頭痛やめまいに加えてほかの症状が出たりする場合は、重篤な疾患が隠れている可能性が高くなると思います。また、何時何分から痛くなったとはっきり覚えているような突発型の頭痛はくも膜下出血や脳出血の可能性があるので注意が必要です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害については、当院では急性期の治療はできませんが、検査や治療が可能な医療機関へのご案内や、退院された後の再発予防のための薬剤調整は可能です。
原因がはっきりわからない頭痛やめまい、手足のしびれでお悩みの患者さまは少なくありません。医療の窓口として、患者さまのお話をよくお伺いしながら、少しでも不安が和らぐよう尽力いたします。
先代からのアットホームな雰囲気を大切に、勤務医時代の経験を生かして診療
また、実際診察をしていく中で得られたさまざまな所見から、脳神経のどこに問題が起きていて、どんな原因が考えられるのかという神経の仕組みを理論的に考えられるところにも魅力を感じましたね。
東京都多摩老人医療センター(現 東京都保険医療公社多摩北部医療センター神経内科)ではご年配の患者さまがたくさんいらっしゃり、パーキンソン病の方もよく診療しておりました。患者さまお一人おひとりにあわせてお薬を処方することは難しかったのですが、うまくいった時には患者さまの症状が軽減されるのでとてもやりがいを感じていました。さまざまな病院で経験を積んだので、いろいろなジャンルの疾患に対応できることが私の強みの一つだと思っています。
まだまだ父には及びませんが、これからも患者さまが気兼ねなく相談できるようにアットホームな雰囲気は大切にしていきたいです。また、「日本神経学会認定 神経内科専門医」として、患者さまが今まで気にされていなかった脳神経の疾患を拾い上げる役割を担っていければいいなと思っています。
患者さまの抱える問題や困りごとを解消するため、真摯に向き合い続ける
認知症の患者さまの中には、接し方や環境を変えることで症状が落ち着いてくる方もいらっしゃいますので、一般の方や看護師に向けて、講演や本の執筆を通して知識を広めるような活動をしていきたいですね。認知症の患者さまに合う接し方ができれば、ご本人もご家族も楽に過ごせるようになりますから。
そして、アルツハイマー型認知症の新薬についてはとても注目しています。その薬が実用化されることでアルツハイマー型認知症の進行を今ある薬よりも抑制できる可能性があり、患者さまへも新たな提案ができるので期待しています。
「診断がつかない」「どこに行ってもなかなか症状がよくならない」という方も、一度ご相談にお越しください。どのような形であれ、「患者さまの役に立つ」ことを意識して診療しています。対応や治療について、患者さまと相談しながら良い手はないかと考えていきますので、何かの脳神経疾患なのではないかと心配をしている患者さまはいつでもご相談いただければと思います。