岩﨑 信吾先生(日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医)にインタビュー
一人の患者さまに寄り添って長く診ることができるのが開業医の魅力
糖尿病内科の道を選んだのは、研修医の時のことです。薬の使い方次第で患者さまの症状が改善されるということを目の当たりにして、興味を覚えたのです。私は、生まれつき腕神経叢損傷があるため、手技が必要とされる外科系ではなく内科系に進もうと考えていました。糖尿病内科なら、自身の頭を使って勝負できるので、面白いと思ったのです。また、糖尿病内科の先生方は、カンファレンスでは厳しいながらもとてもよくご指導くださいました。環境にも恵まれ、糖尿病内科に進もうと思ったのです。
大学院では、1型糖尿病の患者さまに測定機器をつけていただき、一日の血糖の変動を検証する研究を行っていました。1型糖尿病は、まったくインスリンが出ないような方を治療しなければならないこともあるため、血糖の管理が複雑で難しいのです。
研究を行っていた時は、深夜までデータをまとめる日々が続き、とても大変ではありましたが勉強になりました。患者さまからもいろいろと学ばせていただくことが多く、今の診療にも活かされていると思います。大学病院ではいろいろと学ばせていただきましたが、私は研究よりも実際に患者さまを診ることの方が好きだったので、これまでの経験を地域の皆さまに還元するため開業することにしたのです。
開業してよかったと感じるのは、一人の患者さまを継続して診ることができる点です。大学病院では異動がありますから、同じ患者さまを継続して診られないのです。今は訪問診療で看取りまで行うことができますので、開業してよかったと感じています。
また、訪問診療では、患者さまのご自宅に伺うと、クリニックで診療しているだけではわからない患者さまの生活も見ることができます。患者さまの生活背景も含めて診ることができるのは、訪問診療のよいところだと思いますし、これからも続けていきたいと思っています。
1型糖尿病は血糖値をリアルタイムでモニターしコントロールを目指す
1型糖尿病は、注射でインスリンを補う治療が必要ですが、中にはインスリン療法によって低血糖を起こす方もいらっしゃるため、グルコースモニタシステムを使って、血糖値をリアルタイムで測定していただくようにお願いしています。また、インスリン療法に加え、SGLT2阻害剤も治療に使用します。グルコースモニタシステムを活用して、できるだけ血糖値の変動が少ない治療を目指しています。大切なのは、食前のインスリン注射を忘れないことと、低血糖の恐れがある時は補食して低血糖発作を起こすのを避けることです。体調が急変した時には電話でも対応しています。
私が大学院で行っていた研究は、機器によって血糖値をモニターするというものなのですが、当時に比べると機器は随分と進化しましたね。当時は、すぐに確認することができなかったのですが、今はリアルタイムで血糖値が把握できるので、血糖コントロールがしやすくなりました。
2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法を行います。太っている方の場合は、生活習慣の改善で標準体型になれば薬物療法をやめられることもあります。ただし、お薬をやめる場合には、どれだけご自身でインスリンを分泌できているかを確認することが大切です。
管理栄養士による食事指導では、手作りの冊子をお渡ししてできるだけわかりやすく説明をするようにしています。患者さまのできる範囲の指導を、医学用語を使わずにわかりやすく行うことを大切にしています。
脂質異常症は自覚症状がほとんどない病気のため、お薬を服用し続けるモチベーションを維持することが難しい病気です。脂質異常症が進むと動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクが高くなるという説明はするのですが、親族の方に、脳梗塞や心筋梗塞を起こした方がいないと、そのリスクに対してあまりピンと来ないという方が多いのです。そのため、頸動脈エコー検査を行い、動脈硬化の状態を実際にお見せして、治療にご納得いただくようにしています。
訪問診療でも糖尿病患者さまをサポートし健康寿命を延ばすサポートを
糖尿病の方は、さまざまな合併症を起こします。糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害のような三大合併症のほか、認知症や感染症も起こしやすくなりますので、血糖値のコントロールだけではなく、全身の状態を注意深く管理していく必要があります。「日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医」として、地域の糖尿病患者さまの健康寿命を延ばすお手伝いをしていきたいと考えています。
訪問診療では、家族の方や、地域の訪問看護や介護サービスの方々とも日頃からコミュニケーションを取っておくことが大事だと思います。お互いにどういう意図で行っているのか、何を求めているのかを理解し合えるように意思の疎通をきっちりとしておかないといけませんね。
糖尿病は、進行するとさまざまな合併症を起こす病気です。治療を始めたものの途中で治療をやめてしまう方も中にはいらっしゃるのですが、治療を中断すると病気が進行して合併症を起こす恐れが高くなります。私も、日頃から、いかに患者さまに治療を中断することなく続けていただくかということを考えています。治療中に何か不安なことや心配なことがあれば、何でもご相談ください。「日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医」として、サポートしてまいります。
(※)対象の方は公費負担で受けていただけます。