長倉 俊樹先生(日本循環器学会認定 循環器専門医)にインタビュー
人を助けることができる仕事に就きたいという思いから医師の道を選ぶ
医師以外の職業でも、何らかの形で人を救うことはできるかもしれません。しかし、医師の場合は、直接的に病気を改善するところに介入することができます。親のすすめと、治療するというところに興味を覚えて、医師という職業を選んだのです。人を助けたいという思いが、医師になるという道に結び付いていったように思います。
循環器内科は、「患者様の症状の原因にはこの病気があるのではないか」と推測して検査を行い、「こういった検査結果が出ているからこの病気だと診断できる」というふうにロジカルな考えが必要な診療科目ではないかと考えたのです。理屈で突き詰めて考えていけば納得できる診断結果に辿り着くというところに、興味を覚えました。
また、外科的な処置にも興味があり、カテーテル治療に携われるというところも魅力に感じて、循環器内科に進もうと思いました。
開業前に私が勤務してきた病院は、循環器内科に特化した医療機関ではありません。あくまでも、内科の病気のひとつが循環器疾患であるという位置づけでした。循環器疾患とほかの病気を切り離して考えることはしないのです。初診の方の場合、診察してみないと何の病気かわかりません。また、生活習慣病の先に循環器疾患が起こってくる可能性があります。こういった診療のスタンスは、内科疾患全般を開業医として診ていく上で今も活きていると思います。
内科という診療科目では、何かひとつの病気だけに特化して診るのではなく、内科疾患全般を理解しておく必要があります。また、その方を総合的に診ていくことも大切です。勤務医時代から今に至るまで、その考えは変わっていません。今もそういったスタンスで診療にあたっています。
狭心症や心不全、心房細動などを予防するため生活指導にも力を入れる
循環器疾患はどの疾患も、心電図検査やレントゲン、超音波検査、血液検査などによって診断を行います。狭心症と診断された場合の治療やフォローも大切ですが、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症といった動脈硬化を進行させやすい生活習慣病をお持ちの方に対しては、狭心症を予防するためにもまずは生活習慣病をコントロールしていくように指導していくことが重要だと考えています。
血液を送り出す能力が低下することで、倦怠感、尿が出にくい、動悸などの症状が起こり、血液のうっ滞によって息苦しさやむくみなどの症状が現れます。ご年配の方は、これらの症状が現れても、「年齢のせいではないか」と考え、見過ごしてしまいがちですが、心臓の異常が原因で起こっている恐れがあります。これらの症状がありましたら、気兼ねなくご相談いただければと思っています。
心不全の治療やフォローを行っていくためには、心電図検査や血液検査だけではなく、心臓超音波検査で心臓の状態をきちんと確認していくことが大切だと考えています。
心房細動は不整脈のひとつで、心房と呼ばれる部屋が小刻みに震え、うまく拍動しなくなる病気です。動悸、息切れ、胸が苦しい、疲れやすいといった症状が現れますが、自覚症状が現れない方もいらっしゃいます。心房細動は、命に直接関わる病気ではありませんが、心拍数が高い状態が長く続くことで心臓の機能が低下し、心原性脳梗塞や心不全を引き起こすリスクが高くなります。心電図検査、心臓超音波検査などにより心房細動と診断された場合には、ガイドラインに沿って薬物療法、抗凝固療法などを行うほか、カテーテルアブレーション治療が必要な方には対応可能な医療機関をご紹介しています。
生活習慣病は生活習慣の見直しをすることが大切ですが、働いている方に生活を変えていただくことは難しいため、無理な生活指導を行うのではなく今の生活にプラスしてできることをご提案するようにしています。
今後注力したいのは心不全を合併するリスクのある睡眠時無呼吸症候群の治療
また、睡眠時無呼吸症候群は心不全を合併することが多いため、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査と治療にも力を入れていきたいと考えています。無呼吸の状態は交感神経を活性化させるため、血圧を上げるトリガーとなってしまうのです。そのため、睡眠時無呼吸症候群を拾い出して、治療につなげていきたいと思っています。
睡眠時無呼吸症候群は、肥満によって気道の閉塞が起きるだけではなく、痩せている方でも骨格や扁桃腺の大きさ、呼吸を調整する脳の呼吸中枢などが原因で発症することがあります。いびきがひどいとご家族に指摘された方、日中の眠気がひどい方は、ご相談いただきたいと思います。
重篤な循環器疾患を引き起こさないためにも、生活習慣病の初期の段階から、治療を行っていくことが大切です。自覚症状はなくとも、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、動脈硬化を進行させ、循環器疾患を引き起こす恐れがあるのです。ひとつひとつの疾患を切り離さず、内科疾患全般を総合的に診ていくことを心がけています。必要に応じて、ほかの医療機関をご紹介することも可能ですので、何かお身体で気になることがございましたら、何でもご相談いただければ幸いです。