佐保田 珠弥先生(日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医)にインタビュー
一人の患者さまをずっと診ることができるところに魅力を感じ泌尿器科の道へ
泌尿器科の道を選択したのは、幅広い疾患を診ることができ、最初から最後まで患者さまと関わることができるという点に魅力を感じたためです。例えば、ほかの診療科目だとがんが発見されたら、内科の先生から外科の先生にバトンタッチするということも多いかと思います。泌尿器科の場合は、がんの治療も科の中で行いますので、一人の患者さまをずっと診て差し上げることができるのです。
泌尿器科に女性の医師がまだ少なかったというのも、泌尿器科を選択した理由のひとつでした。医師全体で見ると、女性医師の割合は増えてきていましたが、泌尿器科はまだ女性の医師が足りない分野だったのです。
2013年からは、神奈川リハビリテーション病院に常勤医師として勤務しました。一般的な病院では、がんや前立腺肥大症、尿路結石などの診療が中心になることが多いのですが、ここでは、泌尿器科の中でも珍しい疾患である神経因性膀胱を中心に診療していました。神経因性膀胱とは、脊髄疾患や脳疾患など神経性の損傷がきっかけで、排尿障害が起きる疾患です。
2014年から勤務した茅ヶ崎市立病院では、藤沢市民病院のように一般的な泌尿器科疾患を幅広く診ていました。
以前から、クリニックでは「女性の医師に診てもらいたい」というご要望を女性の患者さまからいただいていたそうで、お声をかけてくださったのです。女性の患者さまにも受診しやすい泌尿器科として体制を整えていきたいとのことで、当クリニックで勤務させていただくようになりました。
尿もれの診療は骨盤底筋体操や生活習慣の改善などのアドバイスに力を入れる
女性の医師がいるというのは、入り口にすぎないかもしれませんが、女性の患者さまの受診のしやすさにはつながっているのではないでしょうか。女性の医師を探して、ご来院してくださる患者さまもいらっしゃいます。
やはり、何よりも受診していただくことが大切だと思っています。お悩みがあっても、「どこに相談してよいかわからない」「恥ずかしいから受診しづらい」と受診されないのはもったいないことだと思いますので、まずは気兼ねなく受診していただきたいですね。
骨盤底筋体操の方法については、パンフレットも活用しながら、診療時間の中で、できるだけ丁寧に説明をするように心がけています。「締めている筋肉を意識しながらトレーニングしましょう」と、体操を行う時のコツについてお伝えするようにしています。
コロナ禍以降、運動不足の方が増えていると感じます。運動不足も下腹部の不快感や、骨盤底筋の緩みにつながります。問診で、ふだんの生活についてお話を伺っていると、全然動いていらっしゃらないと感じられる方がいます。ご自身が運動不足であることに気付いていない方も中にはいらっしゃるのです。日常生活についてお話を伺って、生活改善が必要だと感じられる方には、気になるところをご指摘します。ご自身でも気付いて、管理していただけるようにしています。
限られた時間の中ではありますが、時間の許す限り患者さまとお話しする時間を取って、意識していただけるように心がけています。
尿に関するお悩みについて気兼ねなく女性が受診しやすいクリニックを目指す
そういった患者さまは、最初にかかられていたクリニックで何らかのお薬が処方されていて、既にお薬の服用を始められていることが多いのです。お薬手帳で服用されているお薬を把握することは可能なのですが、持参するのを忘れてしまう方もいらっしゃいますし、その辺りの情報が共有できるようになるといいですね。
尿もれや子宮脱のように、女性の泌尿器科疾患と婦人科疾患の境界線上にまたがるような疾患は多いのです。ところが、診療科目が違うとなると、連携を取りながら治療を進めていくのはなかなか難しいのです。その辺りの連携が、今後、もっと進んでいくとよいと考えています。
今後も女性が通いやすいクリニックを目指して体制を整えていきたいと思います。女性の患者さまが多いという点でも、当クリニックは受診のハードルが低いかと思います。泌尿器に関して何か困ったことがあれば、まずは気兼ねなくご相談いただければと思います。