
塚越 卓先生(日本形成外科学会認定 形成外科専門医)にインタビュー
がん手術後の再建手術に力を入れ、組織工学の研究の道に進む
今も一般の方の中には、形成外科がどのような診療科目かよくわからないという方も多いかもしれませんね。整形外科と混同されている方も多いかもしれません。形成外科は、けがや傷跡、生まれつきの身体の変形や欠損などを見た目にも配慮して改善することを目的とした診療科目です。
外科系に進むか内科系に進むか考えた時、自分は外科系に進みたいと考えたのですが、せっかくならまだあまり馴染みのない形成外科に挑戦してみたいと考えました。医学部6年目の夏に、いくつか形成外科の医局を見学させていただいた上で、昭和大学に進みたいと考え、自ら手紙を出して入局を希望したのです。
私は、「自家組織に勝る再建材料はない」と考えて再建手術を行ってきました。つまり、欠損部以外の組織は自身の身体から移植して行うのがよいと考えていたわけですが、それも限界があります。そこで、私の研究テーマは自ずとTissue Engineering(組織工学)になっていきました。
オホーツク海病院で、組織工学に関して研究をする環境を整えてくれることとなり、オホーツク海病院に勤務することとなったのです。そこでは代用血管、神経導管、人工骨などの研究を行いました。
浦和での開業を考えたのは、2011年3月の東日本大震災がきっかけでした。北海道へは単身赴任で、週末に浦和の自宅に戻って来ていたのですが、関東に戻る飛行機に乗っていた時にちょうど東日本大震災に遭遇したのです。羽田空港から自宅まで戻るのにも難儀し、そろそろ自宅の近くで開業しようかと考え始めるきっかけになりました。北海道で在宅医療にも関わり始め、地域医療にやりがいを感じていたので、大学に戻ることは考えていませんでした。関東に戻るのであれば、自宅の近くで開業したいと考えて、浦和で開業の準備を進めたのです。
クリニックでの粉瘤や脂肪腫切除手術のほか訪問診療で褥瘡の治療も行う
粉瘤とは、皮脂や角質が皮膚の下の嚢腫という袋に詰まってできた腫瘍の総称です。脂肪腫とは、脂肪の塊のことです。粉瘤を脂肪腫と判断されて受診される方も多いのですが、そのほとんどが粉瘤です。粉瘤と脂肪腫は、触診で鑑別します。
ほくろのほとんどは母斑細胞(ほくろ細胞)の集まりです。切除した後は、傷跡をできるだけ目立たなくするために、形成外科的な縫合法(真皮縫合)を行います。悪性が疑われるほくろは、切除して病理検査に提出しています。
(※)は自由診療です。料金は料金表をご確認ください。
北海道でも、在宅医療に携わっていたのですが、訪問診療は病院やクリニックでの診療とは違うやりがいを感じますね。形成外科では、ほとんどの場合、手術が終わってしまったら、そこで患者さまとのお付き合いも終わりです。あまり、長く患者さまと関わることがないのが形成外科の医師なのです。一方で、在宅医療では長く患者さまと関わることになりますし、ご家族の方とのお付き合いも生じます。ふだんの形成外科の診療ではできない経験ができていると感じます。
切除するのであれば小さなうちに切除した方が傷跡も小さくてすむので、迷ったらまずはご相談いただきたいですね。悪性ではないため、切除を無理強いすることはありません。気兼ねなくご相談いただきたいと思います。
手術をしっかりと行うことが何よりも大切、一期一会の精神で手術に臨む
とはいえ、今後、何か新しい知識が出てきたらすぐに対応できるように、随時、アンテナを張り、情報を取り入れて患者さまに還元していきたいと思います。コロナ禍以降は、オンラインでも情報を入手しやすくなってきていますので、そういったところも活用していきたいですね。
最近は、コロナ禍でなかなか難しいのですが、以前は、城巡りも趣味のひとつで、坐禅会にも参加していました。通勤時は、健康のためにも30分ほどの道のりを歩いていますが、リフレッシュできるひとときでもありますね。
例えば、とある治療法が科学的に正しかったとしても、その治療方法がその患者さまに合うかどうかはわかりません。体質は個人によって異なりますので、合う治療方法も人それぞれだからです。患者さまの体質に合う治療方法をご提案していきたいと思います。
「日本形成外科学会認定 形成外科専門医」は、手術をしっかりとできることが何よりも大切だと考えています。これまでに手術の経験を各地の病院で積んでまいりましたし、その経験を今後も地域の皆さま方に、還元していけたらと思っています。ひとつひとつの手術を大切に、「一期一会」の気持ちで、行っていきます。