山下 弘之先生(日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医)にインタビュー
検査から治療、手術、術後のフォローまで一貫しておこなえる環境を用意
副鼻腔炎の疑いがあれば、CTや内視鏡などといった精密検査をおこない、手術が必要なのか、それとも内服治療の段階なのかを見極めるようにしています。手術の必要性は、鼻茸と呼ばれるポリープの有無により判断いたします。
慢性副鼻腔炎の手術は、グループ院の方でもよく実施しているため、主にそちらにご紹介しています。グループ院であれば、最初のステップまで戻ることなく手術からスムーズに対応してもらえます。術後のフォローも患者さまのご都合に合わせてグループ院の中からお選びいただけるのも当院の強みです。
内服薬や点鼻薬などの対症療法から、舌下免疫療法や手術療法といった根本的な治療法まで幅広いご提案ができます。お薬では、症状が緩和しない重症な患者さまであっても、当院で手術をおこなうことが可能です。
アレルギー性鼻炎は、薬の適性と重症度レベルに応じた治療で快方に向かうため、耳鼻咽喉科の医師の診断が重要だと言えますね。
このように、診療の際は、そのほかにかかっている病気や基礎疾患がないかなど、丁寧に問診をおこなうようにしています。嚥下障害では、何よりも誤飲性肺炎を起こさないことが重要となるため、ご状態によっては呼吸器内科と連携し治療を進めるようにしています。
がん医療で診断力を養った勤務医時代。開業後も早期発見で尽力
がんに罹患する可能性は誰しもあります。もし検査で自分が見落としてしまったら、その方の人生を左右させてしまうので、絶対に見逃さないように初心を忘れないよう集中して検査をおこなっていました。それは開業後でも変わっていません。特にがん検査は一年に一回といった頻度で受診される方が多いので、見逃しがないようにしなければなりません。そのため、診察でのどをパッと診ておわらせるのではなく、現在でも内視鏡検査やCT検査などをおこなうようにして、化学的な証拠を集めて治療につなげるという診療スタイルを大事にしています。
その後、グループ院の現会長である坂口先生との出会いがありました。坂口先生は、九州がんセンターの先輩でもあるので、「患者さまのニーズに応える」という自分が描きつづけてきた診療スタイルで一緒に耳鼻咽喉科を作っていけると思い、開業することにしました。開業するにあたっては、内視鏡やCTなどの設備をそろえ、早期発見ができるよう体制を整えました。
町のクリニックの院長になってみて、大学病院や九州がんセンターで勤務医をしていたときに診ていた病気とは異なり、診断から快方に向かうまでのスパンが早い疾患を診る機会が増えたように感じています。クリニックでは、お一人おひとりの患者さまにじっくり向き合えるので、より見逃しがないように注意深く診たり、納得いただけるように詳しく説明したりと、自由に工夫できるのも今の仕事の魅力ですね。
クリニックとして目指すのは、高齢化に向けQOLを維持させる医療の提供
耳鼻咽喉科の課題としては、社会は高齢化に進んでいるので、加齢に伴う、難聴、嗅覚障害、味覚障害の診療ニーズはこれから高まっていくと思います。認知症の新しい薬はどんどん出てきていますが、私も耳鼻咽喉科の医師として、耳・鼻・のどの感覚器を治療することで、認知症の進行をはじめ、高齢化に伴うあらゆる疾患の食い止める役割を担っていきたいと考えています。今後高齢者が増えてくるでしょうから、高齢者に多い疾患へのあらゆる治療法が必要になってくるでしょうね。
アレルギー性鼻炎は若い方に多く、罹患率の高い疾患のひとつです。働き盛りの方々のQOLを上げるためにも、根治的な治療が期待できる手術や舌下免疫療法といった治療を引き続き提案していきたいですね。
また、副鼻腔炎においては幅広い年代の方に起こりうる病です。この病気が原因で、髄膜炎やがんの発症の可能性もあるので、今後も力を入れて早期発見治療に尽力していくつもりです。
そして嚥下障害については、ご年配の方がかかりやすい疾患です。社会の高齢化に伴い、増加傾向にある診療ニーズに耳鼻咽喉科としてもお役に立ちたいと思っています。
クリニックのある天神ではお忙しい方が多い地域なので、今後、「ファースト医療、コンビニ医療」と言えるような診療スタイルで、速やかに利便性の良い医療を提供したいと考えています。2交代制などを取り入れて、遅い時間でも受診できるようなクリニックに発展できたらと思っています。