金 憲周先生(日本整形外科学会認定 整形外科専門医)にインタビュー
勤務医時代は各地の病院で人工関節の手術や交通外傷の手術などの経験を積む
大学卒業後は、順天堂大学医学部附属順天堂医院の整形外科に入局したのちに、浦安市川市民病院(現・東京ベイ・浦安市川医療センター)、山梨県立中央病院、済生会中央病院、最成病院、同愛会病院など各地の病院に、順天堂大学の医局から派遣されて勤務しました。
済生会中央病院では、麻酔に関する研鑽を積ませていただきました。整形外科の医師として、麻酔についての知識も身に付ける必要があるのです。
他の病院でもそうでしたが、5年間勤務した同愛会病院でも多くの手術を経験しました。これまで、一通りの手術は経験してきたと思います。大腿部頸部骨折をはじめとする骨折の手術、膝や股関節の人工関節置換術、肩や肘の手術などもおこなっていました。
開業したのは、2008年のことです。その頃から、新しくマンションなども建てられましたし、オフィス街のクリニックとは違って、ご家族で通ってくださる患者さまが多いですね。おじいさま、おばあさま、お父さま、お母さま、お子さまと三世代で受診してくださる患者さまもいらっしゃいます。開業してみて、お子さまの多い地域だと思いました。クリニックには、小学校入学前から、中学生、高校生までのお子さまが多くご来院されますね。
けがの再発予防、けがをしにくい身体作りを大切にした診療で患者さまをサポート
大切なのは「いかに再発させないようにするか」と考えていますので、けがの再発を予防するために、理学療法士による運動療法や生活指導をおこなっています。また開業当初に比べて、リハビリテーションに重要性を感じるようになったので、現在、リハビリテーションには力を入れています。サッカーや野球などのスポーツを得意としている理学療法士も在籍して、スポーツ外傷にも対応しています。
中にはうまく身体を使いこなせておらず、使っていない部分や硬い部分、筋力が落ちている部分などがあり、身体のバランスが悪くなっていることがけがの一因になっているお子さまもいます。そういったお子さまには、けがや疾患の原因となるところにアプローチしたリハビリテーションをおこなうようにしています。
骨粗しょう症は、初期の段階では自覚症状はほとんどありませんが、骨がもろくなることでちょっとした転倒でも骨折しやすくなります。ご年配の方が骨折をしてしまうと、寝たきりになってしまう恐れがあります。骨粗しょう症で家の中に引きこもり行動範囲が狭くなることでうつ病も発症しやすくなってしまいます。骨粗しょう症の治療をおこなうことで、けがをしにくい身体を作ることが、さまざまな面で健康を維持することへとつながっていくと思います。
痛みの症状が現れていなくても、既に脊椎の圧迫骨折が起きていて、椎体が押しつぶされて変形が生じている場合があります。脊椎椎体骨折による背中や腰の痛みや手足のしびれでご来院される方もいらっしゃいますね。
骨粗しょう症は、X線画像からある程度判断がつきます。腰痛、頸部痛、上肢・下肢のしびれが原因でご来院され、骨粗しょう症が発見される方は多いので、初診の方のX線画像は注意深く見るようにしています。骨粗しょう症は、放置すると脊柱管狭窄症や、脊椎、手首、大腿骨頸部などの骨折につながりやすくなります。「今後この方はどうなるだろう」という将来的な経過を考えるところから、アプローチを始めるようにしています。
予防医学的なアプローチを大切に、早期発見に力を入れる医師
お子さまのけがにしても、若い年代の方の頸椎や腰の痛みにしても、ご年配の方の骨粗しょう症をはじめとする疾患やけがにしても、整形外科領域では予防医学的なアプローチをおこなっていくことも重要です。すべての世代の方に対して、疼痛の管理だけではなく、リハビリテーションも用いて予防医学的な側面に踏み込んだ治療をおこなっています。痛み止めの薬で症状を緩和するよりも、運動器リハビリテーションによって、病気やけがを起こさないようにすることが大切です。お子さまの場合はけがをしない身体作りをしていくことが重要です。
ご年配の方の場合、老化によって生じる疾患を予防しつつ、リハビリテーションによってADL(日常生活動作)を改善、維持することは、健康寿命を延ばすことにもつながります。
このまま保存的療法で経過を見続けてよいのか、手術をおこなう必要があるのかをすみやかに判断して、患者さまを振り分けることは開業医にとって大事な仕事だと考えています。判断するための目を持っていることが大切ですね。
中でも、早期発見ということで力を入れているのは、骨粗しょう症ですね。骨や筋肉の状態が改善され、活発に動くことができると、行動範囲も広くなります。骨粗しょう症を早期発見し、治療を継続して骨折を予防することは、肉体的な健康だけではなく精神的な健康を取り戻すことにもつながります。骨粗しょう症の治療を続けて、元気に過ごしていらっしゃるご年配の患者さまを見ると、「力を入れて治療してきてよかった」と、嬉しく感じますね。
病気の早期発見のためにも、整形外科領域でご心配なことがあれば、気兼ねなく何でもご相談いただければと思います。