突発性難聴とは
突発性難聴は、「突然に発生する原因不明の難聴」です。難聴発生の際に、耳鳴り・めまい・嘔吐などの症状がでることもあります。
症状改善には「早期の治療」が重要です。難聴を自覚したらできるだけ早く医療機関を受診するようにしてください。
突発性難聴は、前触れもなく突然に症状があらわれます。昔から知られている疾患ですが、正確な発症メカニズムはわかっていません。
治療開始が早いほど治癒率が高くなるため、「片耳の聞こえ方がおかしい」と感じたら、すぐに耳鼻いんこう科を受診することをお勧めします。発症から2週間以上が経過すると、治療効果を得るのが難しくなるとされています。
突発性難聴の症状
主な症状は「突然の難聴」です。このほかにも耳鳴りやめまい、吐き気を伴うこともあります。また、こうした難聴になる原因は不明、あるいは不確実であるものが「突発性難聴」であるとされます。
チェックリスト
以下の項目に1つでも当てはまったら突発性難聴の可能性があります。できるだけ早く受診しましょう。
□突然耳が聞こえづらくなった
□突然耳鳴りが始まった
□急にめまいや吐き気が出現した
□耳が聞こえにくくなったとき、これといって原因が思いつかない
※このチェックシートは、医師の診察に代わるものではありません。セルフチェックの結果が問題なさそうな場合でも、少しでも不安を感じたり気になることがあれば、必ず医療機関にご相談ください。
難聴による聞こえにくさの度合いは、4つに分類されています。その分類は何デシベルで、どれぐらいの会話や音が聞こえるかも含めて、下記のようになっています。
難聴の重症度
軽度難聴
: 25 dB 以上 40dB 未満
小さな声や、人混み、騒音のなかでの会話で声を拾いにくい状態。
中等度難聴
: 40 dB 以上 70dB 未満
普通の会話の声も聞き取りにくくなる。補聴器をすることで不都合なく聞き取れることが多い。
高度難聴
: 70 dB 以上 90dB 未満
大きな声を出すか、補聴器をつけないと会話ができない状態。声が聞こえたとしても、内容を聞き取るのは困難。
重度難聴
: 90 dB 以上
補聴器をつけても声が聞き取れないことが多い。人工的な内耳をつけるか検討される。
突発性難聴は通常片側で発症します。難聴の程度は人それぞれで、軽症のこともあれば重度の難聴を認める場合があります。片方の耳だけとはいえ日常的な会話が難しくなるといえます。
突発性難聴は基本的にはメニエール病のように繰り返すことがありません。聞こえにくさやめまいや吐き気といった症状を繰り返す場合は、ほかの病気を疑う必要があります。
突発性難聴の診療科目・検査方法
突発性難聴は48時間以内に治療を開始すると治癒する可能性が高まります。
突然耳の聞こえが悪くなったと思ったら放置せず早めに耳鼻いんこう科で検査してください。
2週間を過ぎると治らなくなる確率が上昇します。1ヶ月以上経過すると、改善する可能性は極めて低下します。
問診を受ける際に用意しておくべき情報
- いつから聞こえづらくなったか
- どういった状況で聞こえづらさを感じたか
- 以前と比較してどれくらい聞こえづらくなったか
- 日頃から耳に負担をかけたり、ストレスを感じているか
- 風邪などの感染症を最後に発症したのはいつか
これらの情報を医師に話すことで、病気の判断がしやすくなります。
診断基準
突発性難聴の診断基準としては先に説明した定義を元に、以下の3つの項目に当てはまるかどうかで判断します。
1.外耳道に異常がない
外耳道(がいじどう)に炎症や詰まっているものがあれば、それは伝音性難聴ということになり、突発性難聴とは区別されます。
2.鼓膜および中耳に異常がみられない
鼓膜や中耳に異常がある場合は、伝音性難聴といえます。
3.聴力検査で左右の聞こえを検査し、片方の耳の感音難聴が特定できる
片方のみというのが一般的です。両耳の場合はほかの病気の可能性が高まります。
聴力検査(オージオメータ)
以前と比較して聴力が悪化している場合は、突発性難聴の可能性があります。
MRI・CT
耳のCTを撮ることで、伝音性難聴になっている原因を探ります。骨の異常や腫瘍が見つかることもあります。
そのほかには、MRIでメニエール病を鑑別したり、めまいの精査のために平衡機能検査を行う場合もあります。
突発性難聴の原因
まだ、はっきりとした原因は解明されていません。音を感じて、脳に伝えている有毛細胞が、何らかの要因により傷がつき、壊れてしまうことで発症すると考えられています。有毛細胞への栄養血管の障害や、ウイルス感染による説などが考えられています。
このほかにも、過度のストレスや過労、睡眠不足などが原因で発症しやすいことがわかっています。また、糖尿病が影響しているという報告もあります。
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突発性難聴の予防・治療方法・治療期間
突発性難聴が発症したら、なるべく早く病院で検査を受け、安静にして耳を休めるように心がけることがいいとされていました。最近では早期から耳に刺激を入れた方がよいという論文もあり、明確な治療方法は確立されていません。
めまいや吐き気がひどい場合、自宅で休んでも騒音が気になる場合は入院することも視野に考えます。難聴が高度の場合にも入院して高用量のステロイド薬を投与することもあります。
薬物療法
1.ステロイド
治療には、内耳の炎症を抑えるためにステロイドを処方します。ステロイドは副腎から作られる副腎皮質ホルモンの1つで、身体の免疫作用を抑える働きがあります。そのため内耳の炎症を抑える効果が期待できます。
その反面、ステロイドは免疫力を抑え過ぎて免疫の低下を招いて感染症にかかりやすくなり、血糖値の増加という副作用があります。糖尿病などに罹患している患者は主治医と相談して治療する必要があります。
2.血流改善薬
突発性難聴の原因とされる循環障害を治療するため、血管を拡げる血管拡張薬が使われます。アデノシン三リン酸二ナトリウムなどの薬があります。
3.ビタミンB群
2の血流改善薬と一緒に処方されることが一般的です。ビタミンでも主にビタミンB群が併用されます。
4.めまい改善薬
めまいが併発している場合には、ジフェニドール塩酸塩、ベタヒスチンメシル酸塩、といった薬が処方されます。
めまいを抑え、血液循環の促進、脳の代謝を促します。
5.その他
薬物療法以外には、高気圧酸素療法や鼓室内ステロイド注入療法などがあげられます。
原因の改善
突発性難聴の原因と考えられている感染症や内耳循環障害は、ストレスをため込まない生活を心がけることが重要です。
感染症にかからないようにするために免疫力を高める運動や、バランスの取れた食事、質の高い睡眠を得るように努めます。
循環障害も、血流が滞るような脂質の高い食生活、喫煙、運動不足といった生活習慣が原因としてあげられます。
難聴にならないためには、ヘッドホンやイヤホンを使用し大音量で長時間音楽などを聞くことを避けることも重要です。
また、工事現場で働いている人などは、耳栓をしたりヘッドホンを着用し耳を守る工夫を取り入れましょう。ノイズキャンセリング機能のついたイヤホンをつけて、騒音を防ぐのも1つの方法です。
突発性難聴の治療経過(合併症・後遺症)
発症後1週間以内に適切な処置が受けられれば約30%の人は完治し、約30%の人にはなんらかの改善がみられるとされています。
治療せずに放置すると聴力は回復しにくくなっていきます。なるべく早く病院でみてもらい、薬による治療を受けることで聴力回復の可能性が上昇します。
突発性難聴になりやすい年齢や性別
幅広い年代で確認されていますが、徐々に発症年齢のピークが高齢化しており、現状では50から60歳代でピークを認めています。左右どちらかの耳におこりますが稀に両耳に発症します。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2009年に日本大学医学部を卒業。初期研修課程終了後、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科へ入局。東京医科歯科大学付属病院や土浦協同病院などの市中病院で研鑽を積み、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。
2016年7月より医療法人社団則由会AGAヘアクリニックを院長として開院すると同時に水島耳鼻咽喉科副院長に就任。
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