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のうこうそく脳梗塞

更新日:2022/08/10 公開日:2019/02/08 view数:16,659

脳梗塞とは?

脳梗塞(のうこうそく)は動脈の血管が硬くなる「動脈硬化」によって引きおこされる病気です。
血管が硬くなると内側は壊れやすくなり、おかゆのように柔らかいコレステロールの塊がこびりついている状態(粥腫:じゅくしゅ)になります。
動脈硬化によって脳の血管が詰まったり細くなったりすることで、十分な酸素や栄養が脳に行き届かなくなります。

脳梗塞の種類は3タイプ

脳梗塞には血管の太さや血栓の詰まり方によって、下記のような3タイプに分類されます。

1.ラクナ梗塞

高血圧症を主な原因として脳にある細い血管に動脈硬化がおこり、詰まってしまうのがラクナ梗塞です。脳の中心近くにできやすく、水たまりのように小さくくぼんでおり日本人に多いタイプの脳梗塞です。

2.アテローム血栓性脳梗塞

動脈硬化によって狭くなってしまった脳の太い血管が、血栓によって詰まってしまうのがアテローム血栓性脳梗塞です。糖尿病脂質異常症などの生活習慣病が主な原因で、食生活の欧米化(高カロリーや高コレステロール)によって近年増加傾向にある脳梗塞のタイプです。

3.心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)

心臓にできた血栓が脳に流れ、太い血管を塞いでしまうのが心原性脳塞栓症です。急性心筋梗塞や不整脈の一種であり、心臓が異常な動きをする心房細動(しんぼうさいどう)が原因です。突然血管が詰まってしまうため、いきなり症状があらわれます。
脳の太い血管を詰まらせるため、重い症状や後遺症が出てしまう可能性が高いタイプの脳梗塞です。

脳出血やくも膜下出血との違い

1.脳出血

脳梗塞は運動や言語を司る脳の領域に血液がいかなくなり、壊死することで障害が出る病気です。
一方、脳出血は脳の中にある細かい血管が破れて出血することで、脳が壊れて症状があらわれる病気です。脳梗塞と脳出血はいずれも脳の中でおこる病気です。

2.くも膜下出血

くも膜下出血は脳の表面にある血管に動脈瘤(こぶ)ができ、破れて表面に出血する病気です。
流れ出た血液は脳表面のくも膜下に溜まり、出血量に応じて脳が圧迫されていくため脳が壊されていきます。

脳卒中というカテゴリ

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は脳の血管に障害がおこる「脳卒中」というカテゴリに属し、血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血・くも膜下出血に分けられます。

脳梗塞は脳に障害を与え、聴覚や視覚、言語能力や運動神経にまで症状が出る可能性があります。
思うように行動できない、情報を処理できない状態になります。
原因は動脈が詰まったり固まったりする状態になることです。
生活習慣病や血圧の急な変化でおこります。

目次
  1. 脳梗塞の症状
  2. 脳梗塞の診療科目・検査方法
  3. 脳梗塞の原因
  4. 脳梗塞の予防・治療方法・治療期間
  5. 脳梗塞の治療経過(合併症・後遺症)
  6. 脳梗塞になりやすい年齢や性別

脳梗塞の症状

脳梗塞は発症した場所や大きさにより、下記のような初期症状や前兆があらわれます。

1.構音障害と失語症

筋肉を動かす脳神経がダメージを受けたことであらわれる症状が、構音障害(こうおんしょうがい)です。正しく発音できるはずの音が出せず、呂律(ろれつ)が回らなくなります。
一方、言語を司る言語中枢にダメージを受けることであらわれる症状が失語症です。話したいのに言葉が出ない「運動性失語」や、言葉自体が理解できなくなる「感覚性失語」があります。

2.片麻痺と片側顔面麻痺

立ち上がるときや歩き始めのふらつき、ふらふらしてまっすぐ歩けない、ものにつまずきやすいといった症状が見られるのが片麻痺(かたまひ、へんまひ)です。

一方、自分の意志とは関係なく片側の顔にけいれんや引きつりがおこり、口角が下がることで水を飲もうとすると口からこぼれ落ちる、といった症状が見られるのが片側顔面麻痺です。

3.一過性黒内障(いっかせいこくないしょう)と視野障害

動脈硬化によって目につながる血管が詰まってしまうと、一過性黒内障や視野障害がおこります。
ある日突然片側の視力が急激に低下し、数秒から数分に渡って膜がかかったように見えなくなる症状が一過性黒内障です。

視野の半分だけがかけてしまう、「半盲」という症状もあります。
視野が狭くなったり目の焦点があわなくなったりなどの視野に関する障害は、患者自身が自覚しづらく怪我などの恐れも出てくるため注意が必要です。

これらの前兆や初期症状は「一過性脳虚血発作(TIA)(いっかせいのうきょけつほっさ)」と呼ばれ、短くて数分、長くとも24時間以内に症状が消えてしまうことが特徴です。
症状が消えてしまうため軽く考えがちなものの、一過性脳虚血発作がおきてから48時間以内に脳梗塞をおこすことが多いため、すぐに救急車を呼びます。

脳梗塞で突然倒れるのはごく一部に過ぎないといわれ、多くはさまざまな症状を経て発症する病気です。
代表的な症状を覚えておき、いざというときにいち早く動けるようにしておきましょう。

・一過性脳虚血発作(TIA)のチェック方法

一過性脳虚血発作(TIA)には、FASTと呼ばれるチェック方法があります。
FASTはFace(顔)、Arm(腕)、Speech(言葉)、Time(時間)の頭文字を取った標語です。
顔の麻痺(F)や腕の麻痺・しびれ(A)、言葉の異常(S)といった3つの症状があらわれたら発症時刻(T)を確認して、すぐに救急車を呼びましょう。

脳梗塞の治療は時間との勝負となり、処置をいかに早く始めるかが後遺症や死亡のリスクを下げる要因になります。

かくれ脳梗塞

脳梗塞の中には、手足の麻痺や言語障害などの症状が出ないかくれ脳梗塞がある。
医学的には「無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)」と呼ばれ、別の症状でCTやMRI検査をしたときにたまたま発見されることがあります。

かくれ脳梗塞は無症状の場合が多く、症状が出たとしても短時間で回復してしまうため放置されやすいのです。
しかし、数年以内に大きな発作がおこるリスクが高いともいわれているので、普段の生活習慣を見直しながら脳梗塞の予防を心がけましょう。

脳梗塞の診療科目・検査方法

脳梗塞の前兆や自覚症状としてあらわれる体半分への麻痺やしびれ、呂律が回らなくなる構音障害が出たらすぐに病院を受診しましょう。脳神経内科脳神経外科が主な受診科目です。あるいは、救急車を呼び救急外来を受診してください。
症状は数分ほどで消失してしまい、つい放置しがちになるものの、繰り返しおこることがあるので後々重い後遺症などに悩まされないためにも、小さな変化にも敏感に対応することが必要です。

問診

最初におこなう問診では、下記の内容を伝えます。

・いつから違和感があるか(発症日時)

脳梗塞の治療は時間との勝負なため、いつから発症しているかは大切な情報となります。発症した最初の日時と症状がどの程度の時間続いていたかが、早期の治療開始へとつながります。

・どのような症状か

麻痺や構音障害があるか、症状によって脳のどの部分がダメージを受けているかの判断材料になります。
何をしているときにおきたか、同時におこったほかの症状はないかなども具体的に伝えます。

・既往歴(今まで患ったことのある病気)

脳梗塞に関わる不整脈や心筋梗塞、心不全などの既往歴がないかなども診断のポイントとなります。脳梗塞をおこしやすい病気もあり、以前にどのような治療をしていたか、飲酒・喫煙などの生活習慣についても伝える必要があります。

脳梗塞の検査方法

病院では最初に問診をおこなったあと、より正確に病名を特定するため、下記のようなさまざまな検査をおこないます。

1.CT検査

脳にX線を照射するレントゲンで、脳の断層写真を撮影します。短時間で細部まで血管を確認することができ、梗塞や出血の有無、脳出血やくも膜下出血と見分けることが可能です。

2.MRI検査

磁気と電波によって、脳の断層写真を撮影します。CTよりも詳しく、あらゆる角度から脳を診断することができます。
脳動脈や血液循環の検査もおこなえるため、CTでは判明しにくい発症してすぐの脳梗塞やかくれ脳梗塞の発見にも役立ちます。

3.血管撮影検査

カテーテルを通して血管内に造影剤を流し入れ、レントゲンを撮影する脳血管のより詳しい精密検査です。動脈硬化によって細くなってしまった血管の箇所や、動脈瘤(こぶ)を発見するのに役立ちます。

4.心電図検査

心電図検査は電気的な心臓の活動や動きを診るのに使用されます。
心臓に血栓ができる原因である不整脈があるかなどを判断することができます。
心臓にできた血栓が流れることで、脳の血管が詰まる心原性脳塞栓症の診断に役立ちます。

5.血液検査

血液検査では脳梗塞の危険因子となる、高脂血症糖尿病の有無を調べるためにおこないます。
血液全般の状態が把握でき、血液が固まりやすくなる異常や病気はないかを詳しく診断するのに役立ちます。

6.超音波検査(頚動脈エコー)

頚動脈に超音波をあて、反射したエコー画像をモニターで見ながら診断をしていきます。
素早く検査をはじめることができ、リアルタイムで頚動脈が狭くなっていないかが見られます。
映っている部分の性質もわかるため、動脈硬化の進行具合を判断するのにも役立ちます。

脳梗塞の原因

脳梗塞は主に動脈硬化を原因として発症します。
脳に酸素や栄養を供給している血管内の壁にコレステロール(プラーク)がこびりつき、血流を悪くしたり詰まらせたりすることで脳梗塞がおこります。

動脈硬化には加齢はもちろんのこと、肥満や喫煙・飲酒などの危険因子によっても状態が悪化します。
動脈硬化は脳梗塞以外にもさまざまな病気の原因となりえるため、普段の生活からこれらの危険因子を取り除き、健康的な生活を送るよう心がけましょう。

脳血管が詰まる3つの原因

脳血管が詰まってしまうタイプの脳梗塞の原因は、それぞれ発症のメカニズムにあります。下記の3種類に分類されています。

1.血栓性

動脈硬化が主な原因で、脳の血管が狭くなっていくことで血栓ができ、血管が詰まってしまう種類の脳梗塞です。
緩やかに症状が進行するといわれ、一過性虚血発作が見られる場合もあります。

2.塞栓性(そくせんしょう)

脳以外の場所にできた血栓が血流によって脳へ運ばれ、血管を塞いでしまう種類の脳梗塞です。
塞栓性脳梗塞ともいわれ、突発的におこることが多く、太い血管を詰まらせるため重症化や死亡率が高いのが特徴です。

3.血行力学性

症状がおきる前から脳の動脈が狭まっている種類の脳梗塞です。
普段は症状が出ない範囲で脳への血流が残っているものの、急な血圧の低下や脱水症状で脳への血流量が低下したときに引きおこされます。

生活習慣病

脳梗塞を発症する原因の一つとして、生活習慣病があります。
代表的なものとして、高血圧脂質異常症(高脂血症)糖尿病などがあり、これらが動脈硬化を引きおこし、進行を早めてしまう大きな原因になります。

1.高血圧症

安静にしていても血圧が正常値よりも高くなる病気で、高血圧の状態が長く続くことで血管が硬くもろくなり動脈硬化がおこりやすくなってしまいます。

2.脂質異常症(高脂血症)

食べ過ぎや過度な飲酒などによって悪玉コレステロールが増え、血管内の壁に付着することで動脈硬化がおこる原因となります。

3.糖尿病

血糖を下げる働きがあるインスリンの働きが足りず、高血糖状態が続く病気で、血管内部が傷つけられるので動脈硬化が進んでしまう要因になります。

4.そのほかの要因

肥満や運動不足、喫煙・過度な飲酒も危険因子となるため、常日ごろから健康的な生活をするよう心がける必要があります。

ヒートショック

脳梗塞の発症や死亡者は冬になるにつれて増加していく傾向にあります。
寒暖の差が大きいと血圧が急激に変動し、発作を引きおこすことが考えられます。これらは「ヒートショック」と呼ばれます。温度・湿度への適応能力が弱い高齢者は、血圧を急上昇させないよう寒暖差のある部屋の移動には注意が必要です。

脳梗塞になりやすい人

脳梗塞になるリスクが高い人には、下記のような項目が該当します。

・血圧が高い(高血圧・高血圧症
・血糖値が高い(高血糖・糖尿病
・コレステロール値が高い(脂質異常症
・心臓病や不整脈がある。肉や脂っこいものが好きで、肥満体質
・お酒をよく飲み、たばこを吸う。ストレスがたまっている
・家族に脳血管疾患や高血圧糖尿病脂質異常症の人がいる

脳梗塞の予防・治療方法・治療期間

脳梗塞には死亡リスクが高く早急に治療が必要な急性期と、発作から1ヶ月以上が過ぎて再発予防が中心となる慢性期の2つがあります。

急性期

急性期の治療では薬物療法が主におこなわれます。発症から何時間経過しているかによって治療方法が異なります。

1.血栓溶解療法(けっせんようかいりょうほう)

発症から4.5時間以内の脳梗塞患者に対しては、血栓を溶かす作用のあるt-PA(組織型プラスミノーゲン・アクティベータ)という薬剤を点滴で投与します。
血栓を溶かすため脳内出血がある場合は使えないものの、回復の確率が高いといわれています。
発症から4.5~6時間以内の脳梗塞患者さんに対しては、脳血管内にカテーテルを挿入し、血栓溶解剤を注入する「動脈内血栓溶解療法」をおこないます。

2.抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)

発症から48時間以内の不整脈などを原因とする脳梗塞患者さんに対しては、血栓が固まるのを防ぐ抗凝固療法がおこなわれます。
ワルファリンやヘパリンといった薬剤を投与することで、血管が塞がったり血栓が大きくなるなどの症状の進行や再発を防げます。

3.抗血小板療法(こうけっしょうばんりょうほう)

発症から5日以内の動脈硬化を原因とする脳梗塞患者に対しては、血液が固まりにくく血栓・塞栓を防ぐ抗血小板療法がおこなわれます。
アスピリンやクロピドグレルといった薬剤が投与され、血液が固まる要因となる血小板の働きを阻止することで血流の改善を促します。

4.脳浮腫軽減薬(のうふしゅけいげんやく)と脳保護薬(のうほごやく)

脳梗塞を発症すると脳が腫れてダメージを受けてしまいます。脳の腫れやむくみ、ダメージを軽減するため、脳浮腫軽減薬と脳保護薬を併用しながら治療を進めていきます。

慢性期

慢性期の治療では脳梗塞の再発を予防するため、薬物療法や血管治療がおこなわれます。

1.抗血小板療法(こうけっしょうばんりょうほう)

ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の再発予防には抗血小板療法が用いられます。
アスピリンやクロピドグレルが投与され、動脈硬化によって悪くなった血液の流れをよくする目的でおこなわれます。

2.抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)

心原性脳塞栓症の再発予防には抗凝固療法が用いられます。
ワルファリンやダビガトランが投与され、血液が固まるのを予防し血栓や動脈の狭窄(狭くなる)がおきないようにする目的でおこなわれます。

3.頸動脈内膜剥離術(CEA)(けいどうみゃくないまくはくりじゅつ)

頸動脈(けいどうみゃく)に70%以上の狭窄が見られる場合は、頸動脈内膜を剥離する手術がおこなわれます。
全身麻酔下の手術によって頸動脈を露出し、厚くなってしまった部分のみを切除します。手術をすることで脳梗塞の危険率が26%から9%にまで減少するともいわれています。

4.頸動脈ステント留置術(CAS)(けいどうみゃくすてんとりゅうちじゅつ)

頸動脈に狭窄があり高齢者や合併症によってCEAができない患者に対しては、頸動脈ステント留置術がおこなわれます。
血管内にステントと呼ばれる金網状の器具を留置し、動脈を広げる方法です。
全身麻酔の必要はなく、切開することもないため体への負担が少なくすみます。

5.バイパス手術

脳梗塞の再発予防をするため、脳血流を増やすバイパス手術をおこなう場合もあります。
患者の体から採取した健康な血管を、血栓や血管が狭くなっている部分の根元からその先の血管へつなげ、血流を確保する治療法です。
血流が保たれることで、脳への酸素や栄養不足が解消されます。

生活習慣の見直し

脳梗塞になるかならないかは、日頃の生活習慣と密接に関係しています。生活習慣に関して指導を行ないます。

1.食生活

高カロリー・高コレステロールを避け、塩分の取り過ぎにも注意します。
その代わりにDHA(ドコサヘキサエン酸)を含む青魚や、食物線維が豊富な野菜を多く摂取し、予防につながる食品を積極的に摂ります。

2.水分補給

適切な水分補給も脳梗塞の予防には重要です。
水分が不足すると血液がドロドロになりやすく、詰まりやすくなる原因となります。
のどの渇きの有無に関わらず、1日1.5~2リットルを目安に水分を摂りましょう。

3.肥満、運動不足の解消

生活習慣の改善には、肥満や運動不足の解消も含まれます。最初からハードな運動をしてしまうと長続きしないため、短時間のウォーキングやジョギングといった有酸素運動が推奨されます。特にウォーキングは日常動作と変わりがなく、血液量が増えるため血管を強化することにもつながります。

4.禁煙および酒量を減らす

たばこに含まれるニコチンには動脈硬化を促進する働きがあります。
たばこを吸う人は吸わない人に比べて、脳梗塞を発症するリスクが数倍高くなるため、禁煙を第一に考えましょう。
また、多量にお酒を飲むことも脳梗塞のリスクとなります。
1日にビール中瓶1本以上、日本酒では1合以上を超える量を飲むと血圧の上昇を招き、血管が詰まったり破けたりする可能性が高まるので適量を心がけましょう。

これらの生活習慣をしっかりと見直すことで、高血圧高脂血症糖尿病といった脳梗塞の危険因子を抑制することにつながります。

脳梗塞の治療経過(合併症・後遺症)

脳梗塞を治し後遺症のリスクを下げるためには、可能な限り早期の治療が大切となります。
脳梗塞は発症から4~5時間以内の治療が重要とされており、この時間内に適切な治療を開始できるかが、その後の状態を大きく左右するともいわれています。
発症から治療までの時間が遅れてしまうと、後々に重い後遺症が残ることがあり、日常生活への影響が大きくなってしまいます。しかも、症状の発見や治療に遅れが出てしまうと最悪の場合死に至ることもあるので、病気について理解し日頃から注意をはらう必要があります。

脳梗塞には前兆が見られずに発症することがあります。一過性脳虚血発作はすべての脳梗塞に当てはまる前兆ではありません。ある日突然大きな脳梗塞が引きおこされる可能性も考えられます。しかし、明確な初期症状はなくとも、日々の生活にわずかながら変化があらわれる場合があります。

原因不明の頭痛や肩こりが突然おこる、めまいや耳鳴りがする、指先が思うように動かないなどの異変を感じるときは、脳に何かしらの異常が発生していることもあるため、早めに病院で検査を受けましょう。

後遺症

脳の血管が詰まってしまう脳梗塞には、細胞が壊死した箇所によって後遺症の症状が異なります。主な症状は下記の3つです。

1.麻痺

脳梗塞の後遺症で多いのが片側の手足や顔面などの麻痺です。
運動機能の低下や食事などの日常生活にも影響を及ぼし、患者本人をはじめ家族にも大きな負担になる可能性があります。
麻痺の後遺症が出た場合は、早い段階でリハビリをおこなっていきます。
脳梗塞発症後2~3ヶ月辺りが回復しやすいとされているため、このタイミングでリハビリを開始することで日常生活への影響を少なくすることができます。

麻痺によってのどの機能が低下し、食べ物や飲み物をうまく飲み込めない嚥下障害がおこることもあります。

2.感覚障害

脳梗塞によって感覚を司る神経がダメージを負うと、熱さや寒さ、痛みへの感覚が鈍くなったり消失したりする感覚障害を引きおこします。
慢性期になると痛みを感じることもあり、日常生活へ大きな影響を与える可能性が高くなります。

3.高次脳機能障害

脳梗塞によって脳自体がダメージを受けることで、行為・記憶・認知障害といった高次脳機能障害の後遺症があらわれることがあります。

4.行為障害

麻痺やしびれがないにも関わらず、動作や行動を正確におこなえなくなる「失行(しっこう)」状態となります。
失行には日常生活の簡単な動きができなくなる「運動失行」や、服を着たり脱いだりといったことができなくなる「着衣失行」などがあります。

5.記憶障害

過去の記憶を忘れてしまう、直前のことを思い出せない、新しいことを覚えられないといった3種類が多くあらわれ、1種類だけ出る場合もあれば3種類とも見られる場合もあります。

6.認知障害

物体失認、聴覚失認、半側空間無視(はんそくくうかんむし)、ほか地誌的障害が日常生活への影響が大きいとされています。

物体視認:知っているはずのものを見ても何なのかわからなくなる状態
聴覚失認:知っているはずの音が何なのかわからなくなる状態
半側空間無視:自分の右側または左側の空間が認識できなくなる状態。壁などにぶつかることが多くなります。
地誌的障害(ちしてきしょうがい):知っている道順で迷ってしまう「地誌的見当識障害(ちしてきけんとうしきしょうがい)」と地図などを見ながら家の位置を示すことができない「地理的記憶障害」があります。

後遺症の重症度の分類

脳梗塞の後遺症には重症度を表す「mRS判定基準書」というものがあり、症候がないものから死亡まで6つに分類されています。

重症度0
まったく症候がない

重症度1
症候はあっても明らかな障害はない:日常の勤めや活動は行える

重症度2
軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える

重症度3
中等度の障害:何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える

重症度4
中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である

重症度5
重度の障害:寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする

重症度6
死亡

再発の可能性

脳梗塞は治ったとしても血管に再び血栓ができやすく、再発しやすい病気です。
一度目の発症が軽度であっても脳の細胞がダメージを受けているため、再発するたび広い範囲に影響が及ぶので、症状や後遺症が重症化しやすいです。

脳梗塞をはじめとする脳卒中は、症状や後遺症によって、介護が必要となるリスクがあります。
退院後は後遺症の重症度に応じて食事から排泄、入浴のサポートといった生命活動に関わるものから、歩行や身の回りのお世話など多岐に渡ります。
また、介護は一人でおこなうのではなく、在宅サービスや地域密着型のサービス、施設サービスを利用するなど負担を分散することを考慮しましょう。

合併症

脳梗塞を発症すると心不全や消化管出血、肺塞栓症といったさまざまな合併症のリスクが高まります。

1.心不全

心臓の機能不全を指す心不全では、心臓から細胞や臓器に血液を送ることが難しくなり、酸素や栄養不足を引きおこします。
心不全の症状が悪化することで多臓器不全にもなり、死亡の直接的な原因にもなります。

2.消化管出血

胃や消化器官に潰瘍ができて出血が生じることで、吐血や下血を伴う病気が消化管出血です。脳梗塞によるストレスが原因で、胃酸の分泌が多くなることにより発症します。
特に高齢者や脳梗塞の症状が重いほど、消化管出血をおこす確率が高くなるとされています。

3.肺塞栓症(はいそくせんしょう)

肺動脈に血栓が詰まってしまう病気が肺塞栓症です。脳梗塞の後遺症として下肢の麻痺が出た場合、足が動かないことで静脈が拡張され血液の流れが徐々に悪くなっていきます。麻痺している足に血栓ができやすく肺塞栓症を発症しやすくなります。
肺塞栓症の死亡率は10~30%ともいわれているので、足のむくみや色がおかしくなっている場合は注意が必要です。

脳梗塞になりやすい年齢や性別

多くは60代から発症が見られます。しかし、40〜50代の若年性脳梗塞も目立ってきています。その原因は、若い時から脂質異常症、喫煙、糖尿病、肥満など動脈硬化の要因を持って人が増えていることです。
また女性特有のものでは、出産によるもの、ホルモン剤の影響(経口避妊薬、生理日を変更する薬など)、片頭痛が関連したものがあります。
脳梗塞患者数は、2017年150.6人にも及んでいます。平成20年以降減少傾向にありますが、脳血管疾病による死亡は、2018年の日本人の死亡原因4位です。

執筆・監修ドクター

板東 浩
板東 浩 医師 医師 担当科目 内科

経歴1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

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