しんしゅつせいちゅうじえん滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは?
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、鼓膜のさらに奥にある中耳腔というスペースに液体がたまる中耳炎です。通常の状態であれば中耳腔にたまった液体は耳管から鼻へと抜けるため、液体がたまることはありません。しかし、耳管の状態が悪いと液体は排出することができず、中耳腔にたまり続けます。この状態になると音が伝わりづらくなり、難聴になります。また放置することで鼓膜が中耳腔の壁に癒着するなどの症状に発展することがあるので、早期に治療をすることが重要です。
滲出性中耳炎の症状
難聴(軽度)、耳閉塞感です。
滲出性中耳炎の診療科目・検査方法
耳鏡検査、聴力検査、チンパノメトリを行います。
幼児、小児の難聴を放置すると言語発達に影響が出たり、コミュニケーションに障害が出る可能性があります。
また高齢者の難聴はコミュニケーションや認知機能に影響が出ます。
耳鼻いんこう科を受診する必要があります。
▼子供がかかりやすい中耳炎の種類について詳しく知りたい方はこちら
ベビママほっと。:子どもの中耳炎の症状は?種類別に解説。プールやお風呂はどうする?
滲出性中耳炎の原因
耳管閉塞(狭窄)、急性中耳炎後、副鼻腔炎、アデノイド増殖症です。
滲出性中耳炎の予防・治療方法・治療期間
耳管通気法、鼓膜切開術、鼓室内チューブ留置術(チュービング)、去痰剤などの内服治療を行います。
鼻汁、鼻閉のある方は副鼻腔炎治療を行います。
アデノイド増殖症によるものはアデノイド切除術を行うことがある。
内服などの保存的治療は数週間から数か月かかる場合があります。
保存的治療を一定期間行い、効果が無い場合は鼓膜切開術などを行います。繰り返す場合はチュービングを実施します。
滲出性中耳炎の治療経過(合併症・後遺症)
治療を行えば症状は改善します。
治療開始が遅れることで手遅れになることはありません。
滲出性中耳炎になりやすい年齢や性別
小児と高齢者に多いです。
男女差はありません。
編集部脚注
※1 副鼻腔炎
副鼻腔炎は、「鼻の周囲にある空洞―副鼻腔の炎症」です。
鼻の穴の内部を「鼻腔」と呼ぶのに対し、周囲にある空洞は「副鼻腔」と呼びます。
副鼻腔は、4種類が存在します。
・前頭洞
⇒額(ひたい)に左右一対で存在する空洞です。
・篩骨洞(しこつ-どう)
⇒両目の間に左右一対で存在する空洞です。
・蝶形骨洞(ちょうけいこつ-どう)
⇒篩骨洞の奥に左右一対で存在する空洞です。
・上顎洞(じょうがく-どう)
⇒鼻の脇、頬(ほほ)に左右一対で存在する空洞です。
上気道炎(風邪)による炎症、口腔内の炎症などが副鼻腔に波及すると、副鼻腔炎になります。
副鼻腔炎が慢性化した状態―慢性副鼻腔炎は一般に「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれます。
※2 アデノイド増殖症
アデノイド増殖症は、「喉の上の方にある咽頭扁桃(アデノイド)が極端に大きくなった状態」です。
本来、「子供の時には大きく、大人になると小さくなる組織」なので、小児期にアデノイドが大きいのは普通です。
しかし、あまりに大きくなると問題が起こります。
アデノイドが位置するのは「鼻腔~喉に至る途中」です。
アデノイドが大きくなれば、「鼻から喉につながる気道」が塞がってしまいます。
実際、代表的な症状として「鼻づまり」があげられます。
また、アデノイドの脇には耳管(鼻腔から耳につながる管)が存在します。
大きくなったアデノイドが耳管を塞ぐと、耳の中に空気が入りにくくなり滲出性中耳炎をきたします。
※3 チンパノメトリ
チンパノメトリは、「鼓膜の動き方を確認することで、中耳の状態を確認する検査」です。
まず、耳栓で外耳道(耳の穴)を密閉した状態にします。このまま外耳道の空気圧を高めた場合、鼓膜は外側から内側に押されます。
鼓膜は内側に向けてピンと張った状態になるはずです。
その後、外耳道の空気圧を弱めると、鼓膜の位置は元に戻っていきます。
トータルで見ると、鼓膜は「外→内→外」と移動したことになります。
しかし、滲出性中耳炎の場合、鼓膜がほとんど動かなくなります。
中耳(鼓膜の奥)に液体がたまっていることが原因です。
チンパノメトリは、「気圧の変化による鼓膜の動き」を利用した検査になります。
「ティンパノメトリー」などと表記することもあります。
※4 耳管通気法
耳管通気法は、「中耳に空気を送りこむ治療」です。
「鼻腔~喉」の途中には、耳管と呼ばれる管があります。
耳管は耳の中(中耳)につながっています。
耳管通気法では、鼻からカテーテル(細い管)を入れ、耳管を通して中耳に空気を送ります。
空気と入れ替わる形で、中耳にたまった液体を排出することが可能です。
※5 鼓室内チューブ留置術
鼓室内チューブ留置術は、「鼓膜に小さな穴をあけて、中耳にチューブを挿入する治療」です。
滲出性中耳炎では、鼓膜の内側(中耳)に浸出液がたまります。
チューブを設置することで、中耳の液体を排出できるようになります。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴1985年 浜松医科大学卒業
1985年 慶応義塾大学耳鼻咽喉科学教室入局
1990年 慶應義塾大学医学部助手(耳鼻咽喉科学)
1994年 横浜市立市民病院 勤務
2001年 相模原協同病院 部長
2004年 横浜市立市民病院 部長
2007年 済生会横浜市南部病院 部長
2017年 おがた耳鼻咽喉科 開設
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