かんせん乾癬
乾癬(かんせん)には尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)、滴状乾癬(てきじょうかんせん)、乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)の5種類があります。
乾癬の約90%は尋常性乾癬という皮膚の病気です。尋常性乾癬は、皮膚の新陳代謝の速度が通常より10倍以上速くなります。
そのため、角質(角質:皮膚の一番外側を構成する組織)が積み重なり、皮膚に一つまたは複数の赤いまだら模様(紅斑:こうはん)ができます。紅斑の上には、銀白色の細かいかさぶた(鱗屑:りんせつ)ができます。
全身のあらゆる部分に発症します。特に、日光が当たりにくい箇所(頭皮、肘、膝、背中、腰)によくみられます。紅斑の大きさ、数、形はさまざまで、かゆみも伴うことが多くあります。また、慢性的に再発を繰り返します。
一度発症すると、根本的に治すことが難しいため、身体的な苦痛に加え、生活の質(QOL)が低下する(人に見られたくない、フケが増えるなど)といった心理的な苦痛も伴います。
症状に応じて、外用療法、内服療法、光線療法(紫外線療法)、抗体療法がおこなわれます。
乾癬の症状
症状は乾癬の種類によって異なります。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
鱗屑(りんせつ:細かいかさぶた)を伴う紅斑(こうはん:赤いまだら模様)が全身のあらゆる部分にあらわれ、鱗屑がフケのように落ちます(落屑:らくせつ)。紅斑の大きさ、数、形はさまざまで、かゆみを伴うこともあります。慢性的に再発を繰り返します。
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
関節が腫れたり、痛んだり、変形したりするなどの関節リウマチに似た症状があらわれます。多くの場合、数カ月から数年をかけて発症します。関節の症状の程度と皮膚の症状の程度とは必ずしも比例しません。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
扁桃腺炎、咽頭炎の後に、滴(しずく)の形をした小さな発疹(乾癬発疹)があらわれます。小さい子どもや、若い人に多くみられます。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬の紅斑が全身に広がった状態です。発症することはきわめてまれですが、重くなります。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
全身に膿疱(のうほう:膿を含んだ水ぶくれ)がたくさんあらわれます。また、発熱や全身倦怠感(だるさ)も伴います。発症することはまれです。しかし、乾癬のなかでも重症で、炎症が強いため、入院治療が必要になります。
乾癬の診療科目・検査方法
主な診療科目は皮膚科です。
多くは問診、視診、触診によって診断されます。乾癬と断定しにくい場合は、細胞の一部を採取し顕微鏡で診断する皮膚生検もおこなわれます。
抗体治療(後述)をおこなう場合は、胸の検査、肝炎ウィルスの検査もおこなわれます。
乾癬は患者さんによって症状が異なるため、確実な診断を受け、適切な治療を受けることが必要になります。特に、全身に広がる紅斑、全身倦怠感を伴う紅斑、発熱、悪寒、膿(うみ)をもった水疱(すいほう:水ぶくれ)などがあらわれた場合は、入院となる恐れもあるので、早めに受診しましょう。
乾癬の原因
詳しい原因はまだ解明されていません。本来、自分の身体を守るはずの免疫機能がなんらかの要素によって乱れ、自分の身体を攻撃することで発症すると考えられています。
また、家族内で複数の人が乾癬にかかることもあります。乾癬にかかりやすい遺伝的なものが原因になっていたり、「外傷、感染症、ストレス、特定の薬剤、食生活、不規則な生活」などの外的なもの、「糖尿病、脂質異常症、肥満」などの内的なものが複雑に加わっていると考えられています。
乾癬の予防・治療方法・治療期間
症状によって治療方法も異なります。外用療法、内服療法、光線療法(紫外線療法)、抗体療法のなかから、単独、または、複数を組み合わせておこなわれます。
外用療法
外用療法に使う外用薬には、ステロイド薬、ビタミンD3外用薬と、この2種類を合わせた配合剤があります。
ステロイド薬は、炎症を抑える薬です。即効性があり、よく使われています。ビタミンD3外用薬は、皮膚の新陳代謝を正常にする薬です。長期間にわたって使うことができます。
内服療法
内服療法には、レチノイド、シクロスポリン、メトトレキサートといった薬が使われます。メトトレキサートには健康保険が適応されません。
光線療法(紫外線療法)
光線療法(紫外線療法)は、紅斑が広く、外用薬を塗るのが困難な場合におこなわれます。PUAV(プーバ)療法とナローバンドUVB療法があります。PUAV(プーバ)療法では、紫外線の感度を高めるためにソラレンという薬を使います。
抗体療法
外用薬、内服療法、光線療法(紫外線療法)で効果ない場合には、抗体療法をおこないます。
生物学的製剤治療ともよばれています。生物学的製剤には、皮下注射で使用するアダリムマブやウステキヌマブ、点滴注射で使用するインフリキシマブがあります。これらは重い乾癬に有効です。
治療期間は、症状によってさまざまです。
乾癬の治療経過(合併症・後遺症)
治療によって症状が治まった後も、繰り返し再発します。根本的に治す方法はないといわれています。しかし、現在では、多岐にわたる治療法のなかから適切な治療を受けることで、長い期間、症状のない状態を保つことができるようになってきています。
治療だけでなく、食生活や生活面を変えることでも、症状の悪化や再発を防ぐことができます。
脂肪の多い食べ物の取りすぎに気をつける、刺激の強い香辛料は避ける、アルコール、タバコは控えめにするなどがあげられます。
また、外傷や乾燥、衣服による身体の締めつけ、こすれなどの刺激に気をつけ、ストレスがかかりすぎないように過ごすことが大切です。
治療によって症状が安定した後は、いかに症状を悪化させないよう日常生活を送るかが重要となります。
乾癬になりやすい年齢や性別
世界中の人の約1~5%が発症しています。よく発症する年齢層は、16~22歳と57~60歳です。皮膚の色素が薄い人種は発症するリスクが高くなります。
日本ではゆるやかな増加傾向にあります。国内に約50~60万人(人口の0.4~0.5%)の患者さんがいると推計されています。
また日本では2:1と、女性より男性の方が多くなっています。どの年齢でも発症しますが、男性は50歳代、女性は20歳代と50歳代に多くみられます。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長 就任
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