かわさきびょう川崎病
川崎病(かわさきびょう)とは、乳幼児におこる病気です。川崎富作博士により1967年に報告され、博士の名前をとって川崎病と名付けられました。
主な症状は、全身の血管に炎症がおこります。
その結果、発熱や発疹、目が赤くなるなどの症状があらわれます。
まれではありますが、後遺症として冠動脈(※)障害が発症します。
急性期(※)の治療がうまくいけば冠動脈障害をおこす可能性は格段に低くなります。
そのため急性期に適切な治療を施すことは、後遺症を残さないためにも非常に重要です。
原因など不明なことは多く残されています。
急性期の症状を見逃さず治療にあたるためにも注意が必要な疾患です。
※急性期・・・体調が悪くなり、具体的な症状があらわれる期間のこと。その後の治療で回復期に移る。
※冠動脈・・・冠動脈は右冠動脈、左冠動脈という心臓に流れる血管をさす。これらの血管が詰まりかけると狭心症を引き起こし、詰まると心筋梗塞を引き起こす。
川崎病の症状
症状は急性期とその後遺症の冠動脈障害に分けられます。
急性期に川崎病と診断される症状は6つあります。
- 発熱が5日以上続く。38度以上になることが多い。
- 両眼の眼球結膜(白目)が充血する。
- 唇や舌、口腔内が赤くなる。舌がブツブツ赤く発疹が出た状態(イチゴ舌)になる。
- 全身にさまざまな形状の発疹がおこる。
- 手足の先がむくむ。急性期を過ぎると皮膚がめくれて剥がれ落ちる落屑(らくせつ)がおこる。
- 頚部のリンパ節が腫れる。ただし、川崎病でのリンパ節腫大は化膿しない。
このうち5つ以上確認されると川崎病と判定されます。
またこのうちの症状が4つにとどまっていても冠動脈障害を確認した場合は川崎病と診断されることがあります。
BCGの接種痕が赤くなることもあり、急性期の症状5つと合わせて特徴的な所見です。
血管の炎症によりその他にも下痢や嘔吐、腹痛などさまざまな全身の症状がおこります。
冠動脈は川崎病の中でも最も注意すべき侵害される箇所です。急性期の症状が強い、または発熱が長く続くことで、血管の組織の炎症が強くなり、冠動脈に動脈瘤ができます。また他の箇所に動脈瘤ができることもあります。
川崎病の診療科目・検査方法
急性期の症状を早急に抑えることが冠動脈障害の発生に関わるため、疑われる症状があればただちに小児科を受診しましょう。
急性期を過ぎて冠動脈に影響がある場合は小児循環器科・循環器内科・心臓血管外科にて経過観察・治療をおこないます。
まずは【症状】の項目であげた6つの症状のうち5つが該当するかを診察します。
あてはまる症状が5つ未満でも心エコー検査にて冠動脈瘤の有無を確認し、発見された場合は川崎病と診断されます。
川崎病と診断された場合、発症後から超音波で冠動脈の状態を確認し、異常所見がある場合は心臓カテーテル検査をおこない、冠動脈の状態をより詳しく調べます。
これにより狭窄(※)がどの程度あるのかを確認します。
※狭窄(きょうさく)・・・血管や弁が硬くなることでうまく開かなくなる症状です。心臓へ供給される血液が減るため、十分に酸素が運ばれず胸痛や重症の場合に心不全を引き起こすこともあります。
川崎病の原因
詳しい原因については不明です。
ウイルスや細菌への感染を防ぐために免疫反応がおこることがきっかけで発症するのではないかと考えられています。
これは夏と冬に多いという季節的傾向や地域差があるなどの理由からですが、解明されていません。
遺伝により、両親が川崎病にかかったことがある場合は発症率が上昇するとも指摘されています。
また西欧諸国よりも日本に多いなどの傾向もあることが指摘されています。
川崎病の予防・治療方法・治療期間
川崎病の治療は急性期の炎症を早期に終息させることが重要です。
これにより冠動脈への後遺症を最小限にすることが可能となります。
そのため診断された場合は発症から7日以内に免疫グロブリン製剤(IVIG)の投与をおこないます。
免疫グロブリンとは、血液中の免疫に関わるタンパク質で、人間の血液から作られます。
それを精製して注射により使用します。
症例の8割でこの治療の終了後48時間以内に体温は37.5度以下になります。
免疫グロブリンに効果がなかった場合や副作用などがおこった場合、または重症化のリスクが治療前から高いと予想される場合は、副腎皮質ステロイド・シクロスポリン・抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体など抗炎症作用や免疫抑制作用のある他の薬剤による治療をおこなうこともあります。
冠動脈障害が強い場合は血漿交換も考慮されます。
アスピリンの内服併用は血栓予防でおこなわれます。
冠動脈瘤が生じた場合は継続した慎重な経過観察をする必要があります。
川崎病の治療経過(合併症・後遺症)
急性期の症状は、通常1~2週間で回復します。
しかし、まれに敗血症や心不全をおこし生命に関わることがあります。
冠動脈に重度な障害をおこしていた場合、不整脈、心筋梗塞などのリスクが出てきます。
冠動脈瘤の大きさなどにより運動の制限などが指導されることもあります。
また罹患後はいずれの場合も継続した経過観察(冠動脈障害発生有無の確認)が5年程度は必要になります。
参考・出典サイト
川崎病になりやすい年齢や性別
近年、増加傾向にあり、2016年の患者数は1万5千人程度です。
3歳未満は6割を超えており、生後9~11カ月の乳児が最も発症しやすい子どもの病気といえるでしょう。
また、女児よりも男児に多い傾向があります。
死亡率は約0.01%であり、冠動脈への後遺症例は97年・98年の調査では20.1%だったが2015・2016年の調査では8.5%と大きく低下しています。
執筆・監修ドクター
経歴2003年 関西医科大学 卒業
2003年 神戸大学医学部付属病院小児科入局
2004年 六甲アイランド病院小児科
2005年 愛仁会千船病院小児科
2007年 神戸大学医学部附属病院小児科 医員/神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻(博士課程)小児科学 入学
2010年 神戸大学医学部附属病院こども急性疾患学講座 特命助教
2011年 神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻(博士課程)小児科学 卒業
2012年 兵庫県立こども病院小児科
2012年 愛仁会高槻病院小児科医長 2017年より小児科部長
2018年 はしむら小児科 開院
関連する病気
川崎病以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。
関連カテゴリ
川崎病に関連するカテゴリはこちら。