この記事の監修・執筆者
名古屋大学大学院医学研究科 教授 八木哲也 先生
教授八木哲也先生の写真

1988年 名古屋大学医学部 卒業
1988年 名古屋第二赤十字病院 研修医
1990年 名古屋掖済会病院 呼吸器科
1995年 名古屋大学医学部附属病院 第一内科
1998年 国立感染症研究所 細菌第2部 主任研究官
2003年 国立長寿医療センター 呼吸器科・治験管理室長、第二外来総合診療科医長
2008年 名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部 准教授
2012年 名古屋大学大学院医学研究科 生体管理医学講座 臨床感染統御学分野 教授
(現在に至る)

名古屋大学医学部附属病院の感染対策の責任者を務める。
日本感染症学会専門医、日本呼吸器学会専門医の資格も持つ。
また、日本感染症学会と日本臨床微生物学会にて理事を務める。

目次

病院の感染対策や子連れで受診する際の注意点は?

世界中で感染が広がり続けている「新型コロナウイルス」。日本でも感染者数が増加し、ついには国としても一時的に緊急事態宣言を出して第1波を乗り切りましたが、現在それに引き続き第2波ともいえる患者の急激な増加がみられています。

このように感染症が流行している中で、ママやパパ、子どもが体調を崩して受診が必要になったり、持病を抱えていて通院が必要なとき、「病院内で感染したらどうしよう‥」と不安で、病院に行けないという方もいるのではないでしょうか。

この記事では、流行中の「新型コロナウイルス」を例に、病院の感染対策や、子ども連れで受診する際の注意点を紹介していきます。

病院で想定される院内感染経路

通院・受診時の感染リスク

新型コロナウイルスに限らず、季節性のインフルエンザなどの「感染症」では共通点があります。

●換気の悪い「密閉空間」
●多数が集まる「密集場所」
●間近で会話や発声をする「密接場所」

これらの「三つの密」が生じる場所で広がりやすいことです。

病院の待合室では、他の患者との距離が十分に取れなかったり、キッズスペースで他の子どもと接したり、病院での診療においては、スタッフ・医師と密接した距離にて会話をするなど、病院は「三つの密」の条件に当てはまる環境にあり、濃厚接触を避けるのが難しいといわれています。

特にママや子どもの体調不良で通院する機会の多い「内科」「小児科」「耳鼻咽喉科」などは、熱や咳、鼻水など感染症の疑いのある症状をもつ多くの患者が足を運びます。普通に生活しているよりも、感染者と遭遇する確率が高い場所といえるため、通院時はより感染対策が重要となります。

感染経路の種類や注意点

上記で紹介した「三つの密(密閉・密接・密集)」が感染リスクの高い危険な状態とされていますが、病原体の感染経路にはどのようなものがあるのでしょうか。

現在、厚生労働省が発表している新型コロナウイルスの主な感染経路は、「飛沫感染」「接触感染」が考えられると報告されています。

飛沫感染では、感染者の咳、くしゃみをした際に出る「しぶき」を介してウイルスが他人にうつります。
接触感染では、病院の手すりやドアノブ、待合室の雑誌やキッズスペースのおもちゃ・絵本などの共有物にウイルスが付着しており、付着部分に触れた手で自身の目・鼻・口に触れることにより、うつってしまいます。

特に子どもは興味本位で床や壁などいろんな場所やものに触れてしまいますが、共有部に触れたら早めの手洗い、消毒をして清潔に保つことが大切です。

受診前に病院の感染対策を確認

不要不急の通院はなるべく避けた方がよいですが、「子どもの様子が普段と違う」、「市販薬を服用しても症状が改善しない」といった場合には、ためらわず早めに受診をしましょう。

症状によっては放置すると悪化する可能性があります。また、体調が悪化して免疫力が下がってしまうと、かえって感染症にかかるリスクも高くなってしまいます。

どうしても感染リスクが気になってしまう場合は、医療機関を受診する前に、まずはご自身や子どもの症状について相談したり、病院の感染対策について電話で聞いてみるのもいいでしょう。

病院の感染対策

標準的な感染予防策

多くの病院やクリニックでは、院内での感染拡大を防ぐため、厚生労働省のガイドラインに基づいた「感染予防策」を取り入れています。

「感染予防策」とは、すべての患者に対して適用する標準予防策に加え、特定の病原体の感染経路を遮断するための予防策(接触・飛沫・空気予防策があります)を加えた対策のことをいいます。

まず、標準予防策は、患者の血液・体液・分泌物・嘔吐物・排泄物・創傷皮膚・粘膜などは感染源となりうる危険性があり、こうした感染源になりうるものに触れる可能性がある場合には手袋の着用を、飛び散る可能性がある場合は手袋・マスク・エプロン・ゴーグルなどを着用し、感染予防を行います。
診察の前後にしっかりと手指を消毒することも、標準予防策のひとつです。

これに加えて、感染経路別の対策が必要になります。

接触予防策

・患者に触れる手や患者に使用する体温計や血圧計などの共有器材で感染が広がることを防止する
・患者がよく触れる手すりやドアノブなどの環境を介して感染が広がることを防止する
・診察時に医療スタッフは手袋やエプロンを着用する、診察前後に厳重に手指衛生をする、環境の消毒を頻回に行う
など

飛沫予防策

・飛沫が届かないように距離を取る、または物理的な遮蔽物(しゃへいぶつ)を設置する
・呼吸器症状のある患者にマスクを着用させる
・患者の1~2m範囲内でケアする場合は、医療スタッフはサージカルマスクを着用する
など

これらを実施することで、院内での感染症拡大を防いでいます。

具体的な取り組み

では、実際に病院やクリニックでは具体的にどんな対策をしているのでしょうか。
以下の対策は一例であり、必ずしもすべての医療機関で行っているというわけではありません。
かかりつけの病院やクリニックがどのような対策をしているか知りたい場合は、ホームページや電話、窓口などで確認してみましょう。

【患者へお願いしている予防対策】
・来院時の検温
・マスクの着用
・診察まで院外での待機
・かぜ症状がある場合は事前連絡し、診察時間を調整
・かぜ症状のある場合は待合室、診察室を隔離

【施設内の予防対策】
・密閉回避のため、ガイドラインの規定通りに換気
・ソーシャルディスタンス(社会的距離)の順守
・キッズスペースのおもちゃや絵本の撤去
・待合室における雑誌や新聞、ウォーターサーバー等の撤去
・受付にビニールカーテンの設置
・待合室の人数をできる限り少なくして「密集、密接」を回避

【スタッフの予防対策】
・フェイスシールド、ゴーグル、ガウン、手袋などの防護服の着用
・スタッフの健康管理の徹底、発熱や倦怠感(けんたいかん)などの症状があれば自宅待機の徹底

【その他の予防対策】
・電話診療の導入
・オンライン診療の導入
・診療時間の短縮や変更
・再診の方を対象に、電話受付による処方せんの発行

それ以外にも、患者ごとに診察椅子や周辺の消毒、内視鏡検査の一時休止など、医療機関ごとにさまざまな対策を行い、感染予防に努めています。

受診が避けられない場合は?

予防対策で感染リスクを軽減

緊急性の高い場合や受診が避けられない場合には、少しでも感染リスクを下げるために以下の対策を行い受診されることをおすすめします。

●マスク着用
●アルコール性消毒薬や消毒薬入りのシートを持参
●事前に診察予約

マスクを着用することで、咳やくしゃみをした際のしぶきを防ぐことができ、近い距離で会話をするような場合でも、ウイルスがうつるリスクを下げることができます。鼻と口をしっかり覆い、隙間ができないよう正しくマスクを着用しましょう。布マスクでも不織布を重ねてあるサージカルマスクでもどちらでも効果的です。

マスクを嫌がる子どもには、好きなキャラクターのマスクを選んだり、耳にかけるゴムがきつくて嫌がることもあるので、痛くなりにくいものを選ぶとよいでしょう。

また、幼児はいろいろな場所を触り、その手を口に入れたり目をこすることも多いですが、病院で共有物に触れた際には備え付けまたは手持ちの消毒液で手指消毒(または消毒薬のシートで拭う)を行うとよいでしょう。

診察を「事前予約」できる病院を探すのも予防対策になります。
事前予約することで、感染リスクのある場所の滞在時間を短縮することができ、物理的に感染リスクを軽減することができます。

また、自分がかぜ症状のために受診しなければならない場合には、三つの「咳エチケット」を守りましょう。
咳やくしゃみをするときには、①マスクを着用、②ティッシュやハンカチで鼻や口を覆う、③洋服の袖で鼻や口を覆う、この三つのエチケットを守るだけでも周囲への感染リスクを下げることができます。

子どもや自身の感染対策だけでなく、周囲へ感染させない行動も心がけましょう。

手洗い・うがい・消毒のほか体調管理も大事

手洗いをしない状態の手には、約100万個ものウイルスや菌が付着しているといわれています。
石けんやハンドソープを使用し、10秒もみ洗い→流水で15秒すすぐだけで手についたウイルスを約0.01%まで除去することが可能です。さらにもう一度繰り返すことで、約0.0001%(数個)にまで下げることができます。

手洗いを嫌がる子どもには、親御さんも一緒に歌いながら手洗いをするなど、手洗いが楽しくなるような工夫をしてみましょう。また、手をかざすと泡が出る「ソープ ディスペンサー」を使うと、子どもも楽しいだけでなく、直接触る必要がないため感染予防にもつながります。

手洗いをていねいに行うことで、アルコール消毒薬を使用するのと同じくらいの効果を得ることができますので、家に帰ったら欠かさず「石けんで手洗い」「うがい」をしましょう。

また、手洗い・うがいのほかに日常的に「睡眠・栄養・運動」を適度に取り、体調を整えておくことで免疫力アップにもつながります。
子どもはもちろん、ご家族の皆さんで健康管理をしっかり行いましょう。

まとめ

今回は新型コロナウイルスを例に、病院で実施している感染症対策や患者自身で取り組める予防法について紹介しました。

新型コロナウイルス感染症は、大人に比べて子どもの重症化例が少ないとされていますが、家庭内での感染例が多いという報告もあります。病院側でも患者を受け入れるため日々感染対策を行っていますが、私たち一人ひとりの行動や努力によって家族や周囲への感染拡大を防ぐことが大切です。

紹介した院内感染対策は、全国すべての病院で取り組んでいるというわけではありません。受診する必要がある場合は、まずは病院のホームページや電話で、症状の相談や院内感染対策の取り組みについて問い合わせてから受診するとよいでしょう。

【参考】
厚生労働省 国民の皆様へ(新型コロナウイルス感染症)
厚生労働省 感染対策の基礎知識
厚生労働省 家庭内でご注意いただきたいこと
経済産業省 マスクや消毒液等の状況
経済産業省 身のまわりを清潔にしましょう。

【新型コロナウイルス】病院内の感染予防策や受診時の注意点を解説
ベビママほっと。
2020-08-07T10:48:30+00:00
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