ヘルパンギーナと手足口病のウイルスは、同じエンテロウイルス属で症状も非常に似ているため違いに気づきにくいです。違いを見極め、適切な対処をするためにヘルパンギーナと手足口病の見分け方と対症療法について紹介しています。
- なごみクリニック 院長 武井智昭 先生
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」院長に就任
小児科専門医・指導医
日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
臨床研修指導医(日本小児科学会)
抗菌化学療法認定医
全人的な医療を心がける。病気・障害と付き合い「地域に住む方が、健康面で安心して生活を続けるお手伝いをする、支える医療」を目指す。
目次
ヘルパンギーナと手足口病は症状が似ている?
ヘルパンギーナと手足口病の違い
ヘルパンギーナと手足口病はどちらも夏場に流行し、口の中に水疱ができる点が共通しています。
それぞれ違う感染症ですが、非常に似ており、区別がつかない方もいらっしゃると思います。
これらの違いを見分けるには、主に熱と発疹に注目するとわかりやすいです。
まず熱についてですが、ヘルパンギーナは発熱があり、39~40℃と高熱であることが特徴です。対して、手足口病はあまり発熱することはなく、発熱しても38℃以下であることが多いです。
そして発疹についてですが、水疱の場所に大きな違いがあります。ヘルパンギーナは口の中だけに水疱ができるのに対し、手足口病は口の中に加え、手足にも同じような水疱がみられ全身に発疹がでることが特徴です。
医師はどうやって見分けるの?
医師はヘルパンギーナと手足口病をどのように診断しているのでしょうか?
診察では、それぞれの違いや流行状況により判断する場合が多いようです。検査して調べることもできますが、インフルエンザなどのように簡易キットなどがなく検査機関へ提出し結果がでるまでに症状が改善されていることがほとんどです。
どちらも治療はウイルスをやっつける薬はなく、つらい症状を緩和するための対症療法が優先されます。
たとえば、発熱に対して解熱剤、口内炎に対して炎症止めを処方するなどです。
流行期や感染経路も似ている?
ヘルパンギーナと手足口病の流行時期や感染経路についてみていきましょう。
ヘルパンギーナは5月から7月頃に流行します。感染経路は咳やくしゃみによってウイルスが飛散する飛沫感染や、ウイルスが付着した手が触れた部分を触り、口や鼻に触れることで感染する接触感染があります。
感染者は乳幼児に多く、口に入れたおもちゃに付着した唾液やオムツ替えで感染する可能性もあります。
手足口病は6~8月頃に流行します。ヘルパンギーナと同様に夏場に流行する感染症です。
数年おきに大流行することが国立感染症研究所より発表されています。感染経路はヘルパンギーナと同様に、飛沫感染や接触感染により感染が広がります。
ヘルパンギーナと手足口病の併発について
それぞれの原因となるウイルスは?
ヘルパンギーナはエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスが原因となるウイルスです。
手足口病はエンテロウイルス属のコクサッキーA16(CA16)、CA6、エンテロウイルス71(EV71)などが原因となるウイルスです。
どちらもエンテロウイルス属のウイルスのため症状や流行時期なども非常に似ています。
ヘルパンギーナと手足口病を併発することもある?
ヘルパンギーナと手足口病はウイルスがそれぞれ違うため、併発することもあります。併発した場合、口の中だけでなく手足を含め、全身に水疱がみられる上に高熱の場合は両ウイルスが体内に入り感染している可能性があります。
食事はどうやってとればよいの?
口の中の水疱が痛い場合は、その影響で子どもが食事を嫌がることがあります。そのようなときは無理強いせず、食べられるものを食べさせましょう。
特に気をつけることは、水分補給と食事です。
水分補給の飲み物は、酸味のあるものや柑橘系以外であれば、水やお茶、ジュースでも大丈夫です。
お子さんが口にしみないもので、嫌がらずに飲めるものを飲ませてあげます。
冷たい飲み物などは喉越しもよく、嫌がらずに飲んでくれることがあります。牛乳にバナナなどの果物、野菜を入れたスムージーや冷たく冷やしたヴィシソワーズは飲みやすく栄養もとれます。
ヴィシソワーズは、意外と簡単に作れて、食事代わりになるのでおすすめです。コンソメ出汁で煮た玉ねぎとじゃが芋を加熱し、牛乳や豆乳を入れミキサーにかけ、冷やすだけでできます。
噛んで食べる食事は、適温で柔らかい食品をあげましょう。
ヘルパンギーナと手足口病の違いをご存知ですか?どちらも夏場に子どもに流行する感染症ですが大人にも感染するリスクがあります。
症状も似ており、ヘルパンギーナと手足口病の違いについてわかりにくい部分もあります。
今回は、ヘルパンギーナと手足口病の違いをどのように見分けるか、症状やウイルスの違いについて詳しく解説していきます。
まとめ
ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもウイルスに対する治療方法が確立されていませんが、自然に治る感染症です。
飛沫感染や接触感染で感染が広がるため、流行する季節は、咳やくしゃみ、鼻水や唾液がついた手をきれいに保ち、子どもを感染から守るためにも手洗いやうがいの習慣をつけさせることが大切です。
外出先から家に帰ってきたときやごはんを食べるとき、トイレのあと、鼻をかんだあとなど手が汚れるタイミングで家族が声をかけて手洗いを促すようにしましょう。
- ヘルパンギーナと手足口病の違い…どうやって見分ける?
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