喫煙は肺の「自己修復」を阻害している可能性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)につながる

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

たばこの煙には、肺の「自己修復」を阻害する効果があるようです。

結果として、呼吸に障害を起こす「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)につながります。

ドイツ、ヘルムホルツセンタ・ミュンヘンの研究グループが、呼吸器分野の有力医学誌であるアメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケア・メディシン誌オンライン版で2017年2月28日に発表しました。

呼吸に障害起こす「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)

COPDは、たばこを主な原因として起こる肺の病気です。肺の機能が低下し、咳、気管支炎、呼吸困難といった典型的な症状を起こします。呼吸に障害を起こし、命にも関わります。

研究グループによると、正確な数字は乏しいものの、ドイツの40歳以上の成人においては10%から12%がこの病気に苦しんでいるようです。ドイツの経済にとって毎年60億ユーロ、日本円では約7000億円の負担となっています。

世界中の研究者が、この病気の進行の仕組みから、どのような手法によって改善できるかを突き止めようとしています。

進行を止める手法には、肺の自然な自己修復があり、COPDではこれが機能しなくなっています。

COPDは自己修復が止まっている

研究グループによると、健康な人では「WNT/βカテニンシグナル伝達経路」と呼ばれる仕組みが機能しており、このおかげで肺は正常な状態が保たれています。

従来、COPD患者においてこの仕組みがうまく働いておらず、その原因が分かっていませんでした。

研究グループは、数年間にわたり研究に取り組んだ結果、「Frizzled-4」という肺の表面にある受容体の分子に重要な役割があることを発見しました。このFrizzled-4が、WNT/βカテニンという物質の働きを通して肺の自己修復を調節するというものです。

研究グループは、喫煙しているCOPD患者の肺組織で、非喫煙者と比べるとFrizzled-4が著しく減少していると確認。さらに、Frizzled-4の働きが阻害されるとWNT/β-カテニンが減少し、創傷の治癒や修復の能力も落ちてしまうと突き止めました。

喫煙をしていると、このFrizzled-4が肺の表面から消えてしまいます。結果として、たばこの煙を吸っていると、肺の自己修復は効かなくなってしまいます。

肺の重要なたんぱく質も失われる

さらに、このFrizzled-4という受容体がないと、患者の呼吸を可能にする肺組織の構造体(エラスチン、フィブリン、IGF1など)や肺の弾性にとって重要な特定のたんぱく質が失われてしまうことも分かりました。

逆に、Frizzled-4を増やしたところ停止していた自己修復のプロセスが再活性化し、減少していたたんぱく質の産生も元に戻りました。

COPDの新しい治療法につながってくるかもしれません。

参考文献

https://www.helmholtz-muenchen.de/aktuelles/uebersicht/pressemitteilungnews/article/38006/index.html

http://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1164/rccm.201605-0904OC

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板東浩