子供の間でも多剤耐性菌による感染症が急増、「腸内細菌科菌群」によるものが8年間で7倍に

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

全米48カ所の小児病院に入院した子供(18歳未満)の腸内細菌科菌群による感染症のデータによると、複数の抗菌薬に抵抗性を示す感染がこの8年間で7倍に増加していると分かりました。

米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部を含む研究グループが、米国小児感染症学会(PIDS)の機関誌Journal of the Pediatric Infectious Diseases Societyで2017年2月22日に報告しました。

「腸内細菌科菌群」は、いわゆる「腸内細菌」とは別

「腸内細菌科菌群」は、その名前から混同しがちですが、いわゆる「腸内細菌」とは別の分類です。

腸内細菌科菌群には、大腸菌やサルモネラ菌、赤痢菌など、腸内に生息するもの(すなわち「腸内細菌」)もありますが、ペスト菌や肺炎桿菌など他の部位で感染症を起こすものも含まれます。大部分は非病原性で、腸内細菌のうち、腸内細菌科菌群は1%未満となっています。

子供を対象に入院や死亡との関係まで調べる

今回の報告によると、最近では、複数の抗菌薬に抵抗性の(多剤耐性)腸内細菌科菌群による疾患が世界的に増えていいますが、子供を対象とする大規模研究はごくわずかしか存在しないようです。

研究グループはこのたび、全米48カ所の小児病院を含むデータベースを用いて、2007~15年に腸内細菌科菌群による感染症と診断された0~18歳の子供のデータを分析し、多剤耐性菌の割合や入院期間および死亡との関連性を調べました。

院内感染は4分の1

研究対象期間全体で10万件以上の腸内細菌科菌群感染症の診断があり、そのうち多剤耐性菌感染症は724件(0.7%)で、2007年の0.2%から2015年には1.5%と、約7倍の増加でした。

多剤耐性菌感染症の約4分の1(23%)が院内感染で、残りは入院時に既に感染しており、地域社会での感染増加が示唆されます。

年齢が高いほど、また他の病気があると、多剤耐性菌感染症になるリスクは高くなり、多剤耐性菌感染症になると入院期間が20%長くなりました。

死亡リスクも増加傾向が見られましたが、統計的に有意な差異ではありませんでした。

減らしていく対策が必要に

子供用の抗菌薬は開発が進んでいないこともあり、多剤耐性菌感染症の増加を防いだり、逆に減らしていく対策が強く望まれるようです。

日本でも警戒が必要になりそうです。

参考文献

Antibiotic Resistance: A Burgeoning Problem for Kids Too – School of Medicine – Case Western Reserve University

Antibiotic resistance: A burgeoning problem for kids too | EurekAlert! Science News

Incidence and Outcomes of Infections Caused by Multidrug-Resistant Enterobacteriaceae in Children, 2007–2015 | Journal of the Pediatric Infectious Diseases Society | Oxford Academic

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板東浩