脳腫瘍の手術を短くする新技術、レーザー光を使って手術室内の検査を実現

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

脳腫瘍の手術時間を短縮する可能性のある新技術が開発されたようです。

米国ミシガン大学医科大学院を含む研究グループが、ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング誌で2017年2月6日に報告しました。有力科学誌ネイチャーの関連誌として2017年に創刊された、医学と工学を融合した「医用生体工学」分野の専門誌です。

 

専門ラボでの30分ほどの検査が問題

脳腫瘍の手術では、手術中に取り出した組織がどのような細胞を含むか検査が必要です。

従来、脳腫瘍の手術中に行う迅速組織病理学検査は、専門ラボに組織を送って「染色」といった処理をして診断しなければならず、医師や手術チームは手術中に30分ほど待たなければなりませんでした。

研究グループは、「誘導ラマン散乱」(SRS)顕微法と呼ばれる2008年に開発された技術を利用して、この課題を乗り越えられるかを検証しています。この方法では、レーザー光で染色や標識付けをせずに組織の構造などを迅速に可視化できます。

ただし、危険なレーザー光を使用するために手術室での使用に向きませんでした。

研究グループは今回、ファイバーレーザーを用いたポータブルSRS顕微鏡、現行の染色法と同様の画像を作ることのできるコンピューター画像処理方法(「SRH」と呼ばれる)を開発し、初めて手術室で使用しました。

 

患者101人の組織標本で比較

今回、研究グループは、神経手術を受ける患者101人の組織標本を用い、従来の方法とSRSで画像を作成して、比較しました。

この結果、どちらの方法でも正確な結果が出るが、SRSの方がはるかに速いことが分かりました。

さらに、従来の方法とSRSで30標本の画像を作成し、患者の情報と共に複数の神経病理学者に見せて診断してもらったところ、どちらの方法でも結果は正確でほぼ完全に一致しました。

 

組織をそのまま見ることができる 

しかも、従来の方法では冷凍や薄片化などで細胞が破壊されることもありました。その点、新しい方法では、組織をそのまま使用できるため、より正確な可視化が期待できるようです。

さらに、専門の神経病理学者のいない小規模病院でも、コンピューターを利用することで遠隔診断ができるようになる可能性もあります。

研究グループは、さらにSRHの精度を高めつつ、大規模な臨床試験を目指すと説明しています。

脳腫瘍の手術中、手術室内での組織検査・診断を可能にする新技術、ファイバーレーザーを用いた「誘導ラマン散乱(SRS)」顕微法と新たな画像処理方法が開発され、従来の方法と同等の正確さが証明されました。

 

脳腫瘍の手術時間を短縮できる可能性があります。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

New technique slashes diagnosis time during brain surgery | Michigan Medicine

 

New technique slashes diagnosis time during brain surgery | EurekAlert! Science News

 

Rapid intraoperative histology of unprocessed surgical specimens via fibre-laser-based stimulated Raman scattering microscopy : Nature Biomedical Engineering

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板東浩