結核の薬が自閉症の治療に有効かもしれない。

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

ネズミの実験で、結核の治療に用いられる薬「d-サイクロセリン」が自閉症スペクトラム障害の新たな治療薬になる可能性があると分かりました。

米国ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院を含む研究グループが、米国生物学的精神医学会(SOBP)の機関誌バイオロジカル・サイカイアトリー誌2017年2月1日号で報告しました。

 

不登校など社会的障害と遺伝子の関係

自閉症スペクトラム障害で見られる不登校や拒食などの問題は、神経接続の異常に起因すると考えられていますが、分子レベルでは解明されていませんでした。

最近の遺伝子研究では、脳領域、扁桃体に多く発現している「PCDH10」という遺伝子が、不登校や拒食などの行動に関係している可能性があるそうです。

しかし、この遺伝子が不登校などの社会性障害や扁桃体の神経接続にどのような役割を果たしているのかは不明です。

研究グループは、遺伝子操作によりPCDH10の機能が低下しているマウスで、扁桃体の神経を調べました。

 

雄ネズミで影響が顕著

調査の結果、神経伝達物質を受け取る「NMDA型グルタミン酸受容体」というたんぱく質のサブユニット(タンパク質を構成する、ひとかたまりのアミノ酸のつながり)が減少していることが分かりました。

これは神経回路の接続不良を表しています。

さらに、このPCDH10の機能が低下しているネズミは社会性障害を示し、PCDH10が社会的行動で役割を果たしていることが確認されました。

また、その中でも雄ネズミは雌ネズミに比べて、社会的行動に大きな影響を受け、人間の男性に自閉症スペクトラム障害が多いことと一致しました。

 

結核の治療薬で障害が改善

次に、NMDAグルタミン酸受容体の機能を増強することが分かっている抗生物質、d-サイクロセリンをネズミに投与したところ、社会性障害が改善しました。

d-サイクロセリンは、抗菌薬として結核や尿路感染症の治療に処方されますが、以前の諸研究で不安障害の治療に有効である可能性が分かっていました。

 

研究グループは、この薬を自閉症スペクトラム障害の治療に使用する上で安全性と有効性を確立するには、動物と人間でさらに研究を重ねる必要があると述べています。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

A Common Medication Restores Social Deficits in Autism Mouse Model

 

Sociability Deficits and Altered Amygdala Circuits in Mice Lacking Pcdh10, an Autism Associated Gene. – PubMed – NCBI

 

http://www.biologicalpsychiatryjournal.com/article/S0006-3223(16)32474-X/abstract

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