血糖値を下げる「インスリン」の効果を高める工夫を探る。コンピューターのシミュレーションで最適な方法を検討

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンの前駆体(複合体)に工夫をすることで、インスリンの働きを高めることが可能です。このたびコンピューターによるシミュレーションで最適な改良を突き止められそうだと分かりました。

 

複数でまとまる形から分解されて効果発揮

スイス、米国、オーストラリアの研究者らとともにスイス・バーゼル大学の研究グループが、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー誌で2016年11月14日に発表しました。

インスリンは、細胞に信号を渡すことによって血糖値を調節する小さなたんぱく質です。

体内では、インスリンは2つの形態で存在しています。貯蔵されて機能しない時は、複数でまとまった「複合体」として存在し、インスリンの前駆体という位置づけになります。

実際に機能するには、単一のインスリンに分かれる必要があります。

貯蔵された形態のときには、インスリンはヘキソマー(6量体)と呼ばれる6つの同一分子がまとまっており、亜鉛が結合した複合体として存在します。

そこから単一の分子、モノマー(1量体)に分かれると、血糖値の調節機能を示すようになります。

体が血糖値を調節するためにインスリンを必要とすると、ヘキソマーはモノマーに分解され、続いてこのインスリン分子は、細胞の表面上にあるインスリン受容体として知られる相手の分子に結合します。この結合がインスリンから細胞内へ信号を渡すことになります。

糖尿病は、インスリン産生が障害または体が正しくそれを使用できないときに発生する疾患です。

糖尿病の治療を改善するために、この分解過程をコントロールする方法に関する研究が長期間にわたり続けられてきました。

 

コンピューターでシミュレーション

今回、研究グループはコンピューターを使って、複合体から単一分子への分解に変化を起こし、効果を高めようと研究を進めました。

研究グループによると、さまざまな病気と闘う新しい方法が開発されていますが、その中にコンピューターを使用するたんぱく質工学があります。代表的な応用事例は、インフルエンザウイルスに対抗するための創薬です。これと同様に、研究グループは、生来のインスリン複合体の分子構造の一つ一つの原子を置き換えたさまざまなインスリン類縁化合物をコンピューターシミュレーションで作りました。その上で、薬の特性を調べています。

 

水素原子をヨウ素原子に置き換えることに意味

結果として、インスリン前駆体(複合体)の一つの水素原子をヨウ素原子に置き換えた類縁化合物は、利用可能な形態のインスリンへの分解と放出を加速させることができました。

研究グループによると、ヨウ素への置き換えのほかにも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などハロゲンと呼ばれる仲間に入る原子への置き換えが有効である可能性があるようです。

 

今後、薬の機能を高める手法が、コンピューターを使った方法で広がっていくのかもしれません。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Extending Halogen-Based Medicinal Chemistry to Proteins: Iodo-Insulin as a Case Study

 

Chemically Modified Insulin Is Available More Quickly | University of Basel

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板東浩