糖尿病薬「メトホルミン」ががんを抑制する仕組みを解明、たんぱく質「GIV」が上皮細胞を維持する酵素AMPKの作用に必須

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

糖尿病の薬で、1970年代から使われてきた「メトホルミン」に、がんを抑える効果があると分かってきましたが、その仕組みの一端が判明したようです。

<編集部註>わが国で使われている抗糖尿病薬の中で、メトホルモンは多く使われ知られる薬の1つです。商品名としては、メトグルコ、メルビン、グリコランなど。

 

体の表面などに存在する「上皮細胞」に注目

米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループが、生命科学分野のオープンアクセス誌イーライフ(eLIFE)誌で2016年11月4日に報告したものです。

上皮細胞は人体を形成する主な4つの組織(上皮組織、筋組織、神経組織、結合組織)の一つを形成し、様々な管腔や体腔や器官の内表面及び体表面を覆っています。

ほぼ全ての細胞には、それぞれの機能を行うために内部構造や形態を非対称的に配置する「極性」と呼ばれる特性があります。

上皮細胞の場合は、毒素や病原体、炎症誘発要因などに対してバリアーを形成するために、この「極性」(即ちどう並ぶかという「方向性」)が必要となります。

研究グループは、この極性の変化から、メトホルミンの影響を調べています。

 

バリアーが壊れる場合

上皮細胞は極性が失われるとバリアーが壊れ、器官の障害や腫瘍発生につながります。

10年ほど前に発表された、上皮細胞に関するいくつか研究により、上皮細胞がストレスを受け取った場合にのみ作動する「ストレス極性」経路と呼ばれる仕組みが発見されています。さらに、この仕組みを活性化する酵素としてAMPKという酵素も分かりました。腫瘍抑制分子とされる酵素LKB1によって作られるものです。

この詳細は今まで明らかではなかったのですが、LKB1-AMPK経路を活性化するメトホルミンが、上皮細胞バリアーを保護して、腫瘍抑制にも有益であることが分かってきました。

 

腫瘍抑制作用に必要な要素

研究グループはこのたび、メトホルミンの腫瘍抑制作用とLKB1-AMPK経路を詳しく調べ、ここが働くためには「GIV」(別名Girdin)と呼ばれるたんぱく質が必要であると発見しました。

上皮細胞の培養実験で、AMPKとここに効くメトホルミンは、GIVに「リン酸化」と呼ばれる変化を起こして、上皮細胞に「密着結合」を引き起こして効果を発揮していると分かりました。

 

腫瘍増える「GIVの変異」

一方で、GIVのリン酸化がない場合には、上皮細胞のバリアーは「漏れやすく」なってしまい、最終的には崩壊しました。

大腸がんにおいてはGIVの変異がみられて、このために腫瘍細胞の増殖を誘発していると分かりました。AMPKによるリン酸化の働きがうまくいかなくなるためでした。

 

ごく一般的な糖尿病の薬にがんへの効果があるという根拠が一つ増えたことになるようです。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Protein That Protects During Stress Sheds Light on How Diabetes Drug Prevents Tumors

 

AMP-activated protein kinase fortifies epithelial tight junctions during energetic stress via its effector GIV/Girdin. – PubMed – NCBI

 

AMP-activated protein kinase fortifies epithelial tight junctions during energetic stress via its effector GIV/Girdin | eLife

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板東浩