なぜ心臓内に血液が充満するのか?「液圧力」に注目すると、心不全の新治療へ

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

心臓の内部を満たす血液は、自動車の油圧ブレーキと同じく、「液圧力」という圧力の働きで満たされているという発見が報告されています。

この仕組みは心不全の治療に新しい道を開く可能性があるようです。

スウェーデン、カロリンスカ研究所の研究グループが、サイエンティフィック・リポーツ誌オンライン版で2017年3月3日に発表しました。

 

心臓が拡張したときに血液が流れ込む

心臓が鼓動を打つときに、心臓は収縮したり、拡張したりします。

心臓が拡張したときに、心臓の中へと血液は流れ込みます。この流入がどのようなメカニズムで起こるのかはあまり分かっていなかったようです。

従来の研究から、心臓の心筋細胞にある「タイチン」というたんぱく質が、バネのように心臓の弾力を生み出していると知られていました。

さらに、今回、液圧力という圧力が大切だと分かりました。

 

小さな「心房」が重要

今回の報告によると、液圧力とは、ある範囲に液体がかける圧力のことです。自動車のブレーキやジャッキに組み込まれている油圧ポンプの原理と共通しています。

研究グループは、心臓の内部の「心房」と「心室」の大きさの違いのために、液圧力が高まって、心臓の内部が血液で満たされると確認しました。

血液が心臓に流れ込むとき、まず小さな心房という空間に入り、そこからより大きな心室に流れ込みます。心房が小さいところが重要で、心房と心室の大きさのちょうど良いバランスから血液は流れ込んでいると見られました。

研究グループは、健康な人を対象として、心臓が拡張するときの心房と心室のサイズを「心臓血管磁気共鳴」(CMR)という方法で画像を撮影して検証。心臓の内部が充満していくときに、心房のちょうどよい程度で小さく変化していると確認しました。

 

治療に応用できる可能性も

研究グループは、「単純で分かりきったことに思えるかもしれませんが、心臓の充満における液圧力の影響は見落とされています」と説明。

心不全の治療として、心房のサイズを小さくする手法が可能となると想定します。

研究グループによると、心不全では、心臓が拡張するときに問題があるケースが多いと紹介しています。心房の拡張によりうまく血液を取り込めないためです。そうした場合に、心房を小さくすれば、うまく心臓が働く可能性があります。

液圧力の観点から新しい治療が生まれてくるかもしれません。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Hydraulic forces help to fill the heart | EurekAlert! Science News

 

Hydraulic forces help to fill the heart | News | News | Karolinska Institutet

 

Hydraulic forces contribute to left ventricular diastolic filling : Scientific Reports

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板東浩