「ニコチン」は脳の老化を防ぐ可能性がある?たばこを推奨するわけではないが、脳内の神経変性の防止につながる側面も確認

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板東浩

監修

1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

米国の研究グループの報告によると、ネズミを使った実験で、高い用量の「ニコチン」(中程度の喫煙者に相当)が餌の摂取量と体重を低減する効果のほか、脳内の神経変性を防止するような変化をもたらすと分かりました。

たばこを推奨するものではないものの、ニコチンの有効利用の可能性が出てくるのかもしれません。

米国テキサスA&M大学の研究グループが、主に生体異物の有害影響に関する科学誌オープン・アクセス・ジャーナル・オブ・トキシコロジー誌2015年11月号で報告しているものです。

 

不安感に及ぼす影響も評価

タバコ製品が健康に有害であることは有名です。

その成分であるニコチン自体は、「ニコチン性アセチルコリン受容体」(nAChR)と呼ばれる部分と結合し活性化する作用があります。この部分は、脳内で神経変性を低減することが判明している情報伝達物質です。

このため、ニコチンには認知機能に有益な効果をもたらす可能性があると、以前の動物と人間の実験で証明されています。

しかしこの仕組みはまだ不明であり、またニコチンは中毒性があるため、医薬品への利用には懸念があるようです。

 

ニコチンの効果 

そこで今回研究グループは、ネズミを使ってさまざまな使用料のニコチンが「食欲」「体重」{脳内nAChRレベル」に及ぼす影響を調べました。

また、ニコチンは不安感を低減するという意見と、増強するという2つの意見があるため、不安感に及ぼす影響も調べました。

 

皮質と海馬でnAChRレベル増加

研究グループの報告によると飲み水に低、中、高用量のニコチンを加えて23日間投与する3つのグループ、違いを計測するためにニコチンを加えないネズミのグループに分けて比較しました。

その結果、低、中用量のグループは一定した血中ニコチン量が認められず、餌の摂取量、体重、脳内nAChRレベルにも変化が見られないと分かりました。

しかし高用量のグループは、一定した血中ニコチン量が認められ、餌の摂取量と体重が減少し、脳の皮質と海馬でnAChRレベル増加が見られました。

さらに、オープンフィールド試験(広く明るい空間にネズミを入れて、動きを評価する検査)では、対照グループに比べて不安行動の減少が確認されました。

研究グループは今後、高齢のネズミで神経変性に及ぼすニコチンの影響を調べると共に、ニコチンの食欲/体重低減効果が脳の老化を遅らせるかも検討する予定と報告しています。

 

奨励するわけではない

報告によると、今回の結果がたばこなどのニコチン製品の使用を奨励するものでは決してないと、研究グループは強調しています。

研究グループは喫煙によるニコチンの利益がもしあるとしてもそれでは相殺できない大きな健康被害をもたらすと伝えています。

現在の研究結果だけでは、たばこの健康への悪影響を払しょくできるものではありません。たばこの吸いすぎは気を付けた方が良さそうです。

 

参考文献

Can Nicotine Protect An Aging Brain? | Texas A&M Today

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板東浩