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ボスザルは、免疫系遺伝子が強い?社会経済的レベルが免疫系と炎症反応に影響を及ぼす可能性。

ボスザルは、免疫系遺伝子が強い?社会経済的レベルが免疫系と炎症反応に影響を及ぼす可能性。

サルは集団生活を行う上で、リーダーを中心とした序列(ランク)を構成することで知られています。

アカゲザルの集団による研究で、社会的地位の上下が免疫系遺伝子の発現に差を生むことが明らかになり、サルの序列と免疫系、炎症反応に影響を及ぼす可能性があると分かりました。

米国デューク大学を含む研究グループが、米国科学振興協会(AAAS)が発行する有力科学誌サイエンス誌2016年11月25日号で報告しました。

社会経済的レベルで寿命に差

米国では生活が貧しい人は心臓病や糖尿病になりやすく、生活が豊かな人と貧しい人では寿命に10年以上の開きがあるそうです。

その理由として、受けられる医療の差や、運動、食事、喫煙などの生活習慣の違いが作用しているのはもちろんですが、困難な生活による慢性的なストレスが免疫系の機能に悪影響を及ぼしているのではないか、とも言われています。

サルの集団内序列を利用して観察

研究グループは、米国、エモリー大学ヤーキス霊長類研究所のアカゲザルを使って、集団内の序列による免疫系機能の違いを調べました。

具体的には、血縁関係がなく、互いを一度も認識していない雌のアカゲザル45頭を1頭ずつ加えていって集団を作り、相互関係を観察しました。

そして、アカゲザルは自然に、最初にいたサルがトップを取り、最後に加わる者が最下位になるという社会的序列を形成しました。

序列によって免疫系遺伝子の発現に違い

研究グループは、集団内に序列が形成された後、それぞれのサルから免疫細胞を抽出し、およそ9,000個の遺伝子の活性を調べました。

調査の結果、およそ1,600個の免疫細胞遺伝子が上位と下位のアカゲザルで異なり、細菌の感染の際に真っ先に防御反応を示す「リンパ球」「ナチュラルキラー(細胞傷害性)細胞」で違いが見られました。

社会的地位の向上が免疫系に変化

次に研究グループは、最初にいたサルがトップを取るという序列のしきたりを用いて、さらにグループを9つに分け、以前は下位にいたサルが上位になるようにしました。

そして、9つのグループ分けで上位になったサルの血液を調べたところ、遺伝子の発現パターンが、最初のグループで上位のサルと似た傾向になっていきました。

つまり、免疫系の差は固定されるものではなく、社会的地位の変化によって変わる可能性があります。

上位の雌は、他の雌からグルーミングを受ける機会が増えることで、ストレスが緩和されているようです。

下位の免疫系が過剰な炎症反応

興味深いことに、上位と下位のアカゲザルの免疫系は、病原体に遭遇した場合に特に顕著な違いが現れ、それぞれのサルの白血球に細菌毒素を加えると、下位のアカゲザルは炎症促進遺伝子が猛烈に活動を始めました。

この過剰反応は、生活の貧しい人に炎症性疾患が多いことの根拠につながる可能性があります。

今回の結果が人間にも当てはまるとすれば、社会的支援の向上といった介入により個人の経済状況を改善することは、健康にとって重要であると研究グループは述べています。

参考文献

Upward Mobility Boosts Immunity in Monkeys | Duke Today

Social status alters immune regulation and response to infection in macaques. - PubMed - NCBI

Social status alters immune regulation and response to infection in macaques | Science

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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