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アレルギーや喘息など自己免疫疾患の新しい治療法開発の可能性。がん治療の際に標的とされるPD-1の応用

アレルギーや喘息など自己免疫疾患の新しい治療法開発の可能性。がん治療の際に標的とされるPD-1の応用

がん細胞のDNAを調査する研究から

近年、がん細胞のDNAを解析して、そのDNAの活動を阻害することでがん治療を行う手法が注目されています。

個人の特徴に合わせて最適な治療を進めていく「プレシジョン・メディシン」という医療の考え方に沿うものです。

このたび細胞の分子構成を調べるためのツールを使用して、「PD-1」という一部のがんの分子標的を調べることで、喘息(ぜんそく)やその他の自己免疫疾患に対しての標的をより確実に見定めることが可能になるかもしれません。

米国ウェルカムトラストサンガー研究所の研究グループがネイチャー誌オンライン版で2016年9月29日に発表しました。

自己免疫疾患には「ILC2細胞」(Innate lymphoid cells, ILCs)が関係する

自己免疫疾患は、免疫細胞が細菌などに反応し、炎症が引き起こされた際に免疫システムが間違えて健康な細胞や組織を攻撃してしまうことで起こります。また、免疫システムの活動が過剰になったりして生じます。

免疫システムが健康な細胞や組織を攻撃すると、気道が腫れたり、炎症を起こしたりする喘息などの自己免疫疾患やアレルギーに至ります。

今回の研究において、研究グループは「自然リンパ球」(ILC細胞)と呼ばれる最近発見された細胞群を調べました。

この細胞群の中には、細菌感染やアレルギーに反応するILC2細胞と呼ばれるサブグループがあり、細菌や花粉が侵入すると、このILC2細胞の量が急増と分かっています。

がん治療の標的PD-1を応用した喘息の治療

がん細胞が免疫を担っている「T細胞」からの攻撃をかわす仕組みに、T細胞の発現するPD-1という物質へ結合してT細胞の働きを抑えるというものがあります。

PD-1は一部のがん治療のための標的として既に知られています。

今回、研究グループは、このILC2細胞の表面にPD-1が高いレベルで表れている現象を発見しました。

研究グループによると、このILC2細胞上のPD-1を標的にすると、この喘息をはじめとした自己免疫疾患の治療につながると見ています。免疫抗体を結合させて過剰になったILC2細胞の活動を低下させられる可能性があるからです。

喘息などの自己免疫疾患の治療が前進するか注目されます。

参考文献

New drug target for asthma

http://www.sanger.ac.uk/news/view/new-drug-target-asthma

 

Single-cell RNA-seq identifies a PD-1hi ILC progenitor and defines its developmental pathway

http://www.nature.com/nature/journal/vaap/ncurrent/full/nature20105.html

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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