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15~19歳でがん診断を受けた人は、心臓病での死亡リスクが4.2倍高い

15~19歳でがん診断を受けた人は、心臓病での死亡リスクが4.2倍高い

「がん」と診断を受けた15歳~39歳の心臓病による死亡リスクを調査した結果、15歳~19歳でがんと診断された人は、同年代の健康な人に比べて心臓病での死亡リスクが4.2倍高いと分かりました。

イギリスのバーミンガム大学の研究グループが、サーキュレーション誌で2016年11月7日に報告しました。

 

がんの診断年齢と心疾患による死亡リスク

がんと診断され、抗がん剤による治療を受けた人は、心臓の筋肉が弱くなるなどの健康リスクがあります。

研究グループは、「若者のがん生存者研究」(TYACSS)に登録されている、がんと診断を受けた15歳~39歳の20万人以上のデータを調査しました。

調査の結果、登録されている死亡者の6%が心臓病によるものでした。

また、15歳~19歳でがんの診断を受けた人は、同性・年齢の健常人と比べて

心臓病で死亡するリスクは4.2倍高いと分かりました。

また、35歳~39歳では、1.2倍高いという結果でした。

 

若い年齢でがん治療を受けると、心臓に大きな負担がかかる

研究グループの調査では、それぞれのがんの中で診断年齢による死亡率の差が見られており、悪性リンパ種の一種「ホジキンリンパ腫」という病気を15歳~19歳で診断を受けた人の6.9%が55歳までに心臓病で死亡していると分かりました。

また、35歳~39歳で診断を受けた人の場合は2%という結果でした。

さらに、ホジキンリンパ腫と診断された60歳以上の人は、がんではない人に比べて心臓病による死亡率が約28%高いと分かりました。

研究グループは、若い年齢でがんと診断されると抗がん剤治療などで、心臓や血管に大きな負担がかかっている可能性があると報告しています。

 

がん患者の負担を軽減する治療法を期待したいところです。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Cardiac Mortality Among 200 000 Five-Year Survivors of Cancer Diagnosed at 15 to 39 Years of AgeClinical Perspective | Circulation

 

Cardiac Mortality Among 200 000 Five-Year Survivors of Cancer Diagnosed at 15 to 39 Years of Age: The Teenage and Young Adult Cancer Survivor Study. - PubMed - NCBI

 

Cancer: Age of diagnosis may influence heart disease death risk - Medical News Today

 

Age at cancer diagnosis may affect the risk of death from heart disease | American Heart Association

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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糖尿病薬「メトホルミン」ががんを抑制する仕組みを解明、たんぱく質「GIV」が上皮細胞を維持する酵素AMPKの作用に必須

糖尿病薬「メトホルミン」ががんを抑制する仕組みを解明、たんぱく質「GIV」が上皮細胞を維持する酵素AMPKの作用に必須

糖尿病の薬で、1970年代から使われてきた「メトホルミン」に、がんを抑える効果があると分かってきましたが、その仕組みの一端が判明したようです。

<編集部註>わが国で使われている抗糖尿病薬の中で、メトホルモンは多く使われ知られる薬の1つです。商品名としては、メトグルコ、メルビン、グリコランなど。

 

体の表面などに存在する「上皮細胞」に注目

米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループが、生命科学分野のオープンアクセス誌イーライフ(eLIFE)誌で2016年11月4日に報告したものです。

上皮細胞は人体を形成する主な4つの組織(上皮組織、筋組織、神経組織、結合組織)の一つを形成し、様々な管腔や体腔や器官の内表面及び体表面を覆っています。

ほぼ全ての細胞には、それぞれの機能を行うために内部構造や形態を非対称的に配置する「極性」と呼ばれる特性があります。

上皮細胞の場合は、毒素や病原体、炎症誘発要因などに対してバリアーを形成するために、この「極性」(即ちどう並ぶかという「方向性」)が必要となります。

研究グループは、この極性の変化から、メトホルミンの影響を調べています。

 

バリアーが壊れる場合

上皮細胞は極性が失われるとバリアーが壊れ、器官の障害や腫瘍発生につながります。

10年ほど前に発表された、上皮細胞に関するいくつか研究により、上皮細胞がストレスを受け取った場合にのみ作動する「ストレス極性」経路と呼ばれる仕組みが発見されています。さらに、この仕組みを活性化する酵素としてAMPKという酵素も分かりました。腫瘍抑制分子とされる酵素LKB1によって作られるものです。

この詳細は今まで明らかではなかったのですが、LKB1-AMPK経路を活性化するメトホルミンが、上皮細胞バリアーを保護して、腫瘍抑制にも有益であることが分かってきました。

 

腫瘍抑制作用に必要な要素

研究グループはこのたび、メトホルミンの腫瘍抑制作用とLKB1-AMPK経路を詳しく調べ、ここが働くためには「GIV」(別名Girdin)と呼ばれるたんぱく質が必要であると発見しました。

上皮細胞の培養実験で、AMPKとここに効くメトホルミンは、GIVに「リン酸化」と呼ばれる変化を起こして、上皮細胞に「密着結合」を引き起こして効果を発揮していると分かりました。

 

腫瘍増える「GIVの変異」

一方で、GIVのリン酸化がない場合には、上皮細胞のバリアーは「漏れやすく」なってしまい、最終的には崩壊しました。

大腸がんにおいてはGIVの変異がみられて、このために腫瘍細胞の増殖を誘発していると分かりました。AMPKによるリン酸化の働きがうまくいかなくなるためでした。

 

ごく一般的な糖尿病の薬にがんへの効果があるという根拠が一つ増えたことになるようです。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Protein That Protects During Stress Sheds Light on How Diabetes Drug Prevents Tumors

 

AMP-activated protein kinase fortifies epithelial tight junctions during energetic stress via its effector GIV/Girdin. - PubMed - NCBI

 

AMP-activated protein kinase fortifies epithelial tight junctions during energetic stress via its effector GIV/Girdin | eLife

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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自閉症の一因となる遺伝子の突然変異を発見。自閉症の治療薬の開発に一歩前進

自閉症の一因となる遺伝子の突然変異を発見。自閉症の治療薬の開発に一歩前進

一部の「自閉症」の患者の中に「DIXDC1」という遺伝子に突然変異がある人たちがいると分かりました。

この変異は、神経間の情報を受け渡しする場所である「シナプス」の成長を妨げ、脳の活動を低下させます。

カナダ、マクマスター大学の研究グループが、セル・リポーツ誌で2016年11月8日に報告しました。

 

自閉症の治療法はこれといった方法がない

アメリカでは、自閉症患者が2000年代の初め頃から急上昇し、今や68人に1人の子供に発達障害があると言われています。

自閉症は3歳頃に発病すると言われていますが、生後2、3カ月で自閉症の徴候が出る場合もあります。

また、男子の方が女子の4.5倍多く発病します。

自閉症の治療法には、行動療法や薬物療法が使われていますが、これといった決め手はありません。

研究グループは、自閉症の治療法を新たに開発するため、自閉症と遺伝子の関連性について研究を行いました。

 

遺伝子の突然変異によって脳の活動が低下する

研究の結果、自閉症の患者の一部は、DIXDC1という遺伝子の突然変異によって、脳細胞の神経間で情報を受け渡しするシナプス形成を不能にしてしまい、

脳の活動が低下し、発達や行動の問題につながっていると報告しています。

また、DIXDC1遺伝子の突然変異は、自閉症の人たちの一部に見られるもので、自閉症には他の種類の遺伝子変異も関わっている可能性があると考えられます。

研究グループは、シナプスの成長と活動を修復する薬の開発によって、自閉症治療の鍵になるだろうと報告しています。

 

今後、新たな治療法の開発に期待されます。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

DIXDC1 Phosphorylation and Control of Dendritic Morphology Are Impaired by Rare Genetic Variants.

http://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(16)31467-X?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS221112471631467X%3Fshowall%3Dtrue

 

DIXDC1 Phosphorylation and Control of Dendritic Morphology Are Impaired by Rare Genetic Variants. - PubMed - NCBI

 

McMaster University's Faculty of Health Sciences: Medical School, Physician Training, Nursing, Physiotherapy, Occupational Therapy, Physician Assistant Program, Midwifery, Graduate Medical School, Graduate Health Sciences, patient care

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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なぜ心臓内に血液が充満するのか?「液圧力」に注目すると、心不全の新治療へ

なぜ心臓内に血液が充満するのか?「液圧力」に注目すると、心不全の新治療へ

心臓の内部を満たす血液は、自動車の油圧ブレーキと同じく、「液圧力」という圧力の働きで満たされているという発見が報告されています。

この仕組みは心不全の治療に新しい道を開く可能性があるようです。

スウェーデン、カロリンスカ研究所の研究グループが、サイエンティフィック・リポーツ誌オンライン版で2017年3月3日に発表しました。

 

心臓が拡張したときに血液が流れ込む

心臓が鼓動を打つときに、心臓は収縮したり、拡張したりします。

心臓が拡張したときに、心臓の中へと血液は流れ込みます。この流入がどのようなメカニズムで起こるのかはあまり分かっていなかったようです。

従来の研究から、心臓の心筋細胞にある「タイチン」というたんぱく質が、バネのように心臓の弾力を生み出していると知られていました。

さらに、今回、液圧力という圧力が大切だと分かりました。

 

小さな「心房」が重要

今回の報告によると、液圧力とは、ある範囲に液体がかける圧力のことです。自動車のブレーキやジャッキに組み込まれている油圧ポンプの原理と共通しています。

研究グループは、心臓の内部の「心房」と「心室」の大きさの違いのために、液圧力が高まって、心臓の内部が血液で満たされると確認しました。

血液が心臓に流れ込むとき、まず小さな心房という空間に入り、そこからより大きな心室に流れ込みます。心房が小さいところが重要で、心房と心室の大きさのちょうど良いバランスから血液は流れ込んでいると見られました。

研究グループは、健康な人を対象として、心臓が拡張するときの心房と心室のサイズを「心臓血管磁気共鳴」(CMR)という方法で画像を撮影して検証。心臓の内部が充満していくときに、心房のちょうどよい程度で小さく変化していると確認しました。

 

治療に応用できる可能性も

研究グループは、「単純で分かりきったことに思えるかもしれませんが、心臓の充満における液圧力の影響は見落とされています」と説明。

心不全の治療として、心房のサイズを小さくする手法が可能となると想定します。

研究グループによると、心不全では、心臓が拡張するときに問題があるケースが多いと紹介しています。心房の拡張によりうまく血液を取り込めないためです。そうした場合に、心房を小さくすれば、うまく心臓が働く可能性があります。

液圧力の観点から新しい治療が生まれてくるかもしれません。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Hydraulic forces help to fill the heart | EurekAlert! Science News

 

Hydraulic forces help to fill the heart | News | News | Karolinska Institutet

 

Hydraulic forces contribute to left ventricular diastolic filling : Scientific Reports

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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女性にモルヒネが効きにくい理由、「脳の活動における男女差」痛みと関係か

女性にモルヒネが効きにくい理由、「脳の活動における男女差」痛みと関係か

脳の活動には男女差があり、痛みの処理で差が出てくるようです。

このために女性にはモルヒネが効きにくくなっていると伝えられています。

ジョージア州立大学の研究グループが、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス誌で2月20日に発表しました。

 

女性ではモルヒネが効きにくい

今回の報告によると、女性では「線維筋痛症」や「変形性関節症」のような慢性的な炎症を伴う疼痛を起こす病気の発生率が高いようです。

重くて長引く痛みに対しては、まずモルヒネが使われることが多いのですが、女性では効きにくいことがあります。過去の報告によると、男性並みの効果を発揮するためには2倍を使う必要があるそうです。

 

男性よりも女性で脳内の免疫が活発?

健康な人の場合、「ミクログリア」と呼ばれる細胞が病原体を探索し、排除しています。痛みがない状態では異物と見なされて、取り除くための脳内の自然な免疫細胞が活性化しています。

研究グループは、モルヒネの鎮痛効果の男女差の原因を調べるために、ミクログリアに注目しました。

ラットのオスとメスを調べたところ、脳のミクログリアはメスの方が活発であると発見しました。研究グループは、これにより女性で、慢性的な痛みの症候群が多い可能性があると推測しています。

 

モルヒネの効果を高める手がかりに

その上で、女性でモルヒネのようなオピオイド系の鎮痛薬を使って痛みをやわらげるときに、ミクログリアに働きかける意味がある可能性があると説明しています。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Sex differences in brain activity alter pain therapies | EurekAlert! Science News

 

Sex Differences in Brain Activity Alter Pain Therapies, Georgia State University Neuroscientists Find - News Hub

 

Sex Differences in Microglia Activity within the Periaqueductal Gray of the Rat: A Potential Mechanism Driving the Dimorphic Effects of Morphine | Journal of Neuroscience

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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拒食症になると脳治療後すぐには回復しない、正常になるまで時間が必要

拒食症になると脳治療後すぐには回復しない、正常になるまで時間が必要

拒食症の人の脳を調べたところ、食欲のコントロールに変化が起こるようです。

数週間にわたる治療を受けて、体重の増加に至っても、この変化は続き、再発のリスクにつながると分かりました。

コロラド大学の研究グループが、アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー誌オンライン版で2017年2月24日に報告しました。

 

ドーパミンの反応が強くなる

脳の中では、「ドーパミン」と呼ばれる物質によって報酬系と呼ばれる仕組みが働いています。この神経経路が喜びや快感のような感情に影響しています。

過去の報告によると、拒食症では、このドーパミンが重要な役割を果たしています。動物実験では、食べ物を制限したり、体重が喪失したりすると、ドーパミンの反応が強まることが分かっています。

研究グループは、年齢が15~16歳で、拒食症となっている女性21人、食生活に問題がない同年代の女性21人を対象として脳でのドーパミンの働きについて検査をしました。

 

脳の検査から違いを確認

研究グループは、脳の血流を確認できるfMRIを使って脳の画像を撮影しドーパミンの反応が拒食症の女性で高まっていると確認できました。

この脳の変化が強いほど拒食症の治療は難しくなっていました。回復までは時間を要する可能性があります。

 

 

拒食症を治すには、体重を増やすにとどまらない配慮が要りそうです。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Even after treatment, brains of anorexia nervosa patients not fully recovered | EurekAlert! Science News

 

Even after treatment, brains of anorexia nervosa patients not fully recovered - CU Anschutz Today

 

Association of Elevated Reward Prediction Error Response With Weight Gain in Adolescent Anorexia Nervosa

http://ajp.psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.ajp.2016.16060671

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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アキレス腱の秘密は強力な線維層がカギ

アキレス腱の秘密は強力な線維層がカギ

アキレス腱の強靱さの秘密は、アキレス腱と骨との間にある線維層にあるようです。

ドイツのミュンヘン工科大学の研究グループが、ネイチャー・マテリアルズ誌オンライン版で2017年2月に報告しています。

 

線維の層を発見

歩く、走るなどの全ての動きで重要な役割を果たしているのがアキレス腱です。体が強い負荷に耐えられるのは、かかとの骨とアキレス腱との連結によるものです。

研究グループによると、毎年ドイツでは、約8000件のアキレス腱のケガで治療が行われています。

アキレス腱はかかとの骨とふくらはぎの筋肉をつなぎ、ジャンプなど体重の10倍にもなる負荷がかかっても、身体を支えることができます。

これまではアキレス腱は、直接骨についていると考えられていました。

しかし、今回、研究グループは、アキレス腱と骨との間に存在する層を発見したようです。

アキレス腱と骨の間に移行区域のようなものがあり、ここでアキレス腱が数十の微細な線維組織に分かれているようです。

この微細な線維組織が骨の表面にくっついており、これが相当な耐性につながっていました。

この存在があるおかげで、アキレス腱が骨から分離してしまうより、ケガになる場合が多いようです。

 

負荷のかかる方向に応じて線維は機能

研究グループは、腱のついた豚の骨を使って顕微鏡で画像を撮影。微細な、いくつにも分かれた線維層の可視化に成功しました。

その上で、薄い線維層に腱とは異なる生物学的な成分が含まれていると確認。負荷のかかる方向に応じて、さまざまな線維が機能して、安定化すると確認しています。

 

 

巧妙な仕掛けが体の中にはいろいろと存在しているようです。

(ヘルスキュア編集部)

 

参考文献

Unlocking the secrets of the Achilles’ heel - TUM

 

板東 浩

監修:板東 浩 氏
医学博士 / 内科

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