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狭心症と心筋梗塞

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

狭心症と心筋梗塞とは、どんな病気?

狭心症と心筋梗塞、病気の特徴と違い

狭心症や心筋梗塞は虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)と総称され、ともに動脈の血管が硬くなる「動脈硬化」が原因で心臓への血流が悪くなる病気です。

■狭心症

狭心症は動脈硬化によって心臓の血管が狭くなり、血流が不十分になることで起こります。
血流が悪くなると心臓の酸素や栄養が不足し、胸の痛みや息苦しさを感じます。

狭心症は心筋梗塞の前兆ともいわれ、発作が頻繁に起きたり長引いたりする場合は、心筋梗塞へと進行している可能性があります。

■心筋梗塞

心筋梗塞は動脈硬化によって心臓の血管に血栓ができ、血が通わなくなってしまうことで心筋細胞が壊死していく病気です。
血流が止まってしまうことにより心筋が重度の酸素・栄養不足となるため、強い痛みや圧迫感を感じます。心筋梗塞は発見や治療が遅れてしまうと、死に至る可能性もあります。

狭心症の発作などの前触れもなく突然心筋梗塞を発症することもあるので、日ごろから定期検診を受け、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

【まとめ】

■狭心症

原因:動脈硬化が原因で心臓の血管が狭くなること
特徴:心筋梗塞の前触れ

■心筋梗塞

原因:心臓の血管に血栓ができて血が通わなくなること
特徴:発見や治療が遅れると死に至る可能性も

■共通する要素

・動脈の血管が硬くなる「動脈硬化」が原因で発症する

狭心症と心筋梗塞とは、どんな病気?

狭心症と心筋梗塞の種類

■狭心症の種類

心筋梗塞の前段階といわれる狭心症にはさまざまな種類があり、大きく分けると下記の4種類があります。

① 冠れん縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)

冠動脈が急にけいれんを起こすことで血管が狭くなり、血流が不足することで胸痛(きょうつう)を引き起こす発作です。
安静にしているときにも起こることがあり、安静時狭心症とも呼ばれています。

② 労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)

運動や興奮状態など、心臓への負担が大きくなったときに酸素の供給が間に合わなくなり、胸痛が起こる発作です。
動脈硬化によって血管の内側にコレステロールや脂質がお粥のように溜まり(プラーク)、血液の通り道が狭くなることで痛みを引き起こします。
痛みが出たあと安静にしていれば、数分程度で発作がおさまります。

③ 安定狭心症

狭心症の発作が起きる状況や強さ、持続時間が毎回同じ範囲内におさまっている状態を安定狭心症と呼びます。
心臓に一定以上の負荷がかかったときに胸の痛みが起こり、負担が減ると症状がなくなっていきます。

④ 不安定狭心症

反対に発作の起きる状況や、持続時間が一定していない状態を不安定狭心症と呼びます。
今まで発作の起きなかった運動や安静時にも発作がおこります。
血管の内側にあるプラークの表面が破れやすくなっている、または破れかかっており血栓ができやすい状態です。
血栓が血管を塞いでしまうと心筋梗塞に発展する可能性があり、注意が必要です。

■心筋梗塞の種類

心臓の血管が血栓によって完全に詰まり、心筋が壊死してしまう心筋梗塞には発症時期によって下記の3種類に分類されます。
心筋梗塞は、発症からの時間によって重症度や治療法が異なります。

① 急性心筋梗塞:発症から72時間以内のもの
② 亜急性心筋梗塞(あきゅうせいしんきんこうそく):発症から72時間以上~1ヶ月以内のもの
③ 陳旧性心筋梗塞(ちんきゅうせいかへきしんきんこうそく):発症から1ヶ月以上経過したもの

① 急性心筋梗塞

胸痛などの発作発生から2時間以内に閉塞した血管を再び開通させる「再灌流療法(さいかんりゅうりょうほう)」が必要になります。そうすることで、後遺症などの障害が残りにくいとされています。

② 亜急性心筋梗塞

壊死した心筋組織が線維化しているため症状が安定しているものの、残っている心筋への負担が高くなることから合併症を引き起こしやすくなります。

③ 陳旧性心筋梗塞

陳旧性心筋梗塞の段階になると、心筋の保護と動脈硬化の進展を抑え、次の心筋梗塞の発症を防ぐことが目的として生活習慣の改善が必要となります。

発症しやすい年齢・年代

狭心症や心筋梗塞はともに30代から発症が見られ、男性の平均年齢は62~65歳、女性の平均年齢は70~74歳にかけて患者数が増えていく病気です。
高血圧症や高脂血症などの生活習慣病、過度なストレスによっても発症のリスクが高まります。

また、加齢とともに血管の弾力性が失われ、心筋梗塞の原因となる動脈硬化が促進されます。
日ごろから食生活や運動、飲酒・喫煙の改善、適度に気分転換を図ることによって、健康的な生活を送ることが重要です。

心筋梗塞における死亡率

急性心筋梗塞の場合、病院に搬送される前に14%の患者さんが心停止してしまうといわれています。
急性期の死亡率は6~7%とされるため、発作が起こってからの素早い処置が必要になります。

発作時は迅速に救急車を呼び、心停止してしまったときは心肺蘇生のために心臓マッサージをすることが大切です。
2時間以内に再灌流療法をおこなうことで心筋壊死の範囲を狭め、生存率を上げることにもつながります。

板東浩先生
 【監修医】医学博士 / 内科医: 板東浩 先生
 1957年生まれ。
 1981年 徳島大学を卒業。
 ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
 抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

血清尿酸値

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

血清尿酸値、気にしていますか

近年、食生活の欧米化などのライフスタイルの変化に伴い、血清尿酸値の高い人が増加傾向にあります。
血清尿酸値が高くなると高尿酸血症を発症し、放っておくと関節などに激痛を伴う痛風に進行します。
怖いことに、糖尿病や高血圧症、高脂血症などを合併すると、心筋梗塞や狭心症を招くこともあります。

血清尿酸値は、内科での血液検査、健康診断や人間ドックなどで、測定することができます。
必ず検査して、健康管理に役立てましょう。検査の結果、血清尿酸値が高い場合には、早めに医師に相談しましょう。

血清尿酸値とは

血液の液体成分中(血清)における尿酸の濃度を表したものを血清尿酸値といいます。
尿酸とは、細胞中にある核酸の構成物質であるプリン体が、肝臓で分解されて生じる老廃物です。
プリン体は、細胞の新陳代謝によって核酸から放出されたり、身体を動かすときに使われるエネルギー物質の燃焼によって作られたりします。

また、ほかの動植物にも含まれているため、食品からも体内に取り込まれます。

血清尿酸値が高いと発症する病気、高尿酸血症とは

生活習慣病の一つである高尿酸血症は、現在、日本では潜在患者も含めて約500万人がかかっているといわれています。
その多くは中高年の男性ですが、閉経後の女性にもしばしばみられます。

尿酸は常時体内に1,200㎎蓄積されています。1日に700㎎産生され、同量が尿や汗、便とともに排泄されます。
こうして、体内の尿酸量は一定に保たれています。しかし、尿酸が産生されすぎたり、うまく排泄されなかったりすると、血清中の尿酸の濃度が増し、血清尿酸値が高くなります。

血清尿酸値が7.0㎎/dl(※)以上の場合を高尿酸血症といいます。また、ほとんど症状が現れない場合を無症状性高尿酸血症といいます。
この場合、そのまま放っておくと痛風に進行するため、早めに血清尿酸値を下げる必要があります。

※7.0㎎/dl・・・血液100ml中に尿酸が7㎎溶けている状態

高尿酸血症の発症の原因は

主に、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などによる肥満が原因であるといわれています。
肥満になると、中性脂肪が尿酸の産生を促すため、血清尿酸値が高くなります。

特に、内臓脂肪型肥満の方は要注意です。
体格指数(※)(BMI:Body Mass Index)が25以上である場合や、腹囲が男性で85㎝、女性で90㎝以上の方も注意しましょう。

また、血清尿酸値は、高血圧症や糖尿病などにおける腎臓機能の低下や薬の副作用により高くなります。
女性の場合は、女性ホルモンが尿酸の排泄を促すため、閉経すると排泄が困難になり、血清尿酸値が高くなります。
遺伝や体質という説もありますが、生活習慣に気をつければ発症を防ぐこともできます。

※ 体格指数・・・肥満度を示す指標。体脂肪率と相関しており、国際的に広く利用されている。
日本人の男女においては、体格指数(BMI)22が最も病気になりにくい標準値とされている。

体格指数(BMI)=体重(㎏)÷<身長(m)×身長(m)>

高尿酸血症の発症の原因は

高尿酸血症の3つの型

高尿酸血症は、3つの型に分けられます。型によって治療方針が異なります。

尿酸排泄低下型

産生される尿酸量は正常なのに、腎臓の機能障害のために排泄量が減少している状態。高尿酸血症の約60%を占めます。

尿酸産生過剰型

排泄される尿酸量が変わらないのに、尿酸が過剰に産生されている状態。高尿酸血症の約10%を占めます。

混合型

尿酸が過剰に産生されるとともに、尿酸の排泄が減少している状態。高尿酸血症の約30%を占めます。

高尿酸血症の検査と診断

まず、血液生化学検査で血清尿酸値を調べます。血清尿酸値が7.0㎎/dl以上あると、高尿酸血症と診断されます。
血清尿酸値は、その日に摂取した食品や気温などの影響を受けるため、数回に渡る検査を必要とします。

次に、高尿酸血症の型を診断するための検査を行い、治療方針を決定します。

高尿酸血症の型を診断するための検査

■尿中尿酸排泄量検査
1日に排泄した尿を溜め、尿酸量を測定します。尿酸量が400㎎/dl以下なら尿酸排泄低下型、800㎎/dl以上なら尿酸産生過剰型、その中間なら混合型と診断されます。午前中の空腹時の2~4時間に排泄した尿を溜め、24時間分に換算して測定する場合もあります。

■尿酸クリアランス
尿酸を排泄する腎臓の機能を調べます。検査の1時間前に水を飲み、その1時間後に採血と採尿をし、血清尿酸値と尿中の尿酸濃度を調べます。

■クレアチニン(※1)・クリアランス
血中と尿中のクレアチニン濃度を測定し、腎臓の糸球体(※2)のろ過能力を調べます。

まず、検査の前に水を500ml飲み、1時間後に排尿します。その30分後に採血をして血中のクレアチニン濃度を測定します。
さらにその30分後に採尿をして尿中のクレアチニン濃度を測定します。

これらの結果から、腎臓が1分間に排泄したクレアチニン量を算出します。糸球体のろ過能力の低下や尿の排泄障害などがある場合は、この数値が低くなります。

※1クレアチニン・・・血液中のアミノ酸が使われた後の老廃物
※2糸球体・・・毛細血管という細い血管の網が小さな球体になったもの

治療法は?

高尿酸血症の治療法は、食事療法・運動療法などの生活指導、尿路管理や薬物療法があります。

治療の目安として、コントロール目標となる血清尿酸値を6㎎/dl、正常値の上限を7㎎/dl、治療を開始する基準を8㎎/dlと定めています。
これを「6・7・8のルール」といいます。

血清尿酸値の急激な低下は、症状の悪化や薬の副作用の原因になるため、徐々に下げることが重要です。

生活指導(食事療法・運動療法)

高尿酸血症の治療の基本です。プリン体を多く含む食品やアルコールを控えるなど、1日の総摂取カロリー(※1)を制限します。
また、ウォーキングや水中歩行などの有酸素運動を行い、標準体重(※2)に近づけます。

過度の減量でホルモンバランスを崩したり、激しい運動(無酸素運動)をしてプリン体を発生させたりすると、血清尿酸値が高くなります。
食事療法や運動療法は、必ず医師の指導の下で行いましょう。

※1 総摂取カロリー・・・1日の食事で摂取するカロリーの合計。運動量や年齢、性別によって適切な総摂取カロリーは異なる。適切な総摂取カロリーの目安=標準体重(㎏)×25~30kcal
※2 標準体重・・・健康的な理想体重。最も病気になりにくいとされているBMI標準値を用いて算出する。標準体重(㎏)=22(BMI標準値)×身長(m)×身長(m)

尿路管理

高尿酸血症になると、尿が酸性になりがちです。尿酸は酸性の尿に溶けにくく、結晶を作って腎臓の機能を損なったり、尿路結石(※)を作ったりして、尿の排泄を妨げます。

そのため、尿が酸性にならないように管理します。これを「尿路管理」といいます。
尿の酸性度(pH)は、pH7未満が酸性、pH7が中性、pH7を超えるとアルカリ性になります。

※ 尿路結石・・・尿酸の結晶が固まって結石となり、尿管に流れ出てとどまったもの。結石が動くと粘膜を刺激して、激しい痛みを起こす

尿路管理のポイント

■尿量を増やす
1日に2L以上の水分を摂取し、2L以上の尿を排泄するようにします。
特に、発汗後や就寝前は、水やお茶などの糖分を含まない飲料を十分補給しましょう。

■尿の酸化を防ぐ
バランスのよい食事をすることで、尿の酸化を防ぎます。改善されない場合は、薬物療法の一つである尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を服用します。

薬物療法

血清尿酸値が、生活指導を行っても下がらない場合や、8㎎/dl以上の場合に行われます。
治療を開始してから半年間は副作用が起こりやすいため、定期的に検査を受ける必要があります。
症状が治まったからといって、勝手に服用を止めると、血清尿酸値はすぐに元に戻ります。

医師の指示に従い、用法用量を守って服用しましょう。使用する薬は、高尿酸血症の型によって異なります。
■高尿酸血症の治療で使用する薬
・尿酸排泄低下型の薬
尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロン、ブコローム)を使用します。
血液中の尿酸は、腎臓の糸球体でろ過されますが、尿細管(※1)で再吸収されます。
尿酸排泄促進薬は、尿細管での再吸収を抑制し、多くの尿酸を尿中に排泄します。

副作用として、尿路結石がみられる場合もあるため、尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を併用して予防します。

・尿酸産生過剰型の薬
尿酸生成抑制薬(アロプリノール)を使用します。尿路結石がある場合やその既往歴(※2)がある場合にも使用します。
尿酸生成抑制薬は、プリン体が尿酸に分解されるときに働く酵素を抑制し、尿酸の産生を妨げます。

副作用として、皮疹(※3)や肝機能障害がみられる場合もあります。
腎不全の患者さんは、症状が悪化することがあるため、投与量を調整する必要があります。

・混合型の薬
症状によって、尿酸産生過剰型の薬と尿酸排泄低下型の薬を組み合わせる。

※1尿細管・・・腎臓内にあるうねり曲がった無数の細い管
※2既往歴・・・過去にかかったことのある病気の記録
※3皮疹・・・皮膚に出る発疹

合併しやすい生活習慣病

高尿酸血症は、合併症が怖い病気です。高尿酸血症の患者さんの約80%は、ほかの生活習慣病を合併しており、その根底には内臓脂肪型肥満があるといわれています。
合併症があると、血管を損傷する尿酸の力が強まるため、高尿酸血症と並行して合併症も治療する必要があります。
合併している病気によって治療法が異なりますので、必ず主治医に相談し、それぞれの専門医にかかりましょう。

生活習慣病を合併し動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞、脳血管障害の誘因となることがあります。
そのため、高尿酸血症だけではなく、生活習慣病全般を改善するよう治療していくことが重要です。

また、血清尿酸値をしっかりコントロールすれば、ほかの病気の予防にも役立つといえるでしょう。

高血圧症との合併

高血圧症との合併では、尿酸排泄低下型の高尿酸血症が多くみられます。そのため、尿酸排泄促進薬を使用する場合がほとんどです。

また、高血圧症では酸性尿である場合が多く、尿路結石ができやすいため、尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を併用します。降圧薬を使用しているときに血清尿酸値が増えると、症状が悪化しやすくなります。
そのため、血清尿酸値の低下作用も兼ね備えた降圧薬(ロサルタン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウム拮抗薬、α1遮断薬)を使用する場合もあります。

糖尿病・耐糖能障害との合併

通常、糖尿病では血清尿酸値は低くなります。これは、尿に糖が出ていると、浸透圧の関係で尿が増え、尿酸の排泄が促されるためです。
しかし、糖尿予備群といわれる耐糖能障害(※)や、糖尿病が重症になって腎機能障害を併発した場合は、血清尿酸値は高くなります。

さらに、耐糖能障害と高尿酸血症を合併すると、動脈硬化が進行しやすくなります。
そのため、尿に糖が出ている場合は、血清尿酸値と血糖値の両方の管理が大切です。

※耐糖能障害・・・糖尿病ほどではないが、血糖値が高い場合のこと

高脂血症との合併

高脂血症とは、内臓脂肪型肥満により血中の中性脂肪値が高まった状態をいいます。
中性脂肪は尿酸の産生を促すため、血清尿酸値も高くなります。その相乗効果により、動脈硬化が進行しやすくなります。

また、高脂血症の薬が血清尿酸値に影響を及ぼす場合もあるため、注意する必要があります。
尿酸排泄低下型の高尿酸血症と合併したときに、尿酸の排泄を促す作用を兼ね備えた薬(フェノフィブラート)を使用する場合もあります。

日常生活での注意点

高尿酸血症を含めた生活習慣病全般を改善するために、日常生活でも以下の点に注意しましょう。
■食生活を改善しましょう
適切な摂取エネルギーの範囲内で、1日3食規則正しい食事を心掛けましょう。
野菜や海藻類などのアルカリ性食品を多く取り、プリン体が多く含まれる肉類などの摂取は控えめにしましょう。

■アルコールはほどほどに
アルコールは、尿酸の産生を促し排泄を抑制するので控えましょう。特に、ビールの原料である麦芽は、プリン体を多く含むのでほどほどに。
また、アルコールの飲み過ぎは、中性脂肪を増やすため高脂血症の原因にもなります。

■有酸素運動をコツコツと
肥満防止のために、毎日継続して有酸素運動を行いましょう。
短時間に身体を激しく動かす無酸素運動は、かえって尿酸を増やすので避けましょう。

■ゆっくりと身体を休めて
ストレスや疲労をためないように、リラックスする時間を作り十分な休養を取りましょう。

■水分を十分に補給して
1日に2L以上の尿を排出するよう、水分を十分に取りましょう。
ただし、スポーツドリンクやジュースなどの糖分を含む飲料は避けましょう。

■禁煙を心掛けて
喫煙は、生活習慣病全般の原因であり、血管を収縮させるため動脈硬化の誘因にもなります。禁煙を心掛けましょう。

■定期的な検査を心掛けて
高尿酸血症だけではなく、ほかの生活習慣病を予防するためにも定期的な検査を心掛けましょう。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

膵がん

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

膵(すい)がんの相対生存率、罹患率(りかんりつ)

膵がんの相対生存率について

平成28年1月20日、国立がん研究センターより、がんの部位別施設別5年および10年後の相対生存率が発表されました。この調査において、もっとも相対生存率が低く印象に残ったものは「膵がん」で、4.9%です。

膵がんは症状を自覚した時にはかなり進行した状態であることが多い、難しいがんです。今回はこの膵がんについて紹介いたします。平成26年の厚生労働省の調査によると、全死因の第一位は「悪性新生物」(一般的は“がん”と言われます)で、367,943人(死亡総数に占める割合は28.9%)です。

そのうち膵がんは31,692人(死亡総数に占める割合は2.5%)で、平成25年から1,517人増となっています。つまり、全死亡者の100人に約2人は、膵がんで亡くなっています。ちなみに気管・気管支および肺がんは5.8%、胃がんは3.8%、乳がんは1.0%です。

また、膵がん死亡者を年次推移でみていくと、徐々に増加していることがわかります。2005年の段階では25,000人に満たず、2000年の段階では20,000人以下でした。

現代人が膵がんになりやすいのか?

国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターより「高精度地域がん登録のがん罹患データ」(山形、福井、長崎の3県、1985年~2010年)が公表されています。

これによれば、年齢構成を一定にそろえた年齢調整罹患率の年次推移において、40歳頃を境に膵がんの罹患率が上昇しており、この傾向は年次推移でもほぼ一定です。つまり、時代とともに現代人が膵がんにかかりやすくなっているわけではなく、膵がんを発症する年齢層(40代)が増加しているということです。
また、時代とともに検査の精度が上がってきたことも考慮すべきです。

男性は膵がんにかかりやすい

この罹患率データを男女別で見ていくと、おおよそ全年齢層において女性よりも男性の罹患率が高い状況です。例えば、2010年の50代前半の女性が6.1%であるのに対し、同じ世代の男性では16.1%です。60代前半では、女性が22%であるのに対し、男性は41.6%です。この差は、高齢になればなるほど顕著になります。

【参考】 「がん情報サービスganjoho.jp 統計」国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター

膵がんの症状

早期ではほとんど症状が見られない

膵臓は、十二指腸、胆のう、胃、肝臓などの臓器に囲まれており、膵がんを発症した位置によっては周辺の臓器に浸潤(転移)してしまいます。ところが膵がんの場合の多くは、自覚できる症状が見られません。そのため、症状が出現した頃には多くの場合、膵がんがかなり進行してしまっている状態です。

よく見られる症状

腹痛、食欲不振、消化不良、全身倦怠感、黄疸(おうだん/白目が黄色くなる、尿が濃くなるといった症状)、腰や背中の痛み、体重減少、あるいは糖尿病の発症または急激な悪化といった症状が見られ、膵がんを疑うことになります。これらはがんが発症する位置によって異なります。

膵臓の右側(膵頭部)の場合

膵臓の右側にできた膵がんの場合、大きな症状としては黄疸症状が見られます。(日本人の場合は気づきにくく、医師が気づいた頃にはかなり進行している場合があります。)また半数近くのケースで腹痛、体重減少が見られます。

膵臓の真ん中(膵体部)、左側(膵尾部)の場合

食欲不振、腹痛、背中の痛み、腰痛、体重減少といった症状が見られます。この部分にがんが発症してもなかなか症状が出にくいので、症状が発覚した時点でかなりがんが進行している状態です。
膵臓は胃などの臓器の裏側にあり、多くの神経が集中している背中のすぐ近くに位置しているため、膵がんが進行してくるとすぐに浸潤してしまいます。

また、食欲不振、腹痛など、日常の何気ない症状が見落とされてしまい、どんどんがんが進行してしまう点も膵がんの恐いところです。はっきりとした原因が見当たらないのにこれらの症状が続く場合は膵がんを疑い、医療機関で検査することが大切です。

糖尿病の発症、急激な悪化

膵臓では、膵液およびインスリンなどのホルモンを分泌しています。そのため、糖尿病の要因(急激な体重増加、肥満、過食)がないのに糖尿病を発症したり、すでに治療を進めているのに急激に悪化したりした場合は、膵がんを疑うきっかけとなります。

膵がんの症状

膵がんの主なリスクファクターと予防

前述の通り、膵がんは年齢が高くなるほど発症率が高いがんです。これは膵がんに限ったことではないですが、あらためて危険因子(リスクファクター)を見てみましょう。

膵がんリスクファクター

  • ・喫煙者(ヘビースモーカー)
    膵がんになる確率が2~3倍となります。
    ・大量飲酒および慢性膵炎
    ・遺伝
    近親者にがん発症者がいる場合。
    ・糖尿病患者
    ・膵管内乳頭粘液性腫瘍の患者
    ・肥満
    BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)
    男性では25以上、女性では30を超えると肥満です。この基準値を超えると、正常値内の方に比べて男性の場合は膵がん危険率が1.4倍、女性で1.3倍と言われています。

自己の生活習慣の改善により膵がんになる危険要因を遠ざけるものは、喫煙、飲酒、肥満です。肥満に気をつけた食事と運動、適度な飲酒と喫煙を心がけましょう。
一方で遺伝や糖尿病患者などは、膵がんを意識した定期的な検査を受けることにより、早期の発見につながる可能性があります。

【参考】 日本消化器病学会「膵臓がんが疑われる症状から診断まで」

膵がんだとわかったら

信頼できる医師がいる医療機関を選ぶ

膵がんが疑われた場合、あるいは膵がんであることがわかった場合は、専門医がいる医療機関で受診をしましょう。インターネットや本であらかじめ、個人医院や総合病院の内科や消化器内科など、専門医の有無、専門医の診察可能時間などを情報収集しましょう。

膵がんだとわかると、膵がんであることを告知し、患者に合った治療法の提案がなされます。膵がんは一人ひとりタイプや状態が異なり、それにより治療方法の選択肢も変わってきます。また、医療機関によって治療方針が異なる場合もあります。そして膵がんは5年、10年とつきあっていく可能性がある病気です。

したがって、治療方針についてメリット・デメリットなどをわかりやすく説明してもらえるか、質問することができるか、セカンドオピニオンのための紹介状や資料を用意してもらえるか、今後よいコミュニケーションを築いていけそうかどうかも医療機関選びのポイントになってきます。

膵がんの状態や進行度などを知って治療方針を検討する

膵がんだと疑われたら、種々の画像診断でがんの進行度や悪性度などを把握します(病期診断)。
膵がんは進行度によって治療方針が異なります。がんが膵臓の中にあるのか、周辺の臓器にまで浸潤しているのか、またはリンパ節などを通じて他の臓器に転移(遠隔転移)しているのかなどを診断します。

膵がんの症状は個人によって異なり、医師の治療方針もそれぞれです。医師から治療方針の説明を受けた時に、疑問や不安を抱えている場合は、主治医以外の医師の意見「セカンドオピニオン」を聞くこともできます。その場合は、主治医にその旨を説明し、これまでの検査結果や紹介状といった資料を準備してもらいましょう。

膵がんの治療法

主な治療法としては、「手術療法」、抗ガン剤を使う「化学療法」、ガン細胞に放射線を照射する「放射線療法」の3つがあります。基本的には複数の治療法を組み合わせた治療が行われます。

手術療法(外科治療)

膵がん治療の中では治療できる確率が高いものの、7~8割の患者は手術を決断するころにはがんが進行しており、がん部を含めて膵臓と周辺のリンパ節などを切除することが多いとされています。

化学療法

診断により、手術療法ではがんを取りきれないと診断された場合に行われます。

放射線治療

手術では切除できないがんであると診断された場合に対して行われます。
早期の発見が難しいとは言われていましたが、2013年、アメリカの15歳の少年が膵がんを5分で、しかも安価で発見する画期的方法を開発しました。そのため、今後の検査技術の発展に注目がされています。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

熱中症

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

熱中症とは

熱中症は、身体が高温になり脱水症状が続いていると体温調節機能が破綻し、意識を失う危険性がある症状です。身体が熱いと、身体は体温を調節しようと発汗したり血管を拡張させたりします。しかし、水分を補給せず高温の場所にいると、脱水症状に陥り危険です。

また、その状態に加えて体温調節機能や血液循環機能が低下していき、脳へ血液が回らず、意識を失う可能性があります。

熱中症の予防

予防には、エアコンや扇風機などをうまく取り入れた室温調整、塩分を含んだ水分補給、十分な休息、また日々の体調管理が大切です。

熱中症の症状

熱中症は、熱失神・熱痙攣(ねつけいれん)・熱疲労・熱射病の4つに分かれます。また、比較的軽症である熱失神や熱痙攣はI度、中程度である熱疲労はII度、重症である熱射病はIII度というように、症状の程度によって位置付けられています 。

症状病態
熱失神(Ⅰ度)顔面蒼白、頻脈、めまい、立ちくらみ、生あくび、数秒間の失神、呼吸数の増加血管が広がって血圧が低下し、脳への血流が減少している状態
熱痙攣(Ⅰ度)多量発汗、吐き気、口渇、痛みを伴う痙攣(腹部、手足)など多量の発汗に伴って、筋肉の収縮に必要な血液中の塩分が不足した状態
熱疲労(Ⅱ度)倦怠感、虚脱感、頭痛、嘔吐、血圧低下、多量発汗、高体温(40℃以下) など多量発汗による体重比2%以上の脱水や、血液中の塩分などが不足した状態
熱射病(Ⅲ度)熱失神、熱痙攣、熱疲労の症状全般、臓器の機能障害、意識障害、過呼吸、体温調節機能の障害による高体温(40℃以上) など熱失神、熱痙攣、熱疲労の病態がより進行した状態

熱中症になる危険要因

一般的に熱中症の発症年齢は、乳幼児から高齢者までと幅広く、なかでも高温多湿である夏に発症率が高いと言われています。しかし、熱中症を誘発する要因は高温多湿という環境要因のみでなく、行動要因、衣類要因、不摂生・年齢・体調といった個人の身体要因も関わってきます。
危険要因を知ればおのずと予防策も見えてくるので、自分の状態や生活環境などを振り返ってみましょう。

環境要因

気温が高いことが危険要因であること以外に、湿度や風の有無、屋内の環境も深く関係してきます。湿度が高いと汗の蒸発による身体の冷却効果が低下するので、熱中症を引き起こしやすい環境となります。
また風(自然や扇風機を含む)があることで汗の蒸発が促進されますが、風が弱いあるいは無風状態(閉め切った屋内・屋外を含む)は熱中症の危険要因となります。しかし、身体表面温度を上回るような高温の環境下においては、風が熱を身体に送り込むことになるので、この場合は熱風自体が危険要因となります。
エアコンや扇風機といった家電などを有効活用し、熱中症を予防しましょう。

行動要因

農業を含む屋外での筋肉運動、激しいスポーツにおいて、十分な休憩をとれない、自分のペースで作業できない点が危険要因となります。運動を行えば筋肉から熱が発生します。自分の健康状態に合っていない作業を十分な休憩を取らずに行うと、上昇した体温の回復が間に合わず、熱中症を発症させる危険が高まります。
気温や湿度を鑑み、労働時間や休憩、水分補給のタイミングを調整しましょう。

【参考】 厚生労働省 職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)

行動要因

衣類要因

主に職場での服装の問題となりますが、防護性が高い衣類ほど透湿性・通気性が悪い傾向があります。透湿性・通気性が悪い衣類は保温性・断熱性も高く、身体からの放熱を阻害するため体温上昇を促し、熱中症を誘発します。

このような衣類を着用する職場などにおいては、それを考慮した休憩時間、水分、空調を整えることが必要です。
暑い環境で働く労働者に対して、小さな扇風機が内蔵されているジャンパーが開発され、熱中症に対する効果がみられています。

時間的要因

暑い環境での長時間にわたる行動が熱中症を誘発することは言うまでもありませんが、急激な環境変化における行動にも注意が必要です。人間の身体は周りの環境にある程度は慣らしていくことができますが、慣れていない状態の人が急に暑い環境にさらされると、身体に大きな負荷がかかります。

例えば、梅雨明けからは猛暑日が続くことが多く、気温が急上昇する梅雨明けの頃はとても危険な時期と言えます。

身体要因

50歳を過ぎると暑さに対する体温調整機能が低下し始めます。身体は体温調整力、発汗能力が衰えるだけでなく、暑さへの感度も鈍り、エアコン等で室温を調整しづらい状態になっていきます。実際に65歳以上の高齢者では、男女ともに自宅での発生が一番多い状況です。
近年は一人暮らしの高齢者も多いため、周囲からの声掛けなどの支援が必要となってきます。

また、肥満者は暑さに弱く、普段から運動の習慣が無い場合が多いため、体温調整、心臓循環機能が低下しており、熱中症のリスクが高い傾向にあります。
糖尿病患者は喉が渇きやすく、それが熱中症につながる要因の一つです。水分はたくさん摂っていてもその分尿の量も増えるため、気づかないうちに脱水症状となっていることがあります。

その他、高血圧や心疾患を治療中の場合、降圧利尿剤を服用していると利尿剤で脱水傾向になったり、ナトリウムも排泄されたりするので塩分不足になりがちになります。

応急処置

意識が無い場合は医療機関へ

暑い環境下に長時間居た場合の体調不良は、熱中症であるという点を認識してください。まずは熱中症を疑う症状の有無を確認し、その上で意識がなければ救急車を呼びます。救急車が到着するまでの間に患者を涼しい場所へと移動させ、衣類をゆるめて体を冷やします。

冷やす場所は首、脇の下、太股の付け根を集中的に冷やしてください。医療機関では、分かる範囲で患者本人が倒れた時の状況を冷静に説明しましょう。また、患者に意識があった場合も涼しい場所に移し、衣類をゆるめて体を冷やします。自力で水分および塩分を補給できなければ医療機関へ連れて行ってください。
自力で水分・塩分を補給できれば、回復するまで安静にしましょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

胃炎

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

胃炎とは?

胃の粘膜は、熱いもの、冷たいもの、すっぱいもの、辛いものなどの食事として入ってくる刺激に対して強い抵抗力を持っています。
しかし、ある限界を超えると炎症を起こし、胃炎となります。

胃は、心臓のように24時間活動しているわけではないものの、肝臓や膵臓(すいぞう)などと違って私たちが直接存在を感じることができる臓器です。
また、大きな悲しみや悩みに対して「胃の痛む思いをした」という言い方もあり、胃はストレスにも敏感です。

胃はさまざまな飲み物や食べ物を受け入れるというタフな働きをする反面、喜怒哀楽など、感情の影響を受けやすいデリケートな臓器でもあります。

気温の変化で起こる「秋バテ」とは?

胃の働きと防御の仕組み

胃の働きは、口で噛み砕かれた食物を一時的にたくわえて消化し、栄養を吸収しやすい状態に変え、小腸に送り出すことです。
食物の消化には、胃壁(いへき)から分泌される胃酸が大きな役割を果たしています。

胃酸は非常に強い酸(pH1~2)で、その正体は塩酸です。胃酸は、食物と共に入ってきた細菌や微生物などを死滅させる殺菌の働きもしています。

胃の防御を担う粘膜

胃には、胃酸に消化されない防御の仕組みも備えられています。その防御の仕組みで最も大切な役割を担うのは粘液です。
粘液は、胃壁(いへき)の一番内側にある胃粘膜をおおって胃酸が直接胃壁に触れないようにバリアー機能を果たしています。

また、胃粘膜には少しくらいの傷は自己修復する力がありますが、傷が大きくなりすぎるとその修復力だけでは間に合わなくなり、炎症が進んでしまいます。
胃炎の初期は、胃粘膜がびらん(粘膜の表面がただれている)した状態です。

胃炎が進行すると胃粘膜の修復力が低下するとともに粘液というバリアーが不十分になり、胃酸が直接胃壁に触れ、胃粘膜を消化して胃潰瘍(いかいよう)になってしまいます。

ヘリコバクター・ピロリ菌

胃酸という強力な消化液があるため、長い間、胃は無菌状態と思われていました。しかし、この定説を覆したのがバリー・マーシャルとロビン・ウォーレンという二人のオーストラリアの研究者です。
二人は1982年、胃にヘリコバクター・ピロリという細菌が生息することを発見、胃炎および消化性潰瘍の発生に関係することを発表し、2005年度のノーベル医学賞を受賞しています。マーシャル博士は実際にピロリ菌を飲んで胃炎になることを証明しています。

現在、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍だけでなく、胃癌の発生にも関係していると考えられています。

胃炎の症状はいろいろ

胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があり、症状の現れかたが異なります。

急性胃炎
慢性胃炎
みぞおち付近の痛み、胃が膨らむような不快感、むかつき、嘔吐、吐血、下血などが急激に起こります。主な症状は、空腹時や夜間の胸やけ、食欲不振、食後のむかつき、胃のもたれなどですが、いずれも慢性胃炎に特有なものではなく、胃潰瘍や胃癌でも同様の症状がみられます。しかし、症状が全くみられないこともあります。
原因としては、暴飲暴食(特にアルコール飲料の飲みすぎ)、医薬品(非ステロイド系消炎鎮痛薬など)、化学的毒物、ストレスなどがあります。現在、慢性胃炎の多くは、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が関係していると考えられています。

急性・慢性胃炎の検査と診断

急性胃炎

・急性胃炎の診断

急性胃炎の場合、問診や触診が中心となります。

痛みの程度や痛む場所、また症状がいつから現れたか、何をどのくらい食べたかなどを調べます。
医薬品が原因となっていることも考えられます。普段どんな薬を服用しているか、坐薬(ざやく)も含めて医師に正確に伝えることが重要です。

内視鏡でみると胃粘膜にびらんや腫れ、発赤(ほっせき:毛細血管の一時的な拡張)などが観察できます。

■内視鏡検査

内視鏡(胃カメラ)による観察で胃粘膜の状態を調べるとともに、胃潰瘍や胃癌がないかを確認します。
急性胃粘膜病変といって急激に症状が進み、潰瘍ができる場合や出血がみられることもあります。

慢性胃炎

問診や触診だけでは診断が難しいことが多く、内視鏡検査がポイントになります。

・慢性胃炎の診断

進行すると胃粘膜の肥厚(ひこう)や萎縮(いしゅく)などがみられるようになります。
胃粘膜が萎縮して胃壁が薄くなり、血管が透けて見えるのが萎縮性胃炎です。
胃粘膜のびらんと修復が何度も繰り返されると、胃の運動機能も低下する場合があります。

■内視鏡検査

胃粘膜の状態を直接観察するほか、生検(せいけん)といって内視鏡に付属した器具でごくわずかな胃の組織を採取して、詳しく調べることもあります。

胃炎の治療法

胃炎の治療には、薬物療法、原因の除去、生活習慣の改善などがあります。

薬物療法で使う主な薬の種類

薬物療法では、急性・慢性にかかわらず胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬、胃の運動機能改善薬が使われます。

胃酸分泌抑制薬胃酸の分泌を抑える薬で、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(シメチジン、ファモチジン他)、プロトンポンプ阻害薬(ランソプラゾール、オメプラゾール他)などがあります。
胃粘膜保護薬胃粘膜を保護して、胃粘膜の防御力や修復力を高める薬(スクラルファート、レバミピド他)です。
運動機能改善薬胃の運動機能が低下している場合、胃の運動機能を促進する薬を使います。副交感神経刺激薬(塩化カルプロニウム他)、ドパミン受容体拮抗薬(メトクロプラミド他)などが使用されます。

急性胃炎

急性胃炎の治療では、特に原因の除去が大切です。ストレスや薬物など原因がはっきりしている場合、原因を取り除くだけで治ってしまうこともあります。
吐き気や嘔吐がひどい場合は、絶食して点滴による栄養補給を行い、胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬などで治療します。
胃粘膜に出血がある場合は止血剤を用いますが、適切な治療により比較的早く治ります。

慢性胃炎

胃酸の分泌を抑制する薬が中心となりますが、胃粘膜保護薬や胃の運動機能改善薬を併用することもあります。

生活習慣の改善

過労やストレスを避けて安静にすることが大切です。
暴飲暴食を避けるとともに、胃酸の分泌を促すような食事(コーヒー、濃い緑茶や紅茶、焼肉、強い香辛料などの刺激物)や脂質の多い食事は控え、規則正しい食生活を心がけます。

詳しい検査を受けましょう

胃酸分泌抑制薬が市販薬にも使われるようになり、誰でも手軽に服用できるようになりました。
しかし、市販薬だけに頼ると重い病気を見逃してしまうことがあるので注意が必要です。

慢性胃炎では特有な症状というものはなく、胃の不快感や胃痛の影には胃潰瘍や胃がんのような恐ろしい病気が隠れている可能性もあります。
胃の具合が悪いときや、胃炎が心配になったら内科の病院(できれば消化器内科)で詳しい検査を受けることが大切です。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

食道がん

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

食道がんとは

気管との分岐点から胃の入り口をつなぐ一本のパイプ状の臓器(食道)にできたがんを「食道がん」といいます。

食道は「頸部(けいぶ)食道」「胸部食道」「腹部食道」の大きく3つに分かれ、日本人の食道がんの90%近くは「胸部食道」にできると言われます。
食道の入り口の約3cm下から20cmのあたりにできるがんです。

食道がんとは

食道がんの種類と原因

食道がんには2タイプあります。

扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)

食道の内側(筒の内側)の表層部(粘膜上皮)できるがんです。日本人の食道がんの90%を占めると言われます。

扁平上皮がんの特徴は、口から入ってきた刺激物や異物に繰り返しさらされ、細胞分裂が著しく、そのため細胞の異変もおこりやすいという点です。
異変が起きても自然修復が追いつかなくなり、異変が積み重なりがん細胞ができます。
健康であれば免疫の力でがん細胞は排除されますが、排除が追いつかなくなるとがん細胞が活発に細胞分裂しはじめます。

原因:喫煙、大量の飲酒、刺激的な食べ物(熱い飲食物、焦げた食べ物)などの危険因子に長期間さらされること。

がんを発症しやすい人:若いころから喫煙、毎日大量に飲酒(アルコール分解力が弱く、飲酒で顔が赤くなる人)、肥満、野菜不足

また、食道がん患者が、女性と比較し男性が6倍ほど多いのは、これらの危険因子に長期間さらされることが多いためと言われています。

腺がん

食道の内側の壁(食道壁)には粘液を分泌する「食道腺」があります。この食道腺を形成している腺細胞ががん細胞と化したものです。

原因:喫煙、食道炎が進行したバレット食道(食道の壁の内側の細胞が異常になる)

がんを発症しやすい人:胃酸が食道に逆流して食道が炎症をおこす逆流性食道炎が慢性化し、食道粘膜の細胞が変質してしまった状態の「バレット食道」の人、白人男性、喫煙者

食道がんの進行と転移

扁平上皮の下に発生したがんは、周囲の組織を破壊しながら増殖を続け、上下左右へと広がっていきます。これを「浸潤(しんじゅん)」といいます。
奥深くへ浸潤し、粘膜層、固有筋層、外膜をこえ、やがて食道の外へ広がります。
がんが粘膜内に留まっているうちは「早期食道がん」、粘膜下層にまで進んだものを「表在食道がん」、固有筋層まで進むと「進行がん」と呼びます。

「早期食道がん」の初期段階であれば、がん細胞を切除することで完全に治ります。
「表在食道がん」まで進むと、がんがリンパ節などへ転移しやすくなります。
「進行がん」にまで進むと、食道周辺の臓器に浸潤していきます。

さらに、食道壁にはリンパ管や血管が張り巡らされ、また食道の周辺にはリンパ管が豊富にあるため、リンパ液や血液などによってがん細胞が体の様々な部位に運ばれ、転移していきます。

食道がんの症状

早期食道がん

自覚症状がありません。人によっては飲み込む時にのどに違和感がある、熱いものや酸っぱいものでのどがしみるといった違和感があります。
この違和感が続くようであれば、受診をおすすめします。

進行がん

飲み込む時に、つかえた感じがします。食事をするとのどや胸に痛みを感じるようになります。
これはがんが進行して大きくなって、食道の内側に張り出したりして食べ物の通り道が狭くなっているからです。食事がしづらくなって体重が減少していきます。

転移がん

がんを放っておいてリンパ節や食道から遠い臓器にも転移すると、そこからがんが増殖していきます。
例えば背骨に転移すると、背中や胸が痛み出します。肺などの呼吸器に転移すると、声がかすれたり咳が出たりします。

食道がんの診断方法と治療方針の検討

自覚症状に気づいた、あるいは検診などでがんの疑いがあったら、専門医による診断を受けます。
検査で詳しく調べ、体力や身体の状態など様々な状況を考慮して治療方針を決めます。

検査から治療方針の策定まで

1.検査
内視鏡検査(胃カメラ検査)および食道造影検査(バリウムを飲んでレントゲン検査)で食道壁の状態を確認します。

2.診断
内視鏡検査時に採取した食道の組織を詳しく調べ、がん細胞なのか正常な細胞なのかを判定します(組織生検)。「扁平上皮がん」なのか「腺がん」なのかはここで判定されます。

3.病期の確認
がんの進行度や悪性度、転移の有無、健康状態などを検査します。検査方法は、CT検査、MRI検査、PET/CT検査、骨シンチグラフィーなどで行います。

4.治療方針の策定
検査結果などを考慮し、治療方針を決めます。

食道がんの治療法

食道がんの標準的な治療法は大きく4つあります。これら4つを組み合わせて治療がなされます。
身体やがんの状態、転移の部位などによって治療法が異なります。

手術療法

治療の中心となるのは手術療法です。がんを切除する手術を行います。病巣の切除とその周囲の組織も切除します。
病巣の位置によっては声帯や気管も切除するので、これらの失った部分の再建が必要です。
術後には飲み込みの訓練なども行われるため、入院期間が長くなります。近年はおなかを切らずに、内視鏡を用いて切除する方法もあります。

内視鏡的治療

がんの進行が初期の場合、内視鏡で操作器具を挿入してがんを切除することができます。がんの大きさによって切除方法が異なります。
スネアを挿入し、がんを切り取る方法(EMR:内視鏡的粘膜切除術)、ナイフで粘膜下層の組織ごとがんを切除する方法(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)がよく用いられます。

他にもレーザーやアルゴンプラズマ、電磁波を使った治療法があります。がんの深さと大きさから方法を検討します。

化学療法

抗がん剤と呼ばれる薬を注射したり、内服したりする治療法です。抗がん剤を使って、がん細胞の増殖・分裂を阻害し、がんを死滅させたり小さくさせたりします。
抗がん剤は健康な細胞も攻撃してしまうため、化学療法は副作用が出やすい治療法です。

放射線療法

毎日少しずつ放射線をがんにあて、がん細胞を攻撃する治療法です。体の外側から放射線をあてる外照射と、内側からあてる腔内照射があります。
食道がんの疑いがあったら、すぐに専門医を受診しましょう。内視鏡検査(胃カメラ)では早期の小さながんでも発見することができます。

治療方針は、進行度、悪性度、体力などを総合的に判断して決定します。医師に相談したり調べたりして、最終的には自分自身の意思で決定しましょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

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