さるこいどーしすサルコイドーシス
サルコイドーシスとは?
サルコイドーシスは肉芽腫(※1)と呼ばれる細胞やリンパ球などが集まってできる結節ができる疾患です。人体のあらゆる場所にできる可能性があり、目や肺、リンパ節、心臓、神経などできる場所によって症状はことなります。
自然に治る場合もありますが、発症した場合、1~2割の症例では治療が難しく、難病に指定されています。原因は解明されておらず、地域や人種により発生率や重症度が異なります。
- 目次
サルコイドーシスの症状
全身のあらゆる臓器に肉芽腫が発症する疾患であり、発症した臓器によって症状もさまざまです。
また、発熱や特定部位の痛み、耳鳴り、神経障害、疲れがたまりやすい、息切れしやすいといった症状を契機に見つかることがあります。
サルコイドーシスの診療科目・検査方法
サルコイドーシスの原因
原因不明です。特定の細菌感染が関係しているという報告もあります。
サルコイドーシスの予防・治療方法・治療期間
症状の軽い場合は自然治癒することを期待して経過を見守ります。中度、重度の場合かつ、特に心臓病変があるときには必ず治療が必要です。
治療法として副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤(メソトレキセートなど)が有効とされます。
発症臓器や症状により経過は多彩です。
サルコイドーシスの治療経過(合併症・後遺症)
軽度のものでは自然治癒することがあります。
中・重度のものは長期の治療が必要になります。
サルコイドーシスになりやすい年齢や性別
日本では10万人に対して1.7人の割合で発症します。
女性が男性の2倍多く自覚症状が見つかっています(発症者が多いとされる)。
年齢でみると男女とも20歳代、50歳代が多い傾向です。
編集部脚注
※1 肉芽腫 (にくげしゅ)
肉芽腫は、「慢性的な炎症反応に起因する病変」です。
「腫」という文字が使われていますが、腫瘍ではなく免疫反応による病変です。
本来は、異物が入ってきたときに「異物を囲いこむための生体防御機構」です。
マクロファージを中心とした免疫細胞が集まって異物を押さえこんだ結果、肉芽腫が形成されることになります。
最終的には、マクロファージが肉芽腫内の「壊死・老廃物」を除去します。
その後、組織はだんだん元どおりになり、肉芽腫は縮小・消失に向かいます。
以上から、肉芽腫は「異物を一箇所にとどめて除去するための防御機構」に相当します。
しかし、サルコイドーシスの場合、全身の皮膚・臓器に肉芽腫が頻発します。
別に異物・細菌などが入りこんだわけでもないため、「意味もなく肉芽腫が現れる」という状況になります。
肉芽腫は「カッテージチーズ(乾酪)のようになって壊死する場合(乾酪化)」がありますが、サルコイドーシスの肉芽腫は乾酪化しません。
また、サルコイドーシスにおける肉芽腫は、「類上皮細胞(るいじょうひ-さいぼう)」と呼ばれる細胞から形成されます。
そのため、サルコイドーシスの肉芽腫を「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」と表現します。
※2 ACE活性
ACE活性は、「アンジオテンシン変換酵素の活性を測定する検査」を指しています。
「アンジオテンシン」は「血圧の調整に関与する物質」です。
次の2つの作用が知られています。
・末梢血管を収縮させる
・アルドステロンの分泌を促す
アルドステロンは、血液の水分量を増やす働きのあるホルモンです。
「血管収縮」「血液の水分増加」は、いずれも血圧を上げる方向に働きます。
アンジオテンシンの材料となる物質―アンジオテンシノーゲンは、主として肝臓でつくられます。
アンジオテンシノーゲンは、「腎臓で分泌されるタンパク質分解酵素―レニン」の作用で「アンジオテンシンⅠ」に変わります。
しかし、アンジオテンシンⅠは不活性であり、血圧を上げる作用を持ちません。
血圧を上げるのは、「アンジオテンシンⅠ⇒アンジオテンシンⅡ」に変換されてからです。「Ⅰ⇒Ⅱ」の変換を促す酵素が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)です。
簡潔に表現するならば、「アンジオテンシン変換酵素=血圧を上げるための酵素」と言えます。ACE活性の値を出す検査では、「アンジオテンシン変換酵素の働き」を調べます。
血清ACE活性の基準値は「8.3~21.4U/L」となっています。
サルコイドーシスでは、ACE活性が異常高値を示します。
そのほか、異常高値を示す疾患には「甲状腺機能亢進症」「慢性肝炎」「肝硬変」「糖尿病」「腎不全」などがあります。
一方、異常低値を示す疾患には「甲状腺機能低下症」「多発性骨髄腫」「慢性白血病」などがあります。
※3 リゾチーム
リゾチームは、「人間の涙、鼻水、唾液、血清などに含まれる酵素」です。
ちなみに、血清は「血液を凝固させたとき、上澄みにできる淡い黄色の液体」を指します。
リゾチームは生体防御機構に関与しており、「抗菌・抗ウイルス作用」「抗炎症作用」などを有します。
異常高値を示す場合、サルコイドーシス、肝疾患、消化器疾患などが疑われます。
※4 ガリウムシンチ
ガリウムシンチは、「腫瘍、炎症の状態を評価するための検査方法」です。
金属元素のガリウムは、「腫瘍、炎症のある部位に集まる性質」を持っています。
そのため、「体内に入ったガリウムの行方を観測すれば、腫瘍や炎症を見つけることが可能」と考えることが可能です。
「ガリウムが集まった場所=腫瘍or炎症」と判断できるからです。
しかし、普通のガリウムでは「体内に入ったあとの行方」がわかりません。
そこで、ガリウムの放射性同位元素―ガリウム67を注射します。
放射性物質は、体内でも行方を追うことができます。
「どこから放射線が出ているか」を観測すれば、位置を把握できるからです。
このようなメカニズムで、炎症や腫瘍の状態を評価する検査が「ガリウムシンチグラフィー」です。
※5 FDG-PET
FDG-PETは、「腫瘍、炎症の位置を特定するための検査」です。
がん細胞や炎症細胞(白血球・マクロファージなど炎症に関与する細胞)は、ほかの細胞より多くのブドウ糖を必要とします。
以上から、「体内のブドウ糖がどこに集まるか」を調べることで、腫瘍・炎症を発見できるはずです。
がん細胞、炎症細胞の多いところに、多くのブドウ糖が集まるからです。
この考え方で検査をおこなうには、「体内に入ったあとも、位置を把握できるブドウ糖」が必要になります。
そこで、「18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)」と呼ばれる放射性物質を使います。
「18F-FDG」は「ブドウ糖の分子の一部を放射性物質に変えたもの」です。
体内ではブドウ糖と同じように扱われるので、がん細胞や炎症細胞のあるところに集まります。
それにより、「放射線がどこから出ているか」を調べることで、「どこに18F-FDGが集まっているか」を知ることができます。
このような手法を用いた検査が「FDG-PET」です。
「PET検査」「陽電子放射断層撮影」などと呼ぶこともあります。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴東北大学医学部 卒業
東京大学大学院 博士課程終了
国際医療福祉大学 元准教授
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