いんけいがん陰茎がん
陰茎がん(いんけいがん)は男性の陰茎にできるがんです。
男性のがんの中ではどちらかというと稀(まれ)ながんで、最近の研究ではヒトパピローマウイルスとの関係が指摘されています。亀頭部、包皮にできることが多く、陰茎体部におこることはあまりありません。
転移する前の進行が早い段階であれば手術による治療が可能です。そのため早期に泌尿器科を受診することが大切です。
治療法によっては治療後に立位での排尿ができなくなるなどで患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させることもあります。そのため手術などの際には、医療機関と患者さんの間で治療法についての事前の打ち合わせも重要です。
陰茎がんの症状
亀頭部、包皮、陰茎体部に、発赤・出血・ただれ・しこりなどの異常所見が認められます。
時には感染による膿が原因の悪臭を認めることもあります。また鼠径部(そけいぶ※1)のリンパ節が腫れることもあります。
陰茎がんの診療科目・検査方法
視診のみでは判定できず、一部切除して、組織検査が必要です。
血液検査では腫瘍マーカーのSCC(※3)が有用です。進行度を確認するにはCTやMRIも行います。
受診の必要性は極めて高く、泌尿器科を受診しましょう。
陰茎がんの原因
一般的には包茎状態、陰茎の衛生状態が悪いとかかりやすいと言われてきました(生下時の割礼を行う人種の発症率が非常に低いため)。
現在はヒトパピローマウイルス(HPV※2)の感染が注目されています。
喫煙者は非喫煙者に比べて発症のリスクが3~4.5倍であることが指摘されています。
陰茎がんの予防・治療方法・治療期間
本邦での治療は切除が第一選択、腫瘍の大きさなどを考慮して、陰茎部分切除や全摘出術のいずれかを行うが、全摘では立位排尿(立ち小便)ができなくなるのが問題となります。
鼠径部のリンパ節転移が認められれば、リンパ節の大きさ等を考慮して鼠径部リンパ節廓清(※4)、または放射線治療を追加、遠隔転移があれば抗癌剤での化学療法を追加します。
腫瘍の切除が一般的であり、切除に関しては1~2週間程度の入院加療が必要です。
リンパ節廓清(りんぱせつかくせい)・放射線治療・抗癌剤治療を追加する必要があれば、それぞれ約2週間、1~2か月、数か月と治療期間が延長されます。
陰茎がんの治療経過(合併症・後遺症)
転移する前の早期に治療開始することで手術による治療は可能です。
陰茎がんになりやすい年齢や性別
本邦における陰茎癌の罹患率は人口10万人あたり0.4~0.5人です。
好発年齢は50~70歳です。
参考・出典サイト
編集部脚注
※1 鼠径部 (そけいぶ)
鼠径部は、「下腹部と太ももの境界にあたる部位」です。
「足の付け根あたり」と表現するのが、もっとも的確でしょう。
※2 ヒトパピローマウイルス
ヒトパピローマウイルスは、「パピローマウイルス科のウイルス」です。
子宮頸がんの原因として広く知られています。
子宮頸がんのほか、陰茎がん、尖圭コンジローマなど複数の病気に関与していると考えられています。
※3 SCC
SCC(Squamous Cell Carcinoma)は、「腫瘍マーカーの1つ」です。
たとえば、「特定のがんにかかると、体内の特定物質が増加する」という傾向がある場合、この事実はがんの診断に役立ちます。
「特定物質が増加⇒がんの恐れがある」と判断できるからです。
この考え方を利用した検査が、腫瘍マーカーです。血液検査で「特定物質(腫瘍マーカー)の数値」を確認し、がんの診断に活用します。
SCCは「子宮頸がん」「肺がん」「食道がん」「頭頚部がん」などで上昇する腫瘍マーカーです。
※4 リンパ節郭清 (りんぱせつかくせい)
リンパ節郭清は、「悪性腫瘍の治療において、リンパ節を切除すること」を指します。
リンパ節転移を起こしている場合、当然ながらリンパ節郭清が必要になります。
そのほか、腫瘍がある程度大きい場合、リンパ節転移を予防するためにリンパ節郭清を実施することがあります。
執筆・監修ドクター
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