インフルエンザ脳症

インフルエンザ脳症の基本情報

 

インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症です。死亡することもあり、後遺症が残ることも多くあるため危険な病気です。インフルエンザから脳症になるメカニズムははっきりとわかっていませんが、本来は体を守るためにはたらく抗体のサイトカインが大量に増えることで、過剰な反応がおこるためではないかと考えられています。

症状は嘔吐やけいれん、意識障害、異常行動などが報告されています。インフルエンザからインフルエンザ脳症にかかる頻度は多くはありませんが、子供や高齢者ではインフルエンザ発症時のリスクとして注意する必要があります。

インフルエンザ脳症の基礎知識

病名

インフルエンザ脳症

別名

特になし

症状

発熱、呼吸器症状に続いて、意識障害やけいれん、片麻痺、異常行動の持続を認める。

罹患者数

例年、100例程度の罹患者が報告される

発症しやすい年齢と性差

5歳未満の乳幼児、10歳未満の学童期に多い。

原因

インフルエンザの発症にともない脳症がおきるが機序は不明である。
インフルエンザ感染により炎症性サイトカイン(※1)が産生され発症すると考えられている。

受診の必要性

死亡例や後遺症が残ることもあり小児科、内科での早期の受診が必要である。

検査内容

脳CT検査、脳MRI検査、脳波測定、血液検査、インフルエンザ抗原(※2)検査、尿検査

治療可否

治療は可能であるが、予後は楽観できない。

治療法

抗インフルエンザウイルス薬を投与する。
また、脳の炎症を抑える薬(ステロイドパルス療法※3やガンマグロブリン大量療法※4)を投与することもある。
また、全身状態が悪くならないように管理していく支持療法を併用する。
心肺機能を保つ管理や体温管理を行い、けいれんの治療、頭蓋内圧を抑える薬を投与する。

治療期間

数週間から数ヶ月を要する。

編集部脚注

※1 炎症性サイトカイン

炎症性サイトカインは、「炎症反応を促すタンパク質」です。
まず、サイトカインは「細胞から別の細胞に、何らかの情報を伝達するタンパク質」です。
もう少し簡潔に捉えて、「細胞間での指示・伝達に使われる物質」と考えていただいても構いません。
以上から、「炎症性サイトカイン=炎症を起こすように指示・伝達する物質」です。

中には「病原体が炎症を引き起こす」と誤解している人もいますが、実際にはそうではありません。
むしろ、身体の免疫システムが炎症を起こします。
炎症反応は「病原体と戦うための免疫細胞を集める」「特定の場所を病原体と戦うための戦場にする」といった反応です。
炎症部位が腫れるのは、「(白血球など免疫細胞を含んだ)血液を集めた結果、膨らんだ」と考えていただいて結構です。
つまり、「炎症=免疫システムが戦闘準備を整え、病原体を排除するための反応」です。
炎症を起こした部位は損傷を受けますが、その代わり、病原体が全身に悪影響を与える状況は回避できます。

簡潔に表現するならば、炎症は「一部を犠牲にして、全体を守るための反応」です。
以上のような理由から、免疫システムは能動的に炎症を起こします。
だからこそ、「炎症反応を促す物質―炎症性サイトカイン」が必要になるのです。
代表的な炎症性サイトカインには、「IL-1(インターロイキン-1)」「IL-6(インターロイキン-6)」「TNF-α(腫瘍壊死因子α)」などがあります。

※2 抗原

抗原は、「免疫システムの攻撃対象となるタンパク質」です。
免疫システムは、「病原体(細菌・ウイルスなど)」「異物」を攻撃する性質を持っています。
このとき、免疫システムは「病原体・異物に含まれるタンパク質」を確認して、「攻撃対象か否か」の判断基準にしています。
このとき、「攻撃対象となるタンパク質」を抗原と呼びます。
身体を守るための「抗体」は抗原と結合(抗原抗体反応)し、「免疫複合体(抗原-抗体複合体)」となります。
あとは、「マクロファージ」「好中球」といった食細胞が免疫複合体を捕食して、処理します。

※3 ステロイドパルス療法

ステロイドパルス療法は、「多量のステロイドを点滴で投与する治療」です。
ステロイドは「免疫反応を抑え、強力に炎症を鎮める薬」です。
ステロイドパルス療法においては、メチルプレドニゾロン500~1,000mgを3日間かけて投与するのが普通です。
「3日間=1クール」として、病状により1~3クールの治療をおこないます。

※4 ガンマグロブリン大量療法

ガンマグロブリン大量療法は、「血液中の液体成分―血漿(けっしょう)に含まれるガンマグロブリンを静脈注射で投与する治療」です。
ガンマグロブリンは「免疫に関与するタンパク質」であり、数多くの抗体を含みます。
多くの提供者から血漿を得て、ガンマグロブリンを抽出したのが「ガンマグロブリン製剤」です。ガンマグロブリン大量療法では、ガンマグロブリン製剤を大量に静脈注射します。
「炎症反応を抑える作用」を持つことから、急性脳症などの感染症にガンマグロブリンを投与することがあります。
「炎症性サイトカインの制御」など、いくつかのメカニズムによる作用といわれています。
しかしながら、現状では「なぜ、ガンマグロブリンの投与で炎症が鎮まるのか」を詳細に解明できているわけではありません。

■参考サイト
厚生労働省 インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版
国立感染症研究所 インフルエンザ脳症について

 

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症の一つです。インフルエンザ脳症を併発した場合、意識障害やけいれんなどを起こします。その症状は多様で、脳症かどうかの判断が難しい軽度なものから死亡例、後遺症が残るケースも見られます。

発症メカニズムについてはまだ未解明な部分も多くありますが、発熱に何らかの神経症状(具体的には、けいれんや異常行動など)が伴う場合、インフルエンザ脳症が疑われます。脳症ではないと判断された後、3~5日後にけいれんや意識障害が出現するといった事例も報告されています。

2000年代初期では発症後の死亡例は30%、後遺症例が25%ほどでしたが、2009年には死亡率が7~8%まで下がっています。後遺症例は2009年時点で25%と横ばいです。

【参考】インフルエンザ脳症の手引き
インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版平成21年9月

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザから見る脳症の発症データ

国立感染所研究所の報告では、2017年9月から2018年3月にインフルエンザを発症した約2104万に対し、155人がインフルエンザ脳症を発症しました。14万人に1人がインフルエンザ脳症と認められたことになり、その確率は高くはありません。

インフルエンザをきっかけに脳が腫れ、頭の中の圧力が上がり、脳の機能が低下するのがインフルエンザ脳症です。脳症の場合、脳や神経へのウイルスの侵入は確認されません。

【参考】国立感染症研究所/IDWR2018年10号注目すべき感染症/インフルエンザ

よく似た症状のインフルエンザ脳炎

インフルエンザ脳症とよく似たインフルエンザによる合併症として、ウイルスが脳に入り脳が炎症を起こして腫れる、インフルエンザ脳炎があります。

脳症では脳内にウイルスが確認されないのに対し、脳炎はウイルスが脳内に侵入し神経細胞を直接破壊することで、脳が炎症を起こして腫れやすくなるなどの症状が出ます。つまり、脳内にウイルスの浸潤(広がること)が認められるとインフルエンザ脳炎、脳内でウイルスが検出されないとインフルエンザ脳症とされます。

症状はよく似ており、初期の段階で区別することは困難です。採血などで脳内のウイルスの侵入を調べた結果、脳症か脳炎か判断されます。

発症は子供に多い

2014年~2017年のインフルエンザについて厚生労働省がまとめのデータでは、子供の発症者が多く、10歳未満の症例が平均して50%以上を占めています。2017年に限定したデータでは、インフルエンザ脳症は10歳未満の症例が60%を占め、その中でも5歳未満に絞ると全体の39%になります。したがって、10歳以下の子供がインフルエンザにかかった際は、特に脳症に注意をした方が良いと言えます。

一方で60歳以上の症例も16%あり、高齢者の重篤なインフルエンザ合併症としても注意が必要です。

【参考】国立感染症研究所/今冬のインフルエンザについて(2016/2017シーズン)

【執筆】加賀 康宏 先生
病気スコープ編集部
2018年2月1日

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