たんじゅんへるぺす単純ヘルペス
- 目次
単純ヘルペスとは
単純ヘルペスは一般的に知られている口の周りにできるヘルペスのことです。
口の周りだけでなく、性器にもできることがあります。
原因はウイルスで、感染します。
感染者が使用している食器や、触れた物にはなるべく触れないことが予防法です。
「単純ヘルペス」は、私たち誰もがかかる可能性のある、ごくありふれた皮膚の感染症です。
単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスは体内の神経細胞が集まっている神経節に潜り込み、一生そこに棲みついてしまいます。そのため、しばしば再発を繰り返します。
大切なのは、もし感染してしまった場合は症状を悪化させずに早期に治療すること、人にうつさないこと、そして再発を予防していくことです。
あわせて読みたい
単純ヘルペスの症状
単純ヘルペスに感染すると、発疹や水ぶくれなどの皮膚症状があらわれます。初感染の場合は、高熱などの重い全身症状を伴うことがあります。その一方で、感染していても自覚症状がなかったり、症状がまったく出なかったりすることもあります。
口唇ヘルペスの初期症状としては、唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさを覚えるようになります。その後、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができます。やがて水ぶくれは破れてかさぶたになり、2週間程で治ります。
初感染時には、ウイルスに対する免疫がないため重症化しやすいとされています。大きめ(直径5ミリ程度)の水ぶくれが多発し、強い痛みや発熱、あごの下のリンパ節が腫れたりすることもあります。また、排尿や歩行が困難になる場合もあるようです。
一方で、再発の場合は、皮膚の赤みや水ぶくれの現れる範囲が狭く、症状も軽いとされています。周囲へ気づかずに感染を広げてしまうこともあるため、注意が必要です。
感染してから2日~10日ほどの潜伏期間をおいて発症します。性器やおしりの周辺の皮膚に赤いブツブツや水ぶくれ、ただれができます。
単純ヘルペスウイルスによるその他の感染症
ヘルペス角膜炎
目の角膜に感染します。目の痛み・涙目・目が赤くなるといった症状が出ます。何度も再発すると、重大な視力障害を引きおこすこともあります。
ヘルペス脳炎
発熱・意識障害・けいれん発作・幻覚などの症状がおきます。
新生児ヘルペス
母子感染などによって発症するもので、生後間もなく発熱、黄疸(おうだん)、呼吸障害などの症状があらわれます。脳症などの後遺症が残ったり、死亡したりするケースもあります。
単純ヘルペスの診療科目・検査方法
「ヘルペスかな?」と思ったら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
唇などの症状の場合は皮膚科へ、性器や下半身の場合は泌尿器科・産婦人科・婦人科に行くことが推奨されます。
単純ヘルペスは、唇や性器にできた水ぶくれなど皮膚の症状から診断することができます。症状が出ている部分の皮膚や粘膜を綿棒でとって組織検査をすれば、簡単に結果がわかります。
その他、症状が出ていない場合、あるいは初感染なのか再感染なのかといったことを判定するために血液中のウイルス抗体(※)を測定する検査もあります。これは主に皮膚科・泌尿器科、感染症内科などの専門医で受けることができます。
※ウイルス抗体とはリンパ球でつくり出される糖タンパク分子で、主に血液や体液の中に存在し、体内に侵入してきたウイルスに対処しようとするものです。
単純ヘルペスの原因
「単純ヘルペスウイルス」というウイルスが原因となっておこります。
ウイルスには1型と2型の2種類があります。1型は口の周りや顔面など上半身に発症することが多く、2型は性器や下肢など主に下半身に症状が出るといわれています。このうち、口の周りにできるものを「口唇ヘルペス」、性器周辺にできるものを「性器ヘルペス(GH:Genital herpes)」と呼び、単純ヘルペスの中でも最も一般的です。
種類別の感染原因
口唇ヘルペス
単純ヘルペス1型ウイルスが原因です。接触や、くしゃみや咳(せき)などの飛沫による感染が一般的である。
性器ヘルペス
主に単純ヘルペス2型ウイルスが原因です。2型ウイルスは頻繁に再発を繰り返す傾向があります。性交渉による感染がほとんどだといわれています。
アトピー性皮膚炎の人は皮膚が弱いため、単純ヘルペスウイルスに比較的簡単に感染しやすいです。感染すると顔や身体などの広範囲に水ぶくれが現れ、ただれたような状態になります。また、この場合は合併症を引きおこすこともあります。代表的なものに「カポジ水痘様発疹症」があります。
症状としては、広範囲にわたって顔や首などに小さな水疱ができ、リンパ節が腫れたり、高熱が出たりすることもあります。アトピー性皮膚炎の悪化との見分けがつきにくいことがあるので注意が必要です。
単純ヘルペスの予防・治療方法・治療期間
現在の医学では、一度体内に入った単純ヘルペスウイルスを完全に排除することはできません。しかし、薬でウイルスの増殖を抑えることは可能です。適切な処置をするのが早ければ早いほど、症状は軽く済みます。
そのため、再発の前兆を感じたり症状が出てきたら、できるだけ早い時期に治療を開始しましょう。
一般的な治療としては、抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を使用します。全身症状が現れるなどの重症例や免疫不全の人に対する治療では、入院した上で抗ウイルス薬の点滴静脈注射をおこないます。その際、細菌の二次感染を防ぐために、抗生物質を服用することもあります。
単純ヘルペスのための抗ウイルス薬
薬の名前 | 薬の形 | 使用法(※) | 副作用 |
アシクロビル | 経口薬・軟膏・点滴など | 経口薬は1日5回服用 | 吐き気など胃腸症状 |
塩酸バラシクロビル | 経口薬 | 1日2~3回服用 | 同上 |
ビダラビン | 軟膏 | 1日1~4回、患部に適量を塗布または貼布 | 皮膚の刺激感、皮膚のかゆみや赤みなど |
※症状の程度などによって、薬の服用回数は変わることがあります。
再発を繰り返す性器ヘルペスへの治療
単純ヘルペスの中でも、特に「性器ヘルペス」は再発を繰り返すのが特徴です。この再発の頻度を少なくするために、症状が現れる前にウイルスの増殖を抑える治療が、最近になって日本でも行えるようになりました。「抗ウイルス薬」を毎日少しずつ飲むことによって、再発リスクを低下させる治療法で「再発抑制療法」と呼ばれています。
「再発抑制療法」は、性器ヘルペスの標準的な治療法として、2018年現在世界50カ国以上で認められています。この療法は、性器ヘルペスの再発を抑えるメリットに加え、パートナーへの感染率を下げることがわかっています。「再発抑制療法」は、おおむね年に6回以上再発する患者さんが対象となります。
この治療法について詳しくは医療機関(泌尿器科・産婦人科・婦人科などの専門医)に相談してみましょう。
予防
単純ヘルペスウイルスでは人に対する感染する力が強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうことがあります。皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、ヘルペスウイルスが侵入しやすくなるので注意が必要です。
また、既にウイルスを持っている人は、身体の抵抗力が低下すると体内に潜むウイルスが暴れ出し、再発しやすくなります。再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などがあります。
そのため、予防にはストレスや疲労をためないことが重要です。まず日ごろの健康管理を心がけ、バランスのよい食事と十分な休息をとるようにします。また海水浴など、日光に当たる場所へ行く場合は、日焼け止めなでしっかりと予防しましょう。
単純ヘルペスの種類にかかわらず、再発のリスクを減らし、パートナーや他の人にうつさないためにも、予防を心がけるようにしましょう。
単純ヘルペスの治療経過(合併症・後遺症)
ウイルスを完全に除去することはできませんが、治療により症状を抑えることは可能です。
適切に治療をすれば、1週間ほどで軽快します。
人にうつさないようにこころがけることも治療後は重要になります。水ぶくれなど明らかな症状が出ているときはウイルスの量も多く、感染力の強い時期です。患部に触れた時はきちんと手洗いをしましょう。水ぶくれを破ると症状が治まるのを遅らせるだけでなく、細菌に感染したり、痕が残ったりすることもあります。患部の清潔を保つと共に、水ぶくれをつぶさないようにも注意しましょう。
単純ヘルペスを発症しているときは、性的接触は避けましょう。性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。特にパートナーがウイルス抗体を持っていない場合には、重症化させる可能性があるため、注意が必要です。
また、たとえ自覚症状がなくても、だ液や精液などにウイルスが排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。「再発抑制療法」を受けていても、感染リスクがなくなるわけではありません。パートナーとともに病気についての理解を深め、コンドームを使用することが、より確実な感染防止策です。
赤ちゃんは免疫機能が未熟なため、口唇ヘルペスなどができている間のキスは避ける。患部を触った手で、赤ちゃんに触れないようにしましょう。
また、タオルなどの共用は避けましょう。コップやグラスなどの食器も、単純ヘルペスの症状が出ている間は、人と同じものは使わないようにします。
単純ヘルペスになりやすい年齢や性別
単純ヘルペスウイルスは古くから蔓延しているウイルスです。通常、成人になるまでに50~80%の人が感染します。感染した場合も無症状の場合も多いため、実態は把握しにくいとされています。2型は性行動の活発さに比例するとされていて、最近では性体験の低年齢化により、若年層の患者が増えています。
また、女性の感染率が男性に比べて高く、20代の女性に最も多いとされています。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2002年 金沢医科大学医学部 卒業
2002年 金沢医科大学病院 小児科、内科勤務
2004年~2018年大阪、神戸、東京、福岡の病院、クリニックで内科、皮膚科勤務
2018年 クリスタル医科歯科クリニックインターナショナル内に医科開設
関連する病気
単純ヘルペス以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。
関連カテゴリ
単純ヘルペスに関連するカテゴリはこちら。
関連コラム
「単純ヘルペス」に関するコラムはこちら。