かふんしょう花粉症
花粉症(花粉症)とは
花粉症(花粉症)とは、名前の通り花粉が原因となり発症し、くしゃみや鼻水、鼻づまりを引きおこしたり、目がかゆくなったり、のどが痛くなったりする病気です。
花粉症を引きおこす代表的な花粉は以下の通りです。
- スギ花粉
2~4月にかけて飛散する花粉。日本での花粉症になるとしたら、最も多いのがこのスギ花粉です。沖縄と北海道を除き、全国的に発症の引き金になります。
- ヒノキ花粉
3~5月にかけて花粉が飛びます。スギと同じく全国的に広がる花粉で、ギ花粉とヒノキ花粉の飛散時期が重なると、重症になるので注意が必要です。
- ブタクサ花粉
8~10月に飛散し、スギやヒノキに続いて飛散量が多い花粉です。しかし、背の低い草花系の花粉で飛距離が短いので、植物が生えているところに近づかないことで防止することができます。
- イネ花粉
イネの飛散時期は5~9月であり、他のイネ科の飛散時期も考慮すると、春から秋にかけて長い間飛散している種類です。スギやヒノキと違い、北海道、沖縄も含めて全国的に飛散しています。
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花粉症の症状
花粉症の症状には、くしゃみや鼻みず、目のかゆみ、皮膚の炎症などがあげられます。
花粉症のくしゃみは1度すると、続けて複数回出るのが特徴的です。また、鼻水は多くは透明でサラサラしています。そして、1日中止まらないような勢いで流れます。風邪の場合、初めは透明でサラサラですが、時間が経つと黄色くネバネバするようになります。そのため、鼻水の原因が風邪か、花粉によるものなのかを見分けることができます。
花粉症による鼻づまりは両方つまることが多く、鼻呼吸ができなくなることがあります。
花粉は鼻や目を通して侵入します。そのため、目に入れば目のかゆみを引きおこし、鼻を通って口に入ればのどに炎症をおこすといった症状がおこります。
皮膚にまで影響を及ぼし、花粉症皮膚炎を引きおこす場合があり、発疹(ほっしん)ができたり、かゆみが出たりといった症状があります。
花粉症の診療科目・検査方法
花粉症の症状はくしゃみや鼻水、目のかゆみ、のどの痛みなど発症部位が異なります。そのため、どの病院に行くべきか悩む人がいますが、最初に診察を受ける場合は症状がひどい部位に対応する診療科を受診します。花粉症はアレルギーのため、耳鼻いんこう科や眼科だけでなく、皮膚科でも診察可能です。
アレルギー科といった診療科を掲げている病院もあり、そちらの方がスムーズに診断できる可能性もあります。
問診
以下の内容について事前に確認しておくとよいでしょう。
いつから症状が出ているか
長期的に鼻水やくしゃみが出ているのかを知ることで、花粉症かどうかを診断します。
どの程度のくしゃみ、鼻水、鼻づまりか
くしゃみのパターンや鼻水の色、質、鼻づまりの期間を知ることで、花粉症か他の病気かを判断します。
目がかゆいか
花粉症で目がかゆいのか、他の病気でかゆいのかを判断します。
今までに他のアレルギー症状の診断を受けたことがあるか(薬を処方されたことがあるか)
他のアレルギーとの関連性、アナフィラキシーといったアレルギー症状の情報を整理します。
家族に花粉症の人がいるか
遺伝的なアレルギー体質でないか、また、家族でアレルギーになるような環境でないかを判断します。
ペットを飼っているか
ペットに付着したダニやほこりによるアレルギーの可能性を判断します。
検査方法
1.皮膚反応テスト(ひふはんのうテスト)
アレルギー反応が出るかのテストです。4種類のテストがあります。
プリックテスト
皮膚に針などで小さな傷をつけ、アレルゲンを垂らして反応をみるテストです。痛みが少なく、子どもでも可能です。
スクラッチテスト
皮膚にアレルゲンを垂らし、皮膚を5mmほどひっかいて反応を確認します。痛みは少ないのでプリックテスト同様、子どもでもテストできます。
皮内テスト
スクラッチテストでも反応がはっきりと分からなかった場合におこないます。アレルゲンを皮内に注射することで、反応を確認します。
15~20分後に赤くなったり、腫れが出たりすることでアレルゲンを確定します。
強い反応が出ることもあるため、テストをする際には注意が必要です。
パッチテスト
アレルゲンを塗ったガーゼや絆創膏を皮膚に貼り、1~2日で反応をみます。
2.鼻鏡検査(びきょうけんさ)
鼻の穴を器具で開き、粘膜の状態をみる検査です。
粘膜が荒れていると赤く腫れており、症状が長く続いていると白くなっています。
花粉症だけでなく、他の鼻の病気を調べるためにもおこないます。
3.レントゲン
鼻の炎症をよりはっきりと診断するためにおこないます。
レントゲンを撮ると、鼻のまわりや目の上の副鼻腔が白くなっていることもあり、花粉症に伴う副鼻腔炎になっていないかの診断ができます。
4.鼻汁の細胞検査
鼻水が花粉によるアレルギー症状なのかを、綿棒で鼻水を採取して顕微鏡でみます。アレルギー反応があると増える好酸球(こうさんきゅう)という物質が多いかどうかで、アレルギー症状がどうかを判断します。
5.血液検査
血液中のIgE抗体の量やリンパ球量を検査することで、どのアレルゲンで症状が出ているのかまで診断することができます。
花粉だけでなく、ハウスダストや植物、動物のアレルギーも分かる可能性がある検査です。
花粉症の原因
花粉症の原因は当然、花粉です。
花粉症は遺伝的にかかりやすいというデータがあります。製薬会社が2017年におこなったアンケート調査では、両親が花粉症である子どものうち、36.4%が花粉症だとするデータがあります。両親がともに花粉症ではない子どもが花粉症になる可能性は、11.2%でした。
花粉症が発症するメカニズム
花粉症のメカニズムを知るために、身体がウイルスを撃退する際の仕組みを解説します。
- ウイルスが身体に侵入すると、異物と認識する。
- 身体は、異物を排除するためにIgE抗体というものを作る。
- IgE抗体は血液と一緒に身体を循環し、皮膚や粘膜の下にある「マスト細胞」にくっつき、異物にいつでも反応できる状態を作る。
- IgE抗体が身体に侵入した異物を見つけてくっつき、異物を撃退するためにマスト細胞がヒスタミンという物質を出して炎症をおこす。
こうした仕組みは健康な状態ならば大事な働きで、本来はウイルス撃退に必要な体液を集めるための反応です。しかし、身体に無害な物質を排除させるために、ヒスタミンが過剰に分泌されることがあります。これがアレルギー反応です。
ヒスタミンが過剰に分泌されると、体液がたくさん集まりますが、本来無害な花粉には何も作用せず、この体液が鼻水やくしゃみ、涙として出てきます。これが花粉症のメカニズムです。
花粉症にはリンパ球が直接アレルゲンに対して攻撃をおこなう場合があります。この攻撃の際に炎症を引きおこし、リンパが腫れるといった症状も出ます。
花粉症の予防・治療方法・治療期間
薬物治療
花粉症は発症すると完治をさせることは困難です。しかし、薬を使用することで症状を抑えることは可能です。
ここでは、主な薬の種類と効能を、副作用を含めて紹介します。
1.抗ヒスタミン薬
作用
アレルギー症状を引きおこすヒスタミンの働きを抑える作用があります。すなわち、アレルギーの症状が出てきたらそれを抑える薬です。
副作用
眠気が出たり、ボーッとした気分になったりします。車の運転や仕事での集中力低下が懸念されるため、特に運転前の服用は禁止されています。
消化器の異常もみられ、口が渇いたり吐き気が出る場合もあります。
2.抗アレルギー薬
作用
アレルギー症状が出てきたら服用する抗ヒスタミン薬に対して、抗アレルギー薬は、その症状をあらかじめ出さないようにヒスタミンの分泌を抑える薬です。
副作用
抗ヒスタミン薬に比べて眠気やボーッとすることは少ないとされています。
3.ステロイド
作用
ヒスタミンの作用である炎症を抑制します。
抗ヒスタミン薬に比べるとかなり強力で、基本的に重症の場合に処方されます。しかし即効性はなく、効果が出るまで1~2日必要です。
副作用
効果が強力な反面、副作用も強力です。
長期的か大量に服用すると、ホルモンバランスが乱れ、感染症や胃潰瘍、骨粗鬆症などを引きおこしやすくなります。
手術
一時的に症状を止めるレーザー治療
鼻の粘膜上皮質(ねんまくじょうひしつ)や粘膜凝固層(ねんまくぎょうこそう)をレーザーで凝固、変形させることで、アレルギー症状を抑える治療です。
鼻の症状を抑える治療法なので、目のかゆみやのどの痛みを抑えることはできません。
鼻の粘膜は再生するため、時間が経てばやがてアレルギー反応が強まりますが、そのたびにレーザーで再治療することができます。
術後は多少の痛みや出血の心配もありますが、1~2年は薬を投与されずともくしゃみや鼻水を抑えることができます。
減感作療法(げんかんさりょうほう)
減感作療法とは、患者さんにアレルゲンを少しずつ注入することで、過剰なアレルギー反応を抑えていき、最終的に治療する方法です。
12歳以上から治療をおこなうことが可能で、注入する量や回数は症状の差と個人差があります。
量や回数を間違えると強いアレルギー反応を起おこしてしまうため、熟練の医師におこなってもらう必要があります。
とても時間がかかる治療であり、3年はかかるといわれています。
舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)
近年生み出された治療法で、アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から服用していくことにより、身体を慣らしていく治療法です。
スギ花粉アレルギーやダニアレルギーと診断された12歳以上の人が受けられる治療です。
治療薬を口に含み、舌の下で定められた時間保持した後、飲み込みます。その後5分間は飲食、うがいを控えます。長期的に続けることで、アレルギー症状を治したり、大きく改善したりすることができます。
副作用として、口内炎や口の中のかゆみ、頭痛がおこり、場合によってはアナフィラキシーの危険性があります。
予防
1.飲酒を控える
大量の飲酒は血管を拡張させ、鼻づまりや目の充血を引きおこします。
また、つまみで高タンパク、高脂質のものを食べることも多く、花粉症の症状を悪化させます。飲酒はなるべく控えるようにします。
2.喫煙
タバコは粘膜を直接刺激するため、花粉症の症状を促進させます。
煙によってまわりの人にも影響が出てしまいます。
3.睡眠と運動
花粉症は身体の免疫力が低下すると発症しやすくなります。
そのため、寝具の花粉症対策をおこなった上でぐっすりと眠るようにし、適度な運動を心がけます
4.乳酸菌を含む食品とポリフェノール
食事で免疫力を高めることも有効とされています。主な食品としてヨーグルトのような乳酸菌や、緑茶、カカオといったポリフェノールを多く含む食品が推奨されています。
外出時の予防策
マスクや眼鏡をつけてなるべく花粉を鼻や口、目から侵入させない対策をとります。マスクの間に湿ったガーゼを挟むと、スギ花粉がとどまります。
眼鏡をつけるだけでも目を守ることができます。コンタクトレンズの使用は花粉が入ると目を直接痛める危険性もあるので、外出時はできるだけ眼鏡にします。
また、静電気がおきにくい服なら、花粉の付着を防ぐことができます。
髪や頭に付着した花粉が家に侵入しないように帽子をかぶることも効果的です。
帰宅時の対策
花粉を家に入れないよう工夫します。玄関先で服や帽子から花粉を払うようにします。手洗い、うがいをして、手や口に付着した花粉も取り除きます。鼻うがいまでおこなうとさらに効果的です。
ドア、窓を閉める
花粉が直接家に入ってくるのを防ぎます。
こまめに掃除
ハウスダストおよび花粉をため込まないように掃除します。
布団を外に干さない
花粉の付着を防ぎます。どうしても布団を清潔にしたい場合は、コインランドリーを利用します。
寝具の花粉を取る
寝ている際に吸い込まないようにするため、寝る前でよいので、布団や枕をきれいにします。
空気清浄機を活用
家の中の空気から花粉を取り除きます。ハウスダストのような他のアレルギーを引きおこすものも除去することができます。
花粉症の治療経過(合併症・後遺症)
花粉症になると、頻発するくしゃみや大量の鼻水により作業に集中できなくなり、仕事や勉学に励んでいる人、車を運転する人、家事をしている主婦など、大勢の人の作業効率が低下します。花粉症自体による集中力の低下以外に、花粉症を抑える薬の副作用により気分がボーッとしてしまい、それにより集中できない状態になる人もいます。
合併症
1.気管支喘息(きかんしぜんそく)
花粉症を発症すると、鼻の粘膜で炎症がおこります。
炎症をおこした一部の細胞が血管を通して気管支に届くと、気管支喘息を合併症として引きおこす可能性があります。
気管支喘息の人は、炎症がおきて気道が狭くなっています。
呼吸が苦しくなって咳込み、たんができやすくなったり、ヒューヒュー、ゼェーゼェーといった呼吸になったりします。
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2.副鼻腔炎(ふくびくうえん)別名:蓄膿(ちくのう)
花粉症の影響で鼻に炎症がおこると、副鼻腔炎を引きおこす可能性があります。
別名、蓄膿といわれるこの病気は副鼻腔に炎症がおき、膿が溜まる病気です。黄色い鼻水が出てくる、味覚、嗅覚障害に陥ることもあります。発声の共鳴にも影響があり、鼻がつまっていると鼻声になるのはそのためです。
副鼻腔とは鼻のまわりにある空洞のことで、粘膜に覆われています。
粘膜表面の綿毛によって異物を絡め取り、鼻腔から出すのが本来の機能です。
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3.口腔アレルギー症候群(OAS)
花粉症の人が、ナッツや野菜、フルーツなどを食べるとアレルギー反応が出る症状を、口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome:OAS)といいます。口の中のかゆみやしびれといった症状が特徴です。
原因として、フルーツや野菜などに含まれるタンパク質が、花粉症のアレルゲンである花粉(特にシラカバ花粉)と構造が似ていることがあげられています。
OASを発症すると、野菜やフルーツ、ナッツを食べることでアナフィラキシーを引きおこす場合があります。アナフィラキシーはアレルギー反応の一種で、全身に及ぶ発疹や発作、血圧低下、呼吸困難、意識障害、息切れなど多くの症状が出ます。
花粉症になりやすい年齢や性別
日本では4人に1人が花粉症を発症していると推定されており、特にスギやヒノキの花粉が飛ぶ2~5月ごろがピークにあたります。
全国の耳鼻いんこう科医とその家族を対象とした2008年(1月~4月)の鼻アレルギーの全国疫学調査によるとアレルギー 性鼻炎全体の有病率は39.4%でした。
花粉症全体の有病率は29.8%、そしてスギ花粉症の有病率は26.5%という報告があります。
花粉症の発症者は年々増加傾向にあります。
執筆・監修ドクター
経歴1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。
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