せいきへるぺす性器ヘルペス
性器ヘルペスの症状
初発、再発の2つのタイプがあり、一般的には初発例では症状が強く、再発例はしばしば再発を繰り返すのが特徴であります。
症状としては、性器に痒みや違和感を伴った直径1~2ミリ程度の複数の水ぶくれが出現し、数日後に水ぶくれが破れて潰瘍状態(かいようじょうたい:粘膜や皮膚の表面が炎症を起こし、できた傷が深くえぐれたような状態)になります。
男性は亀頭部や陰茎体部、女性は陰唇や腟の入り口に病変が出現することが多いです。
初発例では鼠径部(※1)リンパ節(そけいぶりんぱせつ)が腫れ、発熱することもあります。
性器ヘルペスの診療科目・検査方法
問診では以前に同様の症状があったかどうか、無かった場合には最近新しいセックスパートナーとの性的接触が無かったかどうかを確認します(潜伏期は2~10日間)。
視診では、外陰部に数個から多数の浅い潰瘍や小さな水ぶくれ(水疱)を確認します。
病変部が明らかな場合には、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)の病原診断(直接病変部から採取した検体から抗原検査する)をおこないます。
病変は無いが既存の単純ヘルペス感染が疑われる場合や、病変がかさぶたとなり病原診断ができない場合には血清診断(免疫グロブリン抗体を血液検査にて確認する)をおこないます。
性器ヘルペスの原因
性感染症の一種であり、単純ヘルペスウイルス(※5)を排出しているパートナーとの性交渉により感染します。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、性器ヘルペスの場合は2型に感染していることが極めて多いです。
性器ヘルペスは、外部から入ったウイルスによる初感染初発と、仙髄神経節(せんずいしんけい)に潜伏しているウイルスの再活性化による再発の2つの発症形式があります。
性器ヘルペスの予防・治療方法・治療期間
自覚症状は治療によって改善しても、ウイルスは体内から完全には消失しないので、将来的に再発する可能性がある病気です。
初発例の患者さんは、抗ウイルス薬のアシクロビル錠やバラシクロビル錠を5~10日間内服、再発例の方は5日間内服します。
軽症例の患者さんはアシクロビル軟膏で改善します。
妊娠中の性器ヘルペスは母子感染のリスクがあるため、帝王切開での分娩が勧められています。
無治療の場合、初発は2~4週間、再発は数日~2週間程度で改善します。
治療をおこなうと治療期間が明らかに短縮します。
性器ヘルペスになりやすい年齢や性別
2016年に実施された約1000か所の定点調査では年間9174例が報告されています。
対人口では算出できませんが、ここ数年は大きな増減はありません。
◆定点調査とは、「都道府県に指定された医療機関(定点医療機関)だけが、感染症の患者発生数を届け出る形態」の調査です。「流行状況などを知る必要はあるが、発生数のすべてを把握する必要は無い」という場合、一部の医療機関に状況を報告させれば、おおよその状況を把握できます。これが、「感染症法―第14条」で定められた定点把握対象疾患の定点調査です。性器ヘルペスは「4類感染症定点把握疾患」となっています。
わが国の性感染症に占める割合は、男性では淋菌(※2)、クラミジア(※3)、尖圭コンジローマ(※4)に次いで 4位に性器ヘルペスが占めています。
女性ではクラミジアに次いで2位を占めています。
編集部脚注
※1 鼠径部(そけいぶ)
鼠径部は、「下腹部と太ももの境界」にあたる部位です。
「太ももの付け根」と表現するのが、わかりやすいでしょう。
※2 淋菌(りんきん)
淋菌は、「ナイセリア属の細菌」です。
淋菌感染症のことを「淋病(りんびょう)」と呼びます。
男性が淋病にかかると「尿道炎」、女性が淋病にかかると「子宮頸管炎(しきゅう-けいかんえん)」になることが多いです。
※3 クラミジア
クラミジアは、「性器クラミジア感染症の原因菌」として知られています。
男性がクラミジアに感染すると「尿道炎→精巣上体炎」、女性が感染すると「子宮頸管炎→骨盤内炎症疾患」を発症します。
※4 尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、「ヒトパピローマウイルスによる性器周辺の感染症」です。
ヒトパピローマウイルスには80種類以上が存在しますが、すべてが尖圭コンジローマに関与しているわけではありません。
尖圭コンジローマの原因ウイルスとしては、主に「HPV6型 / HPV11型」が知られています。
※5 単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルスは、単純疱疹の原因ウイルスとして知られています。
「単純ヘルペスウイルス1型」と「単純ヘルペスウイルス2型」が存在し、一般的に1型は「口唇ヘルペス」、2型は「性器ヘルペス」をひきおこします。
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執筆・監修ドクター
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